第161話「不倶戴天」前編
第四十八話「不倶戴天」前編
俺たちが生活を営むこの”
日付が変わると世界も変貌する
それは
――”
”不完全な世界”
――まるで
――そういえば、確か”そういう話”があったんじゃないか?
――確かあれは……
――
―
「悪い話じゃ無いはずだ。
「…………」
――肝心の
「ふん、なにかと思えば”面白味の無い”内容だな」
俺の言葉を終始不機嫌顔で聞いていた男は、
ドンッ!
そう吐き捨てて俺との間を隔てるテーブルに行儀悪く両足を放り出した。
――相変わらず尊大な奴だ
大国、
身分的な事情もあって、過去、俺も直接の接点はそう多くなかったが……
「そうでもないだろう?
今回の
――労少なく大果を得る!
あの”
――いや、もしかしたら……
俺は今更そういう隠謀の可能性に気づいたことに
――そうだ!しかし、そういうことなら……
当然だが”
目の前で獲物を掠め取られたも同然なのだ。
だからこそ、
――この交渉は可能性があるはずだ!
「
俺は、相変わらず尊大な態度で俺を睨む
「ふん」
その不遜な王太子は鼻息で応じる。
「全く
「……」
――おうおう、それはどうも!
だが俺はそんな視線や言葉には馴れっこだ。
元々、大国達の歯牙にもかからぬ弱小国であった
いや、
ここ最近は”王覇の英雄”だとかもて
――
「はは……」
俺はそっちに苦笑いをしつつ、それは
「どこに不満がある?貴殿ら
なにより
自らの首を差し出して将兵の命だけは助けようと
そんな折りに俺は
その後、なんとか説得して翌日……
つまり、世界が
ドンッ!ドドンッ!
再び王太子の二つある
「ふん、それが不満だと言うのだ!」
そして俺を睨んだまま続ける。
「それに何の意味がある?貴様ら
「……」
――なるほど、そういう類いの不満か……
俺は納得し、そして大いに呆れた。
この不遜な王太子の不機嫌極まりない態度の原因は自国の損得、
――”相手にとって不足在り”って事か?
「どう取って貰っても結構、是非を聞きたい」
だが俺は、たとえ小者と侮られても目指す理想をお遊びと罵られても……
――成すべき事がある!
「…………ふん」
そんな
「……」
「……」
暫し……
どれくらいか……
視線を交し、心胆を量り合う俺たち。
「心底つまらん男だな……だが所詮”
「……」
不機嫌に呟いた言葉を受け、俺は無言ながらその英雄を睨んでいた。
――見事なまでの見下し方だ
だが、そういう侮りは後事を計算に入れると
つまり、”
続けて”
天空の王者たる”鳳凰”と唯の”
――そういう意味で奴が曲がりなりにも納得したのは……
ガガッ!
好き放題吐き捨てると
「良いだろう!我が
――完全に鈴原
「…………」
そして自称”天空の覇者”たらんとする英雄は、比べうるまでも無い小者の返答も待たずに背を向けて退室して行った。
――なんというか
奴を見るのは
相変わらずの傍若無人ぶり!
「まったく、あの唯我独尊ぶりは……」
俺は密かに
――あの難儀な性根は
思わずそう
――
―その後
俺は
勿論、
戦国世界での情勢変化は近代国家世界に如実に反映される。
況してや奴の参謀はあの”妖怪ジジイ”だ!
こういうことは早ければ早いほうが良い。
「よろしかったのですか?本当に……」
高速鉄道から乗り換えた専用車の中で――
アルトォーヌは見るからに青白い顔色で申し訳なさそうに俺に聞く。
「まぁ、なんとかする」
「何から何まですみません。感謝致します」
深々と頭を下げるアルトォーヌの姿は頼りなげでなんとも儚い。
「気にするな、
――因みに
覇王姫、ペリカ・ルシアノ=ニトゥは、
――”何から何まで”……か
近代国家世界での負傷や死は世界が切り替わるとリセットされるが、戦国世界でのそれは違う。
二つの世界は同等には繋がっていないのだ。
それが指し示す意味は……
「…………」
俺はいつもより青白いアルトォーヌの顔を密かに観察しつつ、その予測を口に出すことは封印した。
――ペリカの死……
だがその可能性については
「
生死不明の親友と、その親友と築き上げてきた国の存亡。
そういう複雑な心情の中で必死に自分の出来ることを全うしようとする心労は
そして俺は、そんな彼女達に対しどう接し行動するのか?
友好国で在り、付き合いはあるが……
一国の王として自国の利益を追求すれば、ここは没落する国家には下手に関わるべきではないだろう。
「…………」
――だが、俺はやはり
――
俺の記憶の奥底から亡き妹の欠片が蘇る。
「後悔の底で甘さを捨てされなかった俺は……それを許容することに決めたんだ」
俺は独り原点を確認する。
「
そして、そんな意味不明な言葉を呟いた俺をアルトォーヌは不思議そうな瞳で見ていた。
「なんでもない、心配ないって事だ。それから俺の呼び方だけど……そういう堅苦しいのは苦手なんだ、これから仲間になるんだから」
「…………はい、そうですね……わかりました、
「ああ、よろしくな。アルトォーヌ」
こうして車中の俺と彼女は、お互いに心とは裏腹な笑みを交し合ったのだった。
第四十八話「不倶戴天」前編 END
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