第187話「散華の空」前編
第十二話「散華の空」前編
その異変は
「敵襲っ!!てきしゅうぅーー!!」
「て、敵軍勢は三本足の”烏”!
唐突過ぎる後方からの奇襲劇……
ドドォォーーーーン!!
ワァァッ!ワァァッ!
烈火の勢いで城門を打ち破らんとする!!
「ば、馬鹿なっ!どうやったら背後から
――
「だ、駄目ですっ!!勢いが凄まじく、このままでは第二門も……」
それは、遙か
「
「は、はい!
その
地理的にこの巨大な湖が天然の堀となることで、
「なら何故に
ドドォォーーーーン
「だ、第二問突破されましたぁぁっ!!」
「くっ……」
だが現実には、完全に虚を突かれたのだ。
「敵軍!……来ますっ!!」
そしてそういう理由から城守備が手薄であったことも……
ドドドドドッ!ドドドドドッ!
地響きで城壁を震わせながら、
「うわぁぁっ!退けー退けぇぇーー!」
それどころか、城門付近に
「くっ!それでも、この
――白刃一閃!
血飛沫を引いて、疑問だらけで混乱したまま、
ドドドドドドドッ!!
それは、切り開いたばかりの道を通った白馬を駆る
「……」
輝きを放つ
ザシュ!シュバ!
「うぉっ!」「なっ?」「ひぃぃっ!」
白い駿馬と共に城内を思うままに蹂躙する閃光の正体は――
ヒュバッ!シュバッ!
「ぎゃっ!」「ひぃぃっ!」
芸術的なまでの神速剣にて次々と兵士の首を宙に打ち上げる白い死神!
煌めく銀河の
――通称、”
「ひ、退けーー退けぇぇーっ!!」
「く、首と胴体が……」
「生きたまま分断される事になるぞぉっ!!」
見惚れるほどのその惨状に――
運悪く彼女の通り道を守備していた新政・
「き、聞いてないっ!聞いてないっ!聞いてないっ!」
「こんな状況!!
「な、なんで……
自身の両手で思わずだろう首根っこ辺りを押さえながら、青ざめた顔で一も二も無く逃げ出してゆく……
揃いも揃って本来の職務を怠たるこの
「ひぃぃっ!」
「た、たすけ……」
いいや!不運なのは
兵力の殆どを城前に回したことで城守備兵力が極端に少数であったこと、
前述の地理的理由と戦況報告から、こういう守備体系を採択しても万全であるだろうという確信が、現在に至るこの
「退くなっ!!退くんじゃないっ!!もし
そしてそれでも僅かに残っていた勇敢な兵士達も――
「ぎゃっ!」
「ひっ!」
白い閃光という死の刃の前に容赦無く露と消える。
「良し!
「……」
混戦が終息に向かう中、
ヒュ――
シュバッ!ヒュバッ!ヒュオンッ!
「ぎゃぁぁっ!!」「ひぃぃっ!」「がはぁっ!」
その直後、美しき
ヒヒィィン!!
そして雪のように白い愛馬を操り、その場を後にする!
ダダダッ!ダダダッ!
「まってて……」
ダダダッ!ダダダッ!
揺れる馬上で決意に輝く
彼女は城外の死地へと向け再び
ダダダ!ダダダッ!
「さいかの敵は……わたしが全部斬るから!」
散々に血風を撒き散らし、だが自身は返り血の一滴さえ浴びない白き死神、
「ふんっ!はっ!」
ザシュゥ!ブシュッ!
城内に残った新政・
「
強襲部隊の中心で全体指揮を
「そ、そうだな、誰かっ!
それを受けたのは、相変わらず美少女と
だが、特殊任務の分隊長という大任をこうして全うしたという事実は、この少年、
「ははっ!」
兄と慕う
バサッ!バサッ!
そして、瞬く間に解き放たれた黒き翼は天へと昇り――
――
―
――クワァッ!
「あれ……は」
その将のひとりである
――クワワワッ!!
血と鋼が入り乱れる極地と、それらを巻き上げる鉄臭い砂塵の天頂に――
「遂に……成したの……か?」
同じく
――バサッ!バサッ!
そんな地上の些末事など我関せずとばかりに、
――バサササッ!
遂には天守に舞い降りたのだった。
「…………はは」
――この瞬間
――それは結実する
そうだ、俺は……
「
思わず大きく拳を振り上げ、そして高らかに叫んでいた!
念には念のさらに念押し……
自らが用意していた、保険の保険ともいえる策がこうして大逆転への道筋を照らしたのだから。
――すぅ
打って変わり、小さく深呼吸。
直ぐに気持ちを落ち着けた俺は指示を出す!
「これ以降、第三隊の指揮権はペリカに委譲する。アレには、後事は全て任せるから
――ガッ!
俺は近くに控えた部下にそう伝えると愛馬の腹に
ヒヒィィン!!
張りのある
「我が精鋭五百は着いて来いっ!残りは
オオオオオオッ!
ひたすらに耐え忍んで来たための爆発もあるだろうが……
流石は俺が
ドドドドドッ!ドドドドドッ!
一気に奮い立っては、先頭を行く俺の愛馬”
――
ドドドドドッ!ドドドドドッ!
一見して防戦一方の大劣勢に耐え切れず
――当然、確信してのことだっ!
ドドドドドッ!ドドドドドッ!
――
ドドドドドッ!ドドドドドッ!
――そして、再度前方を塞ごうとするだろう左右の部隊はきっと間に合わない!
ドドドドドッ!ドドドドドッ!
――なら、
ドドドドドッ!
砂煙を撒き散らし、俺と精鋭部隊は駆け上がる!
ワァァッ!ワァァッ!
ギャリィィン!ギギィィーーン!
「開いてっ、
――ザザザザザッ!
――ザザザザザッ!
いや、割る必要など無かった。
混戦渦中でも俺の意図を察した第二隊は統制のとれた動きですっかり中央を空け、俺達に道を用意してくれたのだった。
ドドドドドッ!ドドドドドッ!
「
走り抜ける刹那、俺の視界にチラリと祈るような瞳のショートカット美少女が入っては消えていた。
ドドドドドッ!ドドドドドッ!
さらに前へと爆走する俺達は既に第二隊の管轄を抜け、第一隊が奮戦する渦中へ――
「もう……すぐだ」
――我慢に我慢を重ねた先に僅かに見えた女神の後ろ髪を……
ドドドドドッ!ドドドドドッ!
――いや、”魔女”の後ろ髪を強引に引っ掴んで乱暴に押し倒し!
「俺なりの優しい暴力で……屈伏させてやるよ」
馬上にて湧き上がる感情を抑えきれなくなってきた俺の視界には、既に敵軍の姿が映っていた。
「さ、
この場を仕切る
「必要……無いっ!」
今度は
そして――
「おおおおうっ!!待ちかねたぞっ!!王覇の……」
ギャーーーーーーーーーリィィィィンッ!!
「覇のぉぉっ……ぬうぅぅ!!」
ズザザザァァッ!!
打ち合う鉄の火花で”武神”の槍を削りながら踏み込んだ俺と愛馬の
ヒュバッ!
――悪いな
煙が出そうなほどに熱を帯びた
ヒヒィィン!!
再び
「
”
ダダダッ!ダダ…………カクン!
だが射程に入る寸前で
「ぬうぅ!?」
浮き上がると同時にロデオの様に大きく馬上で横に乗り崩した俺は、完全に死角から斬り掛かるが……
ギギィィーーン!!
――ちぃぃっ、これさえも凌ぐのかよっ!?
とんでもない反射神経……いや動体視力もか!?
「おおおぅっ!」
ブゥオォォォーーーーン!!
――っ!
俺の存在した空間ごと引き裂いて振るわれたかと錯覚する豪槍の一撃を咄嗟に仰け反って
チリリ!と頬を
「
――”
そして俺は呆れながらも既に次手に移っていた。
「ぬっ!?なっ……」
そしてその次手には流石の武神も驚いたようだ。
火花散る激しい打撃と速度が支配する戦場から一転――
”ヌルリ”――と
俺は
さらにそのまま、
「こ、このっ……なんだ!?」
距離を奪う超接近戦!つまりは”組み打ち術”に持ち込んだという……
”動きそのもの”に注力した特異な挙動は、時に速度を凌駕する!
脳の錯覚や経験による先読みを逆手に取った虚を突く動き!
大木に巻き付く蛇の如くに
ダッ!
先の腕穫りと連動する動きでそのまま鞍を蹴り、踏み切った足を相手の首を刈り取る様に左膝裏で締め上げたのだっ!
「ぐっぬおぉぉっ!!」
即座に
――ギ、ギギ……
その時には既に、奴の腕と同化した俺がビクともするはずも無い。
「うっ……ぐっ……ぷはっ!!はぁはぁ……」
両腕で相手の右腕肘関節を
「ぐ……おぉぉぉ!!」
――無駄だよ、”最強無敗”
膂力で外せる技じゃ無い。
いや
古流体術の名門で天才と恐れられた武闘士が医術を極め、人体を知り尽くして完成させた異色の格闘術を……
「ぐ……おお……ぐ……はっ……かはっ……っ」
――終わりだ、
今日、お前の前に立ちはだかったのは以前対峙した、
王として、指揮官として、将軍としての
後先無視の私情全開!!
自らの最優先案件がために
「ぬ……おおおおおおおおおおおおっっ!!」
――っ!?
勝手に勝利を確信していた俺は高く持ち上がっていた!!
――慢心!?いや……
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」
――単に”
ブゥゥーーーーオォォォォォーーーーン!!
そう気づいた時、俺の
ズドォォォォォォーーーーーーンッッ!!!!
「ぐはぁぁっ!!」
相手の巨体諸共に大地へと叩き付けられていたのだった。
第十二話「散華の空」前編 END
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