第186話「鉄の棺桶」中編
第十一話「
――”
そして程なく、その
この短期間でここまで衰退し、内にも問題を抱え身動きも出来ない滅亡一歩手前になろうとは……
それは
――予想外なほど早々にこの結果
あまりにも
――
現に彼が仕込んでいた諜報工作部隊、その指揮官であった
つまり……
策
言わずもがな、状況からそれは、新政・
そして、その
彼女は
具体的には、
この流れで
その後に
さらに周到な事に
同様に戦にて多大な傷を負った
全ては新政・
そして――
利用される形になった
その理由はそれぞれ、自己保身であったり、野望を燃やした結果であったり。
或いは……
――
そんな状況の中、
「今まで
「問題ないわ。”もうそろそろ”だと思っていたところよ」
その忠告に主君たる希なる美少女は事も無げに応えて歩く。
この見目麗しき黒髪の美姫は、毎回どこまで見通しておられるのだろうか?と……
そうして二人は暫し歩く、そして……
「……既にお待ちです」
――ガラ
”会見の間”入り口前に控えていた使用人が、場に到着した二人の姿を確認して
「……」
そこには――
人数に対しては些か広すぎる部屋の中央付近に、ポツンと座した独りの大柄な男の姿。
がっちりとした肩幅に鍛えられた太い腕、厚い胸板と
誠に陽とした風貌にして実に見事な男ぶり!
三十歳そこそこの実に堂々とした”武人”は……
「お初にお目にかかる。我が名は
上座に立ち見下ろす黒髪の少女に対し、床に座して”しっかり”と美姫を見据えた男は、
「急な申し出に時間を割いて頂き恐悦至極」
「いいえ、”最強無敗”と名高い
多くの
「……」
英雄は堂々と名乗り、感謝の言葉を述べた後で暫し
「
それを不審に思ったお付きの
「……」
「
「はっ……」
美姫の従者である
「どうかしたかしら?」
その理由を見透かしているかの如き美姫の微笑みは目も眩むほどに美しい。
――英雄は魅入られたかの如く、不意に意識を持って行かれていたのだ
「い、いや……噂に違わぬ美しさに……その御姿、我が
そして、思わず素直に不躾な感想を述べてしまう。
因みに彼が言うところの
「そ、それよりも……この身は既に将軍では無い」
「そう、解ったわ。それよりも、こうして
故に英雄の反応を特に気にかけることも無く本題へ入った。
「その件に関しては……”三つ”ばかり条件を頂きたい」
自らの容姿の美麗さを甘受した
至上の美姫を前にして、英雄はそれでも肝心なところはしっかりと口にする。
「控えて下さい、将ぐ……
ここに来て自らの立場を
「三つ……随分と欲をかくものだけれど。良いわ、
それを軽く制する
「言ってみなさい」
そして英雄を足下に見下ろした美姫は、暗黒の
「……感謝する」
英雄は軽く頷くと続けた。
「我が主君……”元”主君である
「……」
敗者として命がけで挑んだ会見にて――
自身や自領であったこの地への願い入れで無く、他ならぬ自分を閑職へと追いやった親子への融通とは……
「
世論を代弁する様な尤もな疑問を口にする
「
それは
「その件は……残る
「是非、御願い申し上げる」
「
「良いわ、
頑固な男に美姫の従者が声を荒げるが、
「重ねて感謝する。それと我が身は故郷と祖国に捧げた……そして故国亡き
――主君親子に対する温情と、事成った後の自らの身の自由と……
敗戦国の将が願い出にしては、中々に図太い申し入れだが……
「……」
彼女がそれを甘受するほどに今回敵対する
――にしても……
”忠臣は二君に仕えず”と言うが、この男の場合はそれとはまた違った意味での意地になるのだろう。
――”武人”と自らを誇る人種の矜恃とは……
同じく武人の気質をも併せ持つ”
「それと最後の一つは……我が身を最前線の要にて、あの”
打って変わり、巨体を乗り出し熱い言葉を吐く男は……
「き、
敗残者として半強制された、本人にとっては決して望まぬ戦のはずが……
それでもこの鬼気迫る迫力と意図せず口角の上がった口元は……
それはやはり”武人”として!戦場に残してきた矜恃を再び拾える喜び!
「……ふ」
――ほんとうに……度し難い
結果が全ての世界で、執拗なほど過程に価値を見いだす者達……
そしてそれに
「良いわ、
一粒の聖邪も混入されない純粋なる暗黒の
見る者の
――”
その時、暗黒の美姫が可憐な口元は口にした冷徹な内容とは正反対に、”そっと”優雅に美しく綻んで至高の美を体現していた。
ババッ!
そして――
自らも大きな口の口角を上げ力強く応じたのだった。
「委細承知っ!」
第十一話「
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