第183話「盤外戦術」前編
第八話「
――日曜日朝、
広い部屋の中央に鎮座する巨大な円卓状会議テーブルに居並ぶ面々は……
同じく
同じく
特殊工作部隊”
「領王閣下、将軍の皆様は既に揃われております」
そして、総参謀のアルトォーヌ・サレン=ロアノフと――
「皆、多忙な中ですまないが……各方面の詳細情報を摺り合わせられる貴重な機会は近代国家世界側だけだ、諸般の事情で最終日になってしまったが宜しく頼む」
最後に政治、軍の最高責任者にして
「で、早速、
俺は面々の中で独り、用意された席で無く直接床に正座する奇特な男に目をやる。
「なんか今更だけど、お前なにしてんだ?」
俺の呆れ気味な指摘にも、立派な風体の男……
「第二軍司令官という大任を仰せつかりながら、本隊合流に間に合わぬという失態を犯し、方々と同じ席になど座れましょうか。領王閣下には私の事などお気になさらぬようお進め下さい」
――お気にするわっ!!居心地悪い!
とツッコミたい気分満々だが、もう面倒臭いので言うまい。
「そ、そうか……尻が痛くなったら席に座れよ」
俺は
「そんな事より大将、なんで
大木の幹のような胴体をコルセットでしっかりと固定された情けない状態でも、微塵も謙虚な態度は見せずに”ふん
「同じ本隊合流に間に合わなかった
「はぁ?俺の事かよ、ありゃあ相手が悪かっただけだ」
悪びれもせず応える男だが……実際、
――まぁ、それだけ、報告にあったツインテール美少女が桁外れって事だろう
「ちょっと懸念があってな……取り越し苦労だろうが、万が一を考えて手間をかけた」
そう、この熊男の指摘通り俺は各地で忙しい役職持ちの重臣達を
戦時中の各司令官という、当然”
その理由は――
開戦前にここ
もちろん我が
それだけに俺は念には念を入れて、こうしてアナログな手段にでたのだが……
そのおかげで金曜日に世界が切り替わってからも、全員のスケジュールが合うのに最終日の日曜の朝になってしまったのだ。
――時は金なり、戦時は特に時間は黄金よりも価値がある!
――あの性悪姫め……あの時の通信はそれを見越しての、これみよがしの傍受だったのかよっ!
戦国世界側だけで無く、近代国家世界側でさえも既に
「さいか……お腹すいた」
――まったく、”
「早く終わらせてランチ食べに行こう、さいかのおごりで……」
――見た目は思いっきり可愛いんだけどなぁぁ…………てっ!?
「なんでお前はここに居るんだよ!てか、毎回毎回、俺の奢りで食いやがって!」
今回の軍事作戦の司令官でありながら
――はずだったのだが……
腰まである輝くプラチナブロンドと同色の大きめの瞳で至近から物欲しそうに俺を見つめる制服姿の美少女がひとり……。
「……おまえ」
白磁のようなきめ細かい白い肌、その白い肌を少し紅葉させた頬と控えめな桜色の唇。
至近で見るとさらに思い知らされる紛れもなく超のつく美少女は、制服姿という場にそぐわない格好から学校を抜け出してきたのは明白だった。
「補習じゃなかったのか?」
「もう終わった」
俺の呆れ声に即答する輝く
「に、してもだ。お前も元は
「……」
言いかけて俺はやめた。
この
――ちゃっかり俺の左隣に座ってるし、
――いや、実は俺にはそれよりももっと重大な疑問があった……
「補習を受けたのは
つまり
「朝早くに試験を前倒しにしてもらっただけ、それから高速鉄道で」
「いやいや!無理だろ、お前は絶対サボって……」
「本当だよ、朝の三時に先生を脅し……起こして、それから……」
――こいつ……今、脅してって言ったよな?な?
「エーエムの三時は朝とは言わないっ!!てか、それを置いても始発乗っても無理じゃ無いのか!?」
しれっと恐ろしいことに口を滑らす小娘に俺は追求の手を緩めない!
それこそが!哀れにも犠牲になった公務員へのせめてもの手向けだと……
「ちっ!ちっ!さいかはまだまだだね。高速鉄道でも終点の
――くっ!た、確かに……
そこを通常レールの鈍行で一駅先の
「って!お前は西村○太郎サスペンスの犯人かっ!」
バシ!
「あうっ!」
俺は可愛らしい仕草で、
――”解るかな?明智くん”
みたいなノリで人差し指を振ってご満悦の
――てか、”明智くん”は西村○太郎でなくて江戸川○歩だったか
「ひどいよ、さいかぁ」
頭を両手で押さえ、美しい
――う……少しやり過ぎたか
大体、そこまでして俺に会いに来たというのなら悪い気は……
――そう、この天然ガッカリ美少女がそんな緻密な計算までして俺に……けい……さん?
――あれ?
「お前、それ……誰に段取りを……」
このお気楽極楽美少女にそんな緻密な頭脳があるとは思えない!
「ん?んん……ああ!ウッチーも脅し……起こして用意を」
「酷いのはお前だ!いや!
ガシ!ガシ!ガシ!
「いたい!いたい!さいかぁぁ!」
俺はガシガシと何度も何度も!彼女の白い手の平のガードの上から天罰という名のチョップを連打してやったのだった。
――
「う……ごほん」
「ヒリヒリする……バカさいか」
気がつくと全員の白い目に晒されていた俺と
迷惑娘は全然そうでもないが、俺は恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
「そこまでしてなんで会議に来るんだよ!たく……」
照れ隠しにそう吐き捨てて話を議題に戻そうとした俺に――
「”さいか”がいるからだよ」
――うおっ!
俺の追求を受け流していた冗談口調とは打って変わり、桜色の唇から実に真剣に発せられた言葉。
――っ!
その爆弾発言で一気に!
――む、無駄に殺気を発生させるなっ!この娘は……
「ええ、ごほん!というわけで”
俺は結構露骨に誤魔化した。
――いや、時間も無いしな……
因みに今回は指揮官というわけではないが、それらに匹敵する重要任務を任せている
――結局……
北側の
この先の
――なにもかも
主戦場の形勢不利を招いたのは俺が
それならばまだ責任の取りようもある!!
「後は、
我が言葉の最後を待つまでも無く長髪の優男が静かに立ち上がり、
「
特殊工作部隊”
今の言葉を
視線を絡めた俺は無言で頷くと、
さて――
ここからが今回一番の難題……
「それで、
それまで”ふん反りかえって”いた大男が、ギシッと会議室の椅子を軋ませて前のめりに顔を突き出して俺に向ける。
「あの嬢ちゃんは強いぜ……統率力もだが戦闘力が半端じゃねぇ。あの異質な強さは……」
そして、そこまで言ってから黙って俺と……隣の
――?
――なんだ?妙な視線だが……
「
気持ち悪さで思わず問いかけた俺の声に、大男はフッと笑ってから軽く頭を左右に二、三度振った。
「いや、何でも無い。ちぃとばかし常識外れの馬鹿な妄想が浮かんで自嘲しただけだ」
――自嘲……ね
この脳味噌まで筋肉の男が自身の思考を鑑みるとは……
「まぁ
「待って貰ってよいかしらぁ?」
その先に話を進めようとした俺に対し、どこか気の抜けた女の声が待ったをかける。
「なんだ?」
変わらず
「難題はもう一つあると思うけどぉ?」
垂れ気味の瞳で俺を見据える女はこう見えて、いや”見せて”……
実は実直で常識派だと、俺は経験から
「裏切った正統・
そしてその極めて真っ当で
――成る程……
新政・
宗教国家、
俺は
「その辺は全く問題視していない」
顔色を変えずにキッパリと答えていた。
――!
当然、場の面々は驚きを
「…………その理由はぁ?」
それでも、発信者である
「正統・
何故なら俺の中でその件は
第八話「
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