三人の思い

「アイラさんには困ったものですよ」


「先生、本当に申し訳ありません」


「ご家庭の事情で、

年齢の若いあなたがアイラさんの

親権者となっていることは私も

重々知っていますよ。

しかしですね~、

アイラさんの日頃の言葉遣いや態度について

アイラさんのクラスメートの保護者や教頭から

担任教師の怠慢だと言われ続ける私の身にもなってくださいよ」


「申し訳ありません」


「それで、ヘルツさんの話はもう終わりで大丈夫です?」


「先生、もう少しだけ!

すみません……」


「はい。なんでしょうか?」


「ヘルツさんの怪我の具合は……?」


「私に聞かれるよりも、まずはヘルツさんのご家族のところに連絡されて聞かれたらいかがですか?」


「申し訳ありません……」


「まあ、今はヘルツさんの

ご家族も、アイラさんとも、あなたとも話されたくないと言われてましたので

私が知っていることだけお話ししましょう。

ヘルツさんの身体的外傷は、

頬にあざが残る部分以外には見られないようです。

しかし、精神的に情緒不安定な状態にあるそうなので

暫く精神科に通い学校はお休みするそうです」


「そうですか……。


先生、忙しいところありがとうございました」


「いえいえ。

私は既にヘルツさんのお父さんに謝罪に行き、

あなたとアイラさんのことをフォローしておきましたので、後は頑張ってくださいね」


「ありがとうございます」



一アイラの家一


「アイラ、ただいま……。

あれから具合はどう?」



「お姉ちゃん、おかえりなさい」


「今日学校休んでごめんなさい」


「いいわ。

無理をしちゃ駄目。

あなた、きっと普段たまっていた疲れが出たのよ」



「お姉ちゃん?」


「なあに?」


「あのね……、

私さ、実はね……」


「どうしたのよ、

お姉ちゃん怒らないから安心して話して」


「いいよ!怒っていいよ!」


「いいから。

どうしたの、アイラ?」


「実は私ね、昨日クラスメートを殴っちゃったんだ……」


「そっか……」


「怒らないの?」


「知ってたよ。

今朝担任の先生から電話があったから」


「やっぱりね。そりゃ、

クラスメートを殴ったりしたらすぐに広まるよね……。

お姉ちゃん、

本当にごめんなさ~い!

わ~ん、わ~ん!」


「大丈夫よ、アイラ。

お姉ちゃんはわかってるよ。

アイラやり方は少し間違っちゃったかもしれないけど、あなた私を庇おうとしてくれたんでしょ?」


「お姉ちゃん!

どうして知ってるの?」


「私ね、

今日ヘルツちゃんと話して来たんだ。

ヘルツちゃんから一部始終話は聞いたわ」


「ヘルツさん、何か言ってた?


「アイラさんには申し訳ないことした、

だって……」



「え? あのヘルツさんが?」



「そうよ。

アイラさんが許してくれるなら

仲直りしたいって言ってたわよ」


「本当よ。

ヘルツちゃん明日は学校来るって。

あんた、明日あんたからもヘルツちゃんに

ちゃんと謝ってちゃんと仲直りするのよ!

それと、担任の先生にもよ。

わかった?」


「うん!

ありがとう、お姉ちゃん!大好き!」


「あらあら、どうしたのよアイラ?

急に私に抱きついたりしちゃって」


「お姉ちゃん、大~好き!」



「アイラ~、

そなたはまだまた子供ぞよの~」


「我輩は姉上の前ではずっ~と

子供ナリよ~!」




ー翌朝のホームルーム前の教室ー


「ヘルツさんおはようナリ~!」


「ア、アイラさん!」


「一昨日は殴っちゃったりして

本当にごめんなさい……」



「なによ~!

アイラ、普段中二病全開のあなたから普通の喋り方されたら私……、

調子狂うじゃないのよ~!

そうそう。

あんたのお姉ちゃんって意外といい人じゃない。

私がパパから受ける暴力についても相談に

のってくれて、

私がパパから暴力振るわれないようにって

今日から私とパパ、パパの母の三人で住めるように取り計らってくれたわ。

ところでアイラ、

あんたの処遇についてだけど、

あんたがどうしてもって言うならね、

この心優しいヘルツ様に免じて

今回だけは特別に多目にみてあげてもいいわよ……」

ヘルツは真っ赤になった顔を横にそらしながら、そう恥ずかしそうに応えた。



「ヘルツ殿、かたじけないナリ~!」


「こらこら、アイラ!

手が痛い!

そんな乱暴に握手すんな~!」

(アイラ、私の方こそごめんなさい。

そして、

ありがとう……)



一アイラの家一

「ただいまナリ~!

あれ?

テーブルの上に姉上からの書き置きなりか?

何々、

『アイラへ。

わらわは急な用事が入った。

アイラ。すまぬが今日はアイラ1人で留守番頼むぞよ。

夕食と朝食は冷蔵庫に入っておる。

それと、わらわの帰りが遅くなる

時はカレンダーの裏のお金を使うように。

くれぐれもわらわを探しに来ぬように。

留守番の任務、頼んだぞよ』

お姉ちゃん…………。

姉上に急な用事とは、さて?

一体何があったナリ?

・・・・・・

それにしても、節約家の姉上がテレビをつけっぱなしで行くなんで珍しいナリね。

それに、テレビもガヤガヤさがわしいナリ~!」


『事故の影響はかなりの広い範囲に広かっている模様です!!』


「火災事故のニュースナリか?」


『マンションの中には住民がまだ取り残されている模様です!!』


「あのマンション!

姉上と一緒にこの前行ったから見覚えあるナリ!

住所も同じ。

ネイピアの住むマンションじゃないナリか!?」








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