第191話「伽藍の先触れ」後編
第十六話「
「は!誰かと思えば……”
「”
その侮蔑を全く意に介さず軽薄に笑い返す
しかし――
「
「
二人の乱入で
「そうそう、まだ半分ほどだったんだけど……ちょぉっと嫌な予感がしたんだよね。虫の知らせって言うんだっけ?いやぁ、これも
「
「ちょっ、
「
続いて
「いや、
「ああ、知ってる」
そして
「さ、
「
「
三人が三人とも!若干違うニュアンスであるが、戦闘準備さえ取らない男を問い詰める!
「…………聞いてるっての」
しかしそれでも無愛想な男は”はぁ”と溜息を吐いてから、緊張感無く頭をボリボリと掻くだけだった。
「
――っ!!
実にバッサリと!
三人が三人共に無愛想男に切り捨てられ……
「ひ、酷いなぁ……」
涙目で恨めしそうに見上げてくる剣士は
「ちっ!雑魚共め……サッサと仕事しろよ、
意図されてではないだろうが、完全に無視された形になった
「……」
しかし今度は……
その
「て、
再度怒鳴ってせっつくも――
「……」
やはり驚異的な剣技を所持する盲目少女剣士は微動だにしなかった。
「ちぃぃ!この異端が!!化物女が!僕の指示に従えよっ!!」
さらに
「少しは落ち着けよ、”
「なっ!?このっ!!」
全く相手に興味を持たない平坦な言い方で、
「辛辣だなぁ……」
こういう
「けど、
苦笑いと同時進行で腰の刀に手をかける
「無理だろ……もう詰んでいる」
しかしその無愛想男は連れの剣士に向けそう言い捨てたのだった。
「え?」
剣士は意味が解らず……
否!
言葉を放った”無愛想男”と元凶の”盲目少女剣士”以外……
実はその場にいた全員が”状況を”理解していなかったのだ!
ヒューーーーーーーオン!!
ブゥゥーーーーーーァン!!
ヒューーーーーーーォン!!
ヒュッーーーーーーーー!!
――宙を舞い!
――空を裂いて!
――風を切り!
――刹那に
軽口剣士の前を、女剣士の横を、女闘士の脇を突き抜ける影!
「なっ!?」
「なんなのっ!?」
「くっ!」
――!!
主座に座したままの
「……う……うう!?」
細く白い首元に”一振り"
緩やかな曲線を誇示する両胸の直前に"一振りづつ”
そして、柔そうな腹部に”一振り”――と、
「て、
無力な抜き身刀を握ったまま、事象を理解できないままで叫ぶだけの
「な……なな?いつの間に……どうやって!?」
皆一同に突然の怪異に目を丸くしていた!
――”怪異”
そう、
誰に使われる事も無い状態で空中に固定されていた。
「ははっ……なんだそれは?……ははは、イカれてるっ……イカれてるなぁっ!
空中に浮かんだ刀達を見てバカ笑いする
その怪奇現象を起こした刀達の持ち主……
「くっ!」
「この……」
「……条件はなんだ?」
「なっ!?」
「
そんな女二人の抵抗を無駄な努力だと言わんばかりに、無愛想男は勝手に交渉を切り出していた。
「じょーーうぅけん?そうだなぁ……じゃぁ死ねよ!」
歪んだ口で吐き捨てる
「お前らぁ、全員さぁ、この場で直ぐに死ねよっ!そうすりゃ、この女は奴隷として飼ってや……」
「では、あなた方には今後全てに
「は?お前……なに勝手に口挟んでるんだよっ!お前はタダの護衛で!くだらない
端正な顔立ちを更に醜く歪めて振り返った
呪符のような幾つもの目の如き奇妙な文様を施した黒い布を巻いて目隠しをしている華奢で清楚な十代半ばの盲目少女に威圧感たっぷりで詰め寄る!
「…………わかった」
だがそんな光景を無視し、両腕を万歳するようにして降伏の意思を露わにする
「ちょっ!
「なに勝手に!!」
「
「他に方法あるのか?
なんとも割り切った答えを返す
「そ……そういう話じゃないでしょ……けど……」
「けれど……うぅ……仕方……ないの?」
本来なら荒事に対する急先鋒であるはずの
「いや、どうだろう?……ほたるちゃんの命が最優先なのは解るけど……うぅん……それしかないのか……うん」
そして、その
「だ、そうだ。そこの金髪じゃなくて
一応は三人の反応を見てから、
「おいっ!待てよ、この無頼者がっ!!僕を無視して勝手に話を……」
その間に青筋立てて割り込む
「反故にするなら………お前らぶち殺すぞ」
――っ!!!
全員が凍りつくような殺気の塊!
静かに唸るように吐いた言葉は紛れもなく有言実行の脅しだった。
「…………う……うぅ」
この場の
つまり、首謀者で現在この場では支配者であるはずの
「承りましたわ。巫女姫様の身の安全は
唯一人、盲目少女剣士だけが……
”
「……ああ」
それに、ぶっきらぼうながらも応える
そしてその
「……」
そういう二人のやり取りに、盲目少女剣士はふと、初めて偽りなく微笑んだ様に見えた。
「では……
――ヒュ!
――ブォン!
――ヒュン!
――ヒュバッ!
そして彼女がそう
来たときと同じ、宙を舞って
「……くっ」
「なんなの……いったい」
刀が自身で宙を舞い、自身で鞘に収まるという圧巻の風景。
「くそ……」
そして、事の顛末に――
敗北したはずの
彼の後ろ盾になっているだろう大国、
「誠に不躾なのですが……今の言霊を
スイッっと――
「あ、あれ?」
その
「
思わず抜いたままの切っ先を
「
それに微笑んで返す
自らの首に同じ契約印を刻んでさえも微笑む
「なんて……卑怯な」
「く……」
「……」
聞いた事も無い呪詛だが、今はそれを信じて疑わないほどに面々は
「わかった。それより一つ聞いて良いか?」
そんな場で、意外にも冷静に言葉を発したのは無愛想男、
「
「別に、契約守りゃいい話だろ?それより……」
「さっきの、あれは”魔剣”とやらか?」
――っ!?
"どういうこと?"
”魔剣?”
”さっきのアレを知っていたのか?”
「……」
そしてその問いに対し、盲目少女剣士……当の
「
綺麗にはぐらかす。
「……」
これには流石の
「さ、
意味が分からない状況に苛立つ
「知るか!ヤバい気配がしてたからそう踏んだだけだ」
だが、無愛想男は
「ま、魔剣って?」
続いて出る
「知らん。昔、野盗から助けた記憶のある……しょぼくれた自称”刀鍛冶の男”がなんかそんな与太話をしていたのを思い出しただけだ」
それにも大した意味は無いと応えた。
成る程――
この
情報も根拠となる知識も欠片ほどで、推測するにも及べない状況でも、
「大胆というか……恐ろしいね、
だが――
「…………そうですね。いま、
それもこの少女――
肩まである黒髪と白い肌、細い腕で華奢な十代半ばの一見、清楚な美少女。
顔に呪符のような幾つもの目の如き奇妙な文様を施した黒い布を巻いて目隠しした盲人。
――
奇天烈な名を名乗る異端の盲目少女
「
最後にそう言い残し――
第十六話「
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