第183話「盤外戦術」後編
第八話「
「重ねて言うが、正統・
皆は納得がいかないだろう断言だが、俺は構わず先を続けた。
「
これはこの場にいる者達全員の考えも同じだろう。
「それが正統・
そして、それに対する俺の意見はどうみても説得力に欠ける。
「その理由はぁ?」
当然寄せられる疑問に俺はよどむこと無く続けた。
「俺は
そうだ。
「それはぁ、サイカくん的な
熱く語る俺に
「軍の一部が動いたからといって、それが国の総意とは言えないだろう?」
「けれどぉ、正統・
皆を納得させるには少し苦しい理由を口にする俺に
そしてこの場合、
だが俺は――
「新政・
「……」
「……」
難しい顔で黙り込む面々……
論理的には破綻していない。
しかし、今回の俺の推測は大いに”人”というものに、個人的願望に
もっと言うならば”人情”に……要するに”甘すぎる”のだ!
俺は面々の顔を見渡しながらも皆の反応を待っていた。
歴史に記される”
弱小国の
その力量は、政治、知謀、統率力から、個人的な武力に至るまで……並外れて突出していると衆目が一致する事だろう。
だが――
例えば、知謀に
個人的武力と同様にそれらは一概に比較するのは難しいのだが、その行動からハッキリしている事もある。
それは”支配者”としての冷酷さ……
時には情を捨てより効率的に物事を進める非情さが支配者には必要である。
法と秩序に
覇権最優先で合理的思考以外は無意味とばかりに我が道をゆく
同じ時代、ほぼ同世代に在った英傑達と比べても、
それは支配者として、時代の先導者としては、明らかに前述二人の後塵を拝する決定的原因、つまりは欠点であろうが……
――”
それは本当に
「人として信じられるものが、あの二人には確かにあった!それが俺の結論だ」
正直、自分で言い切っておきながらも”理不尽だなぁ”と思わなくもない俺だが……
それでも、少なくとも、
「そうね……あの一騎打ちも……わたしのために……してくれたのよ……ね」
そして、誰にも聞こえないくらいの声でボソリと呟いた
「報告をしてくれた
俺の決断に皆は再度頷き、そしてこの議題で先頭を切っていた
「そうねぇ……”それ”で
垂れ目気味の瞳を俺に投げかけ、場もわきまえずになんとも妖艶に微笑むポニーテール美女。
「う……お、おぅ」
対して、年上のお姉さんに意味深に
――くっ!この女……不意打ちで
――てか、これじゃ示しがつかないだろ!だ、だれかっ!?
「
大胆不敵な
――な、ナイスだ!
「そ、それに……わ、私も……いいえ!私は
――おぉぉい!
――勢いに任せた俺の性癖暴露はやめてぇぇっ!!
「おお、大将。モテモテじゃねぇか、はははっ!どおりで俺様が相手にされないわけだ」
「いやいや、流石は我が君。この
――うるさい!うるさい!うるさぁーーい!
――大男に優男!!嫌みか!?揃いも揃って、ここぞとばかりに
「さいかぁ……」
――うっ!ま、まさかお前もか!?
「
「お前はもはや俺を”金づる”としか見てないなぁっ!!」
一転し、こんなふうに場は別の意味で大いに荒れたのだった。
――
「ええ、ごほん……再び仕切り直しだが」
何回目だよ、ほんと今日は……
今日の俺は、本当に恥ずかしくて顔から火が出る思いばかりだ。
――くそっ!
「それで、肝心の
「
恥辱に耐えながら会議を再開した俺の視線を受け、
「ああ……で、そこに例の
俺は続けながら席を立ち、そして円卓をぐるりと廻って、席の一つに腰掛けた”ある女性”の後ろで立ち止まる。
「情報からも、その将を戦場で自由に動き回らせるのは良くない。任せても良いか?
――
背後からかけられる俺の指名を受け、その場の視線が彼女に集中した。
「あ、あの……わ、私ですか!!お、王様!!」
普段から””おどおど”とした挙動のお団子ヘアの可愛らしい女性は、突然の指名と衆目を受けて、いつも以上にキョドって見るからに混乱する。
相変わらず年齢不相応な可愛らしさの女性……
彼女は――
「あ、あの……そ、そんな、く、
「足止めが主たる目的だから特に問題は無いだろ?
テンパってぐるぐる目になる
――なるほど……
俺はそれも仕方がないと思う、
「……ふぅ」
シュバッ!
彼女に話しかけたそのままで、無言で拳を突き出す俺!
――!
鋭い拳一閃!
振りかぶるどころか肘を僅かも引かずに撃ち出される一挙動の打突だ!
ヒュォン――
その標的は、片手だけで円を描く様に軽く打払った。
「っ!」
そして息を呑む一瞬で、影のように俺の懐に寄り添って立つ女。
もう一方の手刀は当然のように我が首元に寸止めされていた。
「……」
――ゾッとするほど冷たい瞳……
先ほどまでの可愛らしい女性は、まるで人格が入れ替わったかのような冷たい感情の無い瞳で間近から俺を見上げていたのだ。
「……お
「……っ……はは」
たった今、死を垣間見た極寒の沈黙の後で――
常温にて向けられる言葉に、俺はやっと吐き出した熱い息吹と共に苦笑いする。
首元に添えられたのは
「お、おお……」
「ほぅ」
「なん……て……」
存分に凍ったその場に絶句する者、感心の溜息を漏らす者が多数……
――
彼女が未だ
徒手格闘の源流である
その数年後に彼女は
その理由が何かは、知る者は少ない。
そして更に数年……
血で血を洗う戦国世界を転々とする”もぐり”の天才医師が噂になったが、それが
――あの時の
おっと!今は俺との出会いは割愛するとして、
つまり規格外という点では、
「任せる」
「……わかりました、
まるでキャラが裏返ったかのような冷静で冷酷な瞳で応じる
その簡潔な返事には、いつもの”どもり”など欠片も無い。
――”
「殺気……あったから、もうちょっとで斬るとこだった」
俺の隣にて、事の顛末を見守っていた”もう一つの恐ろしい殺気”を放っている
――
「やはり只者じゃなかったのね、その女……」
更に対面から恐ろしい
「まぁ良いわ、これで会議は終わりなのでしょう?」
ペリカは完全に
そのまま燃えるような
「まぁ、そうだ……なっぅ!?」
返事を返す俺の首に、不意に白い腕を回すと彼女はそのまま豊満な肢体を押しつけて耳元で囁いた。
「じゃぁこの後は大人の時間ね、
――おおぅ!?
なんとも横暴な胸……じゃなくて態度で俺を誘う
「さ、
すかさず
「お、おぅ、そうか…………て、わっ!?」
――や、
「サイカくん、それじゃぁ行きましょうかぁ」
――くっ……や、やわらかくて良い香りが……
ペリカとはまた違った
少し垂れ気味の瞳が
「や……ええと……だから……だな」
両サイドからのピンクな肉圧に俺は頭がクラクラしていた。
――だってしょうが無いじゃん!男の子だもん!!
「ふうむ……若、女体を堪能の最中に申し訳ないが、少し
傷だらけの厳つい顔のまま
「やらしい言い方すなっ!誰が女体を堪能だ!このエロジジィが!」
今日の俺はもうあらゆる方向から弄られる定めなのか!?
「これは申し訳ない。実は
「うぅ!?」
忘れていたワケでは無いが、今回は
確かにそれは間違いないが……
「なんだぁ?大将、ほんとに
「だから、うっせぇ!熊ゴリラ!!」
「そうカッカするなよ、エロ大将」
「ぐ……ぬぬぬぬ」
今日の俺は本当に弄られ当番だ。
大戦の最中に、それも劣勢な状況で、ほんとにこれでいいのか?我が
「そんなお子様の話は後にしなさいな、
――そういうのは普通は
「
――あうっ!?そんな
「サイカくん」
――くっ!
「さいふ……ご飯」
――あーーーーーーーー!!
――うるさいっ!うるさいっ!うるさいっ!
「俺の体は一つしか無いんだよっ!!世界に一つだけの体なんだよっ!!てか最後の
俺は大いに混乱し、そしてプッツンしたのだった。
「あの……その……」
――ちっ!
「まだなんかあんのかぁ!こらぁっ!」
俺は両手をブンブンと振って二人の美女を振りほどき、そして頭を乱暴に振って声の方を睨みつけた。
「し、尻が痛くなってきたので……席に座っても、よ、宜しいでしょうか?」
「…………」
――
「あの……」
――
「だろうなっ!!」
第八話「
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