第189話「衣衣恋恋」前編(改訂版)
第十四話「衣衣恋恋」前編
「姫様、よもやあの
漆黒の軍服姿で座す美姫の傍に控えた銀縁眼鏡の美女がそう進言する。
「……」
「姫様?」
しかし美姫はジッと何かを思うように沈黙したままである。
「……」
「ひめ……
あくまで丁寧に、しかし今度は少々強めに方針を問う側近の美女。
「…………そうね、
そして
「多分、突破されるわ」
「え?」
とはいえ、返ってきたのは銀縁眼鏡の側近が予測した種類の返答では無く、その側近、
「だから、このまま
「まさか……それは流石に……」
自ら進言した内容であったが……
それは
それがまさかの――
主君から”しれっ”と出た言葉は、あの”最強無敗”
数在る
「私が
事も無げにそう応える
それ以前の、
「で、でしたらっ!ここは直ぐに放棄し後方の部隊へ……いえ!城は現在、敵の手中ですから離脱をっ!そうです、
「落ち着きなさい、貴女らしくもない」
到底信じ難い予測であるが――
「も、申し訳ありません、
だが敬愛する
「そうね……予想は
そんな家臣を気遣ったのか、暗黒姫は表情を若干緩めて自らの言を少々訂正していた。
「…………は、
少し意地の悪い言い方をしたと、自らの言を補完する
「そうね、全て可能性の話よ。けれど対策はして置かなければならないでしょう?あの希代の
「……」
確かに――
彼女ら
身命を捧げた主君にして国家の
どの様な小さな綻びも、未来の不安要素も、一つ残らず事前に潰す必要があるのだ。
「
そしてそうなると
「私はこのまま
そう言いながら
「……フ……フフ」
視線を受けた年端もいかない少女は、ジトッとした三白眼の奥に得体の知れない光りを発し、小さい口元に”にへらぁ”と意味不明の笑みを浮かべながら――
グッ!と親指を立てて応じてみせる。
「……」
誠に解り難い反応だが……多分、
――”まかせてっ!”
という事だろうと、
――
「そうね、貴女の言うように一時離脱も考慮しましょう」
そんなやり取りの間に
「有り難う御座います、姫様」
「私の槍を――それから兵の半数程は着いて来て下さい」
――”最強無敗”と恐れられた
――けれど”万が一”があっても、直ぐに
――それに
普通ならこれでも十分であろうが、
――万が一が起こり得た時のために!
――その
到底あり得ないと思われる不測の事態にさえも二重三重の対策を用意して……
「では、
槍を手に馬に跨がり銀縁眼鏡の忠臣はもう一度一礼してからその場を後にする。
「
――
―
――だが程なく……
ワアァァァァッ!!ワアァァァァッ!!
ワアァァァァッ!!ワアァァァァッ!!
いや、それどころか――
ドドドドドッドドドドドッ!!
ドドドドドッドドドドドッ!!
――”
ダダダッ!ダダダッ!
圧倒的火力による同時攻撃で敵軍同時粉砕を行うという荒技を兵力に劣る状況で可能にするために、
――”局地”という制限を課す事で顕在化させるなんて……
ダダダッ!ダダダッ!
”盤面遊戯の魔女”
とても
十に一つも成功しないだろう奇策を越えた奇策……
――これでは
ダダダッ!ダダダッ!
「……全く、笑うしかないわ」
続けてなんとも言えぬ苦い笑みを零す暗黒の美姫。
緊急事態を察知した
ダダダッ!ダダダッ!
目立たぬように、彼女に随行する護衛はたったの二騎……
合流後は戦場外れに配置した虎の子の予備部隊に合流し、そのままこの地を離れて南下、
そしてその後は
「……」
ドドドドドッ!!ドドドドドッ!!
――っ!
そんな中、馬を駆る
それは一軍の騎影群、
「
それは間違いなく!混乱した後方部隊の再編に向かってそれを成し、そのまま
ドドドドドッ!!
――これで急場は凌げた!
時間さえ得られれば
「……」
――今回の
――再集結後の再戦では勝機は充分にある!
――けれど……
この時、
完全に窮地を切り抜けられる確信が出来たからだ。
ダダダッ!ダダダッ!
「……」
――もう少し……あと少しで
ドドドドドッ!!ドドドドドッ!!
「させるかよっ!
「っ!?」
だが彼女の背には――
「そう急ぐなよ!いつもいつも連れないお嬢さんだなぁっ!!」
背後から聞き慣れた男の声が浴びせられたのだ。
――くっ!あの…………ばか
ダダダッ!ダダダッ!
「
ダダダッ!ダダダッ!
「……くっ!」
ダダダッダダダッ!
ドドドドドッ!!
常に最高司令官として最奥に在った
ダダダダダダッ!!
ドドドドドッ!!
見る間に二人の距離は無くなり、
――ここまできて……
「このぉぉっ!」
「ここはお任せをっ!」
ギャリィィーーン!!
それを今度は、
「領王閣下は先へっ!もう一騎は私が……」
そしてそのままもう一人の
ザスッ!ザスッ!ザスッ!
「ぐはぁぁっ!!」
だが、その
直後に何本もの投擲
「……フフ……フフフフ」
ジトッとした三白眼。
その奥にある得体の知れない危うい光と、無機質な小さい口元に”にへらぁ”と不気味な笑みを浮かべて――
”
暗器使いの
第十四話「衣衣恋々」前編 END
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