第159話「偽りの白雪」後編
第四十六話「
――良し!こういう状況では
俺は交渉相手が
「
前にも言ったが、今回は駆け引きなど必要無い!
これは国家間の、人の世の
そして――
アルトォーヌにとっては"恐らく"親友たるペリカ・ルシアノ=ニトゥの安否に関わる問題で、
そんな純粋なる申し出に白き美女は……
「それは
――ペリカの感情?アルトォーヌの為に抱く?
いやに歯切れ悪く、困った表情で俺を見る儚げな美女。
俺は理解が追いつかない。
「それは……どういう」
俺がその疑問を素直に口にした事に対し――
白い美女は、白く折れそうなほど細い首をゆっくりと縦に振って、寂しそうに微笑んだ。
「……」
――その情景は……
すぐに消えて無くなりそうなほど、溶けて消えてしまいそうな、
儚い雪月花の様な存在だった。
「アルトォーヌ……」
思わず俺はその名を口にする。
「わかりました。ペリカが”そうである”様に、私にとってもペリカが最優先です。鈴原様に全てをお話させて頂きます」
しかし頼りなげな存在であったはずの、彼女の碧い瞳はしっかりと俺を見据えていた。
「……」
「鈴原様はペリカが
「……」
――中々、衝撃の事実
だが俺はそのまま黙って彼女の話の続きを聞く。
「序列四位……つまり、私は”
――序列四位?
――だがそれは
「はい、ですから”
俺の表情から読み取ったのだろう、彼女は答える。
「”
「奪う?」
「はい、鈴原様もご存じの通り”魔眼”は生まれつきのものですが、それも何者か、人ならざる存在の思惑で与えられたモノかもしれません。そして魔眼の苗床として選別された女性の体内で育まれ、何らかの”鍵”を得てその真なる力を宿すようです」
”魔眼の姫”であった二人は、俺なんかよりずっと昔から色々と”それ”について調べていたようだ。
「ですが私は生まれつき病弱で、それに耐えられないと判断されたのでしょう、ある時、私たちの前に現れた正体不明の顔無しの怪人によって、私だけその魔眼を強引に
「そんなことが……」
「無論、それは真にそれに相応しい本物に移すためだったのでしょうが、それにより私は色々と……なんといえばよいのか……つまり、苗床でしたから、強引な除去方により生命力のような力を多く奪われ……」
「…………」
――そうか
アルトォーヌ・サレン=ロアノフが初対面の時からこれほど希薄な存在感で、儚い印象を受けるのは全てそういう経緯が……
「現在の私は生きているのが不思議なくらい、出来の悪い
一瞬だけ、聡明な彼女に似合わない自虐的な笑みを浮かべる白い美女。
だが、直ぐに相変わらず落ち着いた口調で続ける。
「ここに来て、今まで以上に”こういう状態”なのは、”
「
アルトォーヌは頷く。
「魔眼を
「……」
彼女は淡々と話すが、中々に
「いいえ、
アルトォーヌは曖昧な笑みで”自分の事はこの際どうでも良い”と、かぶりを振った。
「現在、”
病人の様な青白い顔……というより、そのものズバリであった、というか生命力を削られ続けるなんてそれ以上の状態だ。
そんな最悪の体調でもアルトォーヌは、親友の為だろう、しっかりとその根拠を答えた。
――
とはいえ、俺としては成る程、
振り返れば、あの
一方的に
「ペリカに会えても
――というか、俺の予測では既に二人は殺し合っている可能性が高いが……
「なら、アルトォーヌ殿。我が
そういう事情なら直ぐにどうこうは無理だろうと、俺は取りあえず”自国の将である
「でしたら”
「……」
この”白き砦”の申し出には俺も正直驚いた。
”
今回の進軍ルート、各拠点の素通りだけで無く、率先して支援してくれるとは……
勿論それは俺にとっては大・大・好都合!
時間を大幅に短縮できるのだが、余所者である俺達をそこまで支援してくれるのは、俺個人に対する信用と言うよりは
――”よろしくお願い致します”
とは、主であるペリカの意向に反さないように配慮した、暗にそういう意味の言葉なのだ。
「解った。出来る限りの事はしよう」
俺は衰弱した状態でも力の籠もった彼女の碧い瞳にそう応え、そして一路……
魔眼の姫達が因縁の地へと急ぐのだった。
第四十六話「
◆雑談
カクヨムさんにイラスト機能付いたと知りました!
と言っても「近況報告」にですが(^0^;)
早速載せましたので、見て頂けたら嬉しいです。
小説のイメージがより鮮明になって楽しんで頂けたらいいなぁ。
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