第177話「借刀殺人」後編
第二話「借刀殺人」後編
「なんだか急に敵の動きが良くなりやがったなぁ、と思ったらそういう事かよ!はははっ!てか、正気か?この
ニヤけ顔にしては恐ろしい
激しい戦闘を繰り広げていた新政・
ここに来て起死回生!攻める
「……」
自ら隊を率いたその
「自分らが寡兵で劣勢だからってなぁ?本陣狙うのは定石だが、”
抜刀した刀を肩に担ぎ、馬上のまま目前の女を見下ろすニヤけ男の言葉は隠すことない嘲笑に
「ふふ、それこそ思い上がりですね、粗忽者」
下ろせば長そうな髪をアップに
戦場には全く似つかわしくない
「はぁ?」
自らに向けられる嘲笑を営業
そんな相手にクスリと口端を緩めた後、
「”
「ちっ!」
その言い方に、上げられた名に、
――そう、”この身を捨てる覚悟”で挑めば或いは……
心中に残る不安を隠して
美しい立ち姿の美貌の
「ふん、相変わらず小賢しい
ヒヒィィン!!
そう言いながらも、明らかに不機嫌になった
「そうですか、その
ブォン!
さらに挑発を続けたまま、馬上からの一刀を横に跳んで
動きにくいスカート姿とは思えぬ速度で馬上の敵が背後を取った
「かはっ!」
――す!……より先に!!
背後で至近の
急所に対する容赦ない一撃に、
そしてその一瞬にニヤけ男は――
「調子に乗ってんじゃねぇよ!
そのまま、振り返って
「がっ!!」
背中を固い地面に男の体重ごと叩きつけられた女は一瞬意識を失うほどで、
――ザスッ!
その間に
「おらよっ」
仰向けに失神しかけた女の腕を強引に掴んでひっくり返しながら、その手を両腕にまで及ばせてからうつ伏せに組み伏せる!
「…………うっ!うぅ」
意識喪失など許さない!
そう言うように両腕の関節を
「この
そのまま――
バキン!バキンッ!と嫌な骨の音を響かせ、組み伏せた
「あっ!あぐぅ!ひぐっ!」
普段から冷静沈着な彼女も、その激痛には
「テメェには小賢しい技があるからなぁ、念のためだ」
呵責の欠片も無くそう言い捨てた
ビィィーー
背中から大きく破り捨てた!
「ひゅぅぅ!さすが貴族のご令嬢だけあって、なんて白い……そそる
ドレスの背中部分から腰まで、大きく裂けた所から白い下着と更にそれまで裂けた部分からはその下着よりも白く輝く肌が露出する。
「ゲ……
激痛で無理矢理に意識を戻されたが、それでも
――はる……
臣下の恥は主の恥。
この場で陵辱の限りを尽くされるだろう自身を想像し、
隠れ無き王族である
最古参として仕えてきた
――あとは……さ、
そして最後に思ったのは、同じく
本名は
主人の品位を守るため、彼女が自害を決意したその時だ――
ドゴォォーーーーン!
「ぎゃっ!」「ひぃぃ!」
バゴォォーーーーン!!
「うがぁぁ!」「ななな!!」
轟く破裂音!!
兵士達がポップコーンの様に宙に
そして
「な……なんだぁ?」
ドォォーーーーン!!
「ぎゃひぃ!」「うぎゃ!」「おおお!」
土煙と共に次々と舞う兵士達は、どうやら
「た、大変ですっ!
慌てて報告に走り寄る部下に、お楽しみを中断されたのもあるのだろう、
「はぁ?ちゃんと報告しろよ!敵はいったい何者……」
ドシャァァーー!!
――っ!?
局地的に地震が起こったのかというような地響きの正体は、
「……」
大地に突き刺された見たことも無い大剣!
「おうおう、なんだぁ?
現れたのは――
「
「おう、ご苦労」
重量級鎧に身を包んだ兵団を率いた巨大な男……
「……」
その男の巨体に?……いやいや!
突き刺された”とんでもない”大剣に?……いやいや!
――剣?
この大男が担ぐ大剣、いいや!
――その剣には”
百五、六十センチはあろうかという刀身もさることながら厚みが通常の数倍はある。
そう、それは”剣”と言うにはあまりにも雑すぎるのだ。
――それは”ただ”の鉄の棒
――剣の形を模した凶悪な金棒
そんな恐るべき凶器を担いだ巨漢が
「テメェ!
そして
「ああ?そりゃ、
「
特に悪気はないだろう、
「まぁな、誰だろうと関係ない。この状況見たらもう勝負にならないだろ?はははっ!」
ここまで散々削りあって消耗し合った
「戦にもならないなら、せめて個人的にとな……”
――っ!
そこまでで!そこまで聞いたところで
「たかだかなぁっ!雑魚の数で圧倒出来ているくらいで敵陣に一騎打ちだと!?思い上がった報いをうけろよ、筋肉ゴリラ!!」
その見せかけと言動とは逆に、実は計算高く中々に冷静な
ここまで散々に
「”
ブゥオォォォーーーーーーン!!
「ぐっ!?ぐはぁぁっ!!」
その踏み込みは、僅か数歩でたった一振りの剣圧で
「なんかしたか?ヒョロい
「この……剣理の欠片もない雑な戦い方しかできねぇゴリラが!……真なる剣術の奥深さを教えてやる」
今回に限り感情が制御出来ていない
「…………」
そして、未だ地に伏したままの
――確かに技は力を凌駕するために、剣術に限らずあらゆる武術は
過去から現在まで数多の先人により研鑽され続けて来た、だが……
――目前の大男は例外過ぎる!!
単純な
見るまでも無く二人の勝敗を完全に予測できた
――軍としてはもう太刀打ちできない。自分達も
ならせめて!ここであの化物を倒して少しでも後の戦いを有利に!
ドゴォォーーーーン!
「ぐはぁぁ!!」
「ちっ、しょうもねぇ……」
「っ!?」
だが!その隙にっ!
短刃の
「なんだぁ?」
直後、
――
ガッ!
しかし……!?
その男は腹の傷に苦痛の欠片を感じる素振りも無く、外灯に向け無防備に飛び込んできた蛾を掴むが如く容易に――
「くっ!ぅぅ……」
女の細い首を掴んで吊り下げたのだ。
「なんだぁ?お前ら敵同士じゃねぇのか、共闘みたいな真似しやがって」
言いながらも
「が……はっ!」
血流が寸断され、呼吸を阻害され、四肢の末端まで痺れる感覚。
「う……あぁ……」
――や、やはり私如きでは……不意を突いても……
今度こそ、精根尽き果てた女の瞳から光りが消え始めた。
「この女……外れてた肩を無理矢理に
脱臼した肩を無理矢理に
そして、その腕を酷使してさらに攻撃などとは……
百戦錬磨の
「あ……」
綺麗に塗られた
――
だが、それでも確かに腹に突き立てた!
先ほどの動きから致命傷には程遠いだろうが、それでも少しでも……
――っ!?
薄れ行く意識の中で女が持った
だが現実は……大男の腹には傷が無い!
いや、それどころか血の赤さえも無い!
「……」
そう、なにも……無かったかのように、自分だけが白昼夢でも見ていたかのように、その当然の結果は存在しなかったのだ。
「ああ?これか?投げただけの
「……」
――そんな訳がない
――この規格外の筋肉ゴリラは……
聞いたこともない様な異次元の理屈で
「まぁいい、もう終わっとくか?女」
その間にもギリギリ絞まる首に、意識が薄れゆく
「は……ぁ…………」
――
日に二度目の末期の願いを心に浮かべる。
ギリギリギリ……
そして――
「すず……はら……さ、さい……か……さま……」
何故か最後に零れた彼女の言葉は、敵の総大将の名……
彼女自身、決して意識してではない。
いや、本当に意識が虚ろな状況で……
「…………」
その名に
「なんだ?どっかで”見た女”だと思っていたら……
――ドサリッ!
そのまま
「手当てしてやれ」
「よ、よいのですか?」
急に方針転換する上官に部下は驚く。
「敵ながら
「はっはいぃ!」
群がる敵兵士達を
――刀を借りて人を殺す
”敵己に明らかにして、友未だに定まらざれば、友を引きて敵を殺さしめ、自ら力を出さず、損を以て推演す”
言い含められた作戦、鈴原
――あんな”変節漢”を友とは片腹痛いが……相変わらず大した
心の中で自分の上に立つ男と認めた人物の才能を改めて認識して――
「ち、その変節漢はもうトンズラこいたようだがな」
そこにはもう
「まぁいい、この戦は
万が一そっちが失敗していても、この状況なら包囲を続けて確実に城を落とせる。
「フフン」
その時はまた率先して城に乗り込み、今度こそ!名に高い”
時だった――
ワァァッ!
終息へと確実に向かっていた戦場で、急に大きな歓声が上がり!!
それは――
ワァァッ!
ワァァッ!
順に、まるで波のように自身の位置まで伝播して振動する!!
「なんだぁ?」
その異変に――
生まれつき備わった本能からだろうか、大剣の柄を握りしめその方向を睨む
「ぎゃぁぁ!」
「な、な、な、なんだ……ぎゃふっ!?」
断末魔の悲鳴と言うより、疑問符のような叫び声!
ヒュォン!
「は?」
ヒュバッ!
「ぎゃひっ!?」
そんな奇異な最後で倒れ行く兵士達の、その隙間を縫うように走り抜ける影は……
シャラン!
光る細身の西洋剣を手に、
「どうも、
二つに揺れる眩しいプラチナブロンドの美しい乙女……
光る細身の西洋剣を左手に、驚天動地の剣技で駆け抜けてきたツインテール美少女が、眩しすぎる笑顔で現れたのだった。
第二話「借刀殺人」後編 END
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