第156話「一顧傾城」後編
第四十三話「一顧傾城」後編
南側に流れる
「どういうことだ、
額から鼻まで覆った黒い仮面を装着した男、露出した
新政・
ならば奴らが布陣した
だったのだが……
慌てて動く様子も、打って出て対処しようとする気配もない。
「この一手が致命的であることを理解できぬ”
と、
「き、緊急報告っ!!こ、
――っ!?
予期せぬ兵士の報告に
「ば、馬鹿な!!
思わず怒鳴りつける
「く、詳しくは未だ……しかし斥候の報告では三百に満たないと」
「……」
その報告内容で
――そうだ、あり得んのだ、これ以上の兵など……
補給を断たれると焦った敵が苦し紛れに兵を掻き集めたとしか思えない。
そういう困窮した状況での苦し紛れだろうが……
「三百程度でなんとする?ははは、適当に二千ほどの兵を向かわせれば簡単に撃退を……」
「率いる将は”鈴木
――っ!!
しかし黒仮面の軍師は続く兵士の報告に再び目を見開いていた。
「な!!す……鈴木……”鈴木
――
―
報告を受けた
「策の修正を!本作戦案の軌道修正を取り急ぎ具申致しますっ!!」
「え?!!?」
取るものも取りあえず、慌てた様子で駆けつけた黒仮面の軍師を前に、
「何事だ?軍師、貴様らしくもない」
オタオタとする若き総大将に代わり、
「
「それは聞いている。だが、高が三百程度であろう?その様な敵は……」
「率いているのは”鈴木
――!?
――”鈴木
勿論、当時参戦した
目前の
――希代の驍将にして類い希なる智将、”鈴木
何故かそれまで全くの無名だった奇妙な顔面包帯男の名は、一躍”
”その男”がこの場面で再登場し、しかも僅か三百程度で奇襲などという愚策とは……
「
兵力の底であったと思われる新政・
「…………我らは”
そしてこの位置は――
南の
本来なら奪還した九つの城を用いて戦う有利さを、
「ど、どうするのだ?
「…………」
見る間に落ち着きを無くす総大将、
「心配めさるな、
そこに黒仮面の軍師が自信のある顔で割り込んだ。
「おお!さすが
現金にも表情を反転させる年若い総大将に、黒仮面の軍師は口端を
――それは総大将を安心させるというよりも小馬鹿にしたような含みのある笑み
「はい、先ずは本軍を三隊に分けます。そのうち二隊の目的は……」
――
―
現在、
そのうち一万は奪取した九つの城に分散され、各城に守備兵として在る。
残った三万の兵を
その中から右翼軍五千と左翼軍五千を編制し、夜陰に紛れて密かに
混乱して麓へと押しやられる京極
最後は
「折しも今夜から明朝は濃霧だという地元民の情報を仕入れておりますれば、霧と闇に紛れた我が軍の行動は成功間違いなしでしょう」
――なんという妙策!
――敵の裏の裏をかく妙案!
流石は”
――
―
「こ!これは!!どういうことだっ!!」
早朝……
作戦通りなら落ち延びてきた京極
――ドン・ドン・ドン!!
作戦決行、敵軍が落ち延びてくるだろう時間まで半時はある時間帯に……
――ドン・ドン・ドドドンッ!!
密かに行軍していた
霧の中から正面に突如現れた無傷の新政・
――ドドンッ!!
視界が
そして遠く霧の向こう、
敵軍の中央付近に暗黒の美姫が居た。
「……」
戦場でさえ優雅で、
霧の中でさえ、腰まで届く緑の黒髪はゆるやかにウェーブがかかって輝き、
白く透き通った肌と対照的な
――
彼女以外全てを無価値に貶めるほどの美貌を所持する暗黒の美姫は、
「
槍を地面に置いて主君に
「そう、では
深々と頭を下げ、馬に乗って去る”
そしてそれを見送る
彼女を決定的に他者と画するのは”
「五手詰み。
戦場を冷徹に見据える漆黒のそれは一言で言うなら”純粋なる闇”
恐ろしいまでに
それは十二の邪眼を持つ
序列二位である
「”
彼女の艶やかな
言葉通り”一顧にて城を滅ぼす”絶世の美姫が瞳は随分と遠くへ向けられ、
それは、
そこには、本当に欲して止まない”愛しい好敵手”に思いを馳せる少女の姿があった。
第四十三話「一顧傾城」後編 END
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