第156話「一顧傾城」中編
第四十三話「一顧傾城」中編
「
二十歳そこそこ……
際だって高級そうな鎧に身を包んだ見るからに若い将は広間の上座に腰を下ろし、眼前二メートルほど離れた床に直接、ドッカと
若き将の名は、
「…………」
対して床に
――
向かい合った歳若き将と歴戦の面構えで黙る偉丈夫。
その周りを囲むように並んで控えた将達は、誰もがピリピリとした緊張感の中で声を発せられずに事の成り行きを見守っていた。
「
そして場の空気を読んで主君に代わり言葉を続けるのは、
「……」
だがその言にも見るからに不満顔で黙る
――元を正せば前回の”
正統・
それは実質的には
独断専行で領土を失った罪として、
それは武人としてはこの上ない恥辱であり、再起の目どころか命さえ危うい状況である。
当時の
その
更にはその”
言わずもがな、命を賭して”汚名をそそげ”との意味だ。
生粋の軍人たる
だがそれでも
ここに来て自分に理不尽を押しつけた王である
――面白いわけが無い
だが、それよりも……
それは不自然なほどに
そしてその後に……
――
無論それは全くの
――馬鹿らしい……敵の謀略以外のなにものでもない
その一連の処遇に関する後ろ暗さからか、
――”親にしてこれを離す”……
――全て”
生粋の武人である
戦場では無類の力を振るう
「……………………承知」
――!
朱色鎧の
――
途端に、居並ぶ将達からば詰まっていた息が排出され、その場に一時の安堵が漏れる。
「……あ、と……ならば、と……」
「
ただ”承知”の一言を残し黙してさえ圧倒的な存在感を見せる猛将、
それに気圧されて処断の言葉が上手く出てこない
「……」
一通りのやり取りが終了し、がっちりとした肩幅に鍛えられた太い腕、そして厚い胸板の
――将軍職を解かれ、子飼いの兵のみを従えて
――
だが、処断されてもなお意気が
諸将が固唾を呑んで見守る中、陽とした風貌にして実に見事な男ぶりの、天下に隠れ無き武人は堂々とその場を去った。
こうして――
京極
――
「そ、それで……この後は……敵の援軍に後方を抑えられ、す、水源を抑えられた我らは、ど、どうする?
堂々たる背で去った武人とは全く対極に、見送った
「なれば、
その様を見るに、正直どちらが総大将かわからない程であった。
「はっ!その件に関してはこの
そしてその
額から鼻まで覆った黒い仮面を装着した男、露出した
「敵は十二カ所と点在する城塞群のうち”九城”を抑えた我々の背後、
眼前に在る””
「
そんな複雑な地形に十二カ所の城塞群が並び建つが、既に占領拠点が”三城”のみとなった新政・
それは意表を突く異例の敵中行軍であって、その戦果は戦に有利な背後と高地をまんまと抑えて更には水源をも断つという奇策だったのだが……
「”
明確に相手の策を読んでみせる
「
――が、
少しばかり歪んだ思考を持つと噂される黒仮面の策士は、顎髭の上にある口元を
「そ、それは……」
部下の献策に、あからさまに焦りを見せる
「うむ、攻め手の補給を断つのは戦の常だが……それは可能なのか?」
またもやオタオタとする若い司令官に代わり、副官の
「は!無論です。新政・
「な、なるほど……う、うん……」
自信満々に陰気な笑みを浮かべる黒仮面軍師の言に
「確かに……なけなしの兵力をかき集めただろう新政・
「う、うん……私もそう思っていた。よし、ならば
そして臣下の言に後押しされた
――オウッ!!
「……」
――
返事と共に諸将が頭を下げる中、黒仮面の軍師は内心ほくそ笑む。
取りあえずはこの戦で
それは自身のより一層の出世を確定させる手段である。
が、その後は……
野望でのしあがった曲者の
だが、その父とは違い息子である
――早く王位に就かせ、より良い傀儡として我が意のままに……
黒き仮面の下で
第四十三話「一顧傾城」中編 END
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