第160話「進退維谷」
第四十七話「進退維谷」
キン!キン!キン!
放たれた複数の
「よっ!はっと、物騒なモノ使うねぇ」
ザシュ!
そしてそのまま投擲者を鮮やかな剣技で斬り捨てる。
複数の敵に囲まれても余裕の
「そっちはどうだい?……って、聞くまでも無いか」
その
「粗方片づいたな、敵の正体は……」
”
「”
その目つきの悪い男は
「相変わらず抜け目ないねぇ、
刀を鞘に仕舞いながら、どこか
「お前ら、全員殺してどうすんだ。正体知らずに対処する気かよ」
誰に向けてか、目つき悪い男は
――そんなのは俺も解っている、可愛くない態度だ
俺は人を斬るのを趣味にしたような”
「それにしても”
俺は内心モヤモヤしたものを残しつつもそう呟き、そして後方で我が兵士達に護られた男達に目配せする。
――因みに”
「ま、誠に
そこには傷を負ったうえ疲労した青息吐息の将が部下の兵士に支えられながら立っていた。
――確か”鈴の槍”……
その槍捌きの凄まじさ故に穂先に吊された鈴の音さえならぬと称えられし凄腕の槍使いと噂の、
「そうか、なら詳しい事情は道中だな」
俺の返答に
――
俺達が”
これは何事かと、確認のために合流しようとした途端にさっき襲ってきた謎の暗殺集団が現れたのだ。
追撃部隊を先行して来ただろう部隊の狙いは勿論、隊の将である
「とはいえ、手練れを集めたとはいえ俺達は数人程度だからな、敵の追撃部隊本隊が追いついて来る前に、一度”
俺は恐縮する
――しかし……
――
と、色々詳しく聞きたいのは山々だが、今はそれどころじゃ無い。
隊長である
どちらにしても、俺たち
やはり今の状況での最善は……
なんとか
――
てなわけで、俺達と瀕死の
「こ、これは……ど、どうしたことだ」
再び戻った
「…………」
俺はゆっくりと状況を確認する。
「う……ああ」
「な……なん……で」
その光景に絶望の
ワァァ!!
ワァァ!!
「うわぁぁ、これは酷い状況だなぁ」
「かなりヤバいな、どうする?」
”やる気の無い態度”があからさまに
――
その男の、何者にも動じない黒い瞳が俺に対応策を問う。
「……」
これは……全くの予想外だ。
暗黒姫は
俺もそういう嫌な流れだと、感じ始めてはいたが……
ワァァ!!
ワァァ!!
この
――鮮やかな紅地に
それは紛れもない
つまりは
――また……してやられた……くっ!
俺はまたも
”元”
あの妖怪ジジイに一本取られたのだ!!
「…………」
「おい、鈴原
「…………」
隣から感情の起伏の無い声で問い詰めてくる男にも、俺は直ぐに反応できずに拳を握りしめていた。
「そうか、なら勝手に動かさせて貰う」
――!?
「お、おい!」
そして、数秒と待たずにその場をアッサリと離れようとするその男を俺は慌てて引き留めていた。
「なんだ?策が無いなら俺は俺の思うように動くだけだ」
そして当然のようにそう言い捨てる……
「お前なぁ、この状況だぞ!そんな性急に……」
「死線の上で
――うっ!確かに……
外的要因による思考停止。
敵味方の思惑が同時に幾重にも交錯する
「…………そう、だな」
そう、確かにその通りだが、
――
「だったらサッサと策を出せよ、王覇のなんちゃら」
――ちっ、イチイチ嫌な呼び方を……
俺は苛立ちながらも直ぐに思考を立て直していた。
「兎に角、包囲した敵をくぐり抜け城内のアルトォーヌと合流する!」
――
――同時刻、
ヒュバ!ヒュバ!
「ぎゃぅ!」「ひぐっ!」
黒髪の少女が両腰に携えた刀を二本同時に抜き放ち、同時に斬る!
ヒューーヒュォン!シュヴァ!
「がっ!」「ぐはっ!」
そして信じられないことにその二刀を宙に置いたまま、目にも
ヒューーヒュォン!
シュバ!ヒュヒューーヒュオン!
「ぐっ!」「ぎゃ!」「がっ!」「ぎゃひっ!」「ぐわぁぁっ!」
斬る!斬る!斬る!斬る!
四振りの
二本の腕のみで四刀を自在に、ジャグリングの如く操る彼女の手元は肉眼で確認するのは至難の業であった。
ヒューーヒューーヒューーヒューー
キン!キン!キン!キン!
そして――
大いに舞った
「……」
――改めて
肩まである黒髪と白い肌、そして細い腕。
武人というにはあまりに無縁そうな、華奢で清楚な十代半ばの少女。
「……」
か弱そうな容姿、視力を失った少女、だが現実には……
自らが斬り伏せた骸達の中心に独り立つ盲目の少女剣士が姿は、黒い衣装にベッタリと血化粧を装った狂った
「
少女を囲む骸の輪から少し離れた位置で佇む長身で細身の引き締まった体つきの男、長めの黒髪を雑に纏めた洒落っ気の無い男は、朱に染まった少女と違って返り血どころか衣服に乱れも無く腰の武具は納刀したまま。
両腕をだらりと無防備に下げているが、それでも危険極まりない
そしてそんな言葉を受けた少女の腰には右に三本、左に二本、計五振りの刀が連なって下げられている。
””
その異形故に”それ以上も在るのか”という問いだったろう。
「私に何か御用でしょうか?
ゾクリと背筋を凍らせる男の眼光を正面から受け止めても、寸分も動じること無く応じる少女。
視線を交わすだけの二人だが、先ほどの惨殺現場よりも余程……
「”
質問を受け流され、質問で返されても意にもとめずに要件を告げる男は
現在、大国
「閣下が?わかりました」
盲目の少女剣士はそんな剣鬼に動じること無く、五振りの凶器を従えた革製ベルト下でスカート調になった上着の裾を貴婦人の様に摘まみ、軽く会釈してからその場を後に……
「……そうでした、
――と、
未だあどけなさの残る桃の唇を僅かに上げ、そう告げてから去ったのだった。
第四十七話「進退維谷」 END
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