第155話「焔の闘姫神」後編
第四十二話「
「くっ!突破だ!そのまま突破するぞ!!」
――ぎゃぁぁーー!!
――うわぁぁっ!!
一気呵成に攻め込んだ兵士達は渋滞する四角い空間で足止めを食らい、四方を囲う壁と左に見える第二門、
「おおおおっ!!」
ギィィーーン!!
馬上から槍を構えて突撃する
「噂に高き
「それを言うなら貴様こそだ、
賞賛を受けた
”鈴の槍”――
対して、”
対峙する敵を狩り尽くし、都度に返り血で槍の柄まで真っ赤に染まってしまうという理由から、
そんな武勇の二人が激突したのは、
ギィィーーン!!
ギィィーーン!!
二合、三合と火花を散らす二筋の槍!
だがその穂先が四度交わる前に、
「惜しいがこの場は退かせてもらう!精々生き延びられよ!!」
守備側の
ならばこそ、部門の誉れを捨てて第二門へと走り去る男の背に躊躇は無い。
「ちぃっ!このまま押し込めっ!!
そしてそれは
ダダダッ!ダダダッ!
必死に追い
ダダダッ!
だが、その追撃は絶妙に
「くっ……巧妙な」
降り注ぐ弓矢の雨の中、容赦なく兵を削られながらも右手に槍を、左手で手綱を
ドッゴォォォォーーーーン!!
「なっ!?」
逃げ切ったと確信した
必死に追い
ドドドォォーーーーン!!
大地をも揺るがす複数の破裂音と同時に巨大な砂埃が舞い上がり、そして――
ドドドドドドドーー!!
――ぎゃぁぁーー!!
――うぎゃぁぁっ!!
「さぁ、
退却する
赤毛の駿馬に跨がった”元凶”は、
ザシッ!
元凶の手により、馬上から雑に台地へと突き刺される鉄柱。
情熱的な
深紅の髪を燃えさかる炎の如きに戦風に
「服従か散華か!
ブワッ!
計らったかの様に突き刺された鉄柱の、旗竿の”
それは”一”の文字の下に三本の
本州西の大国”
「お、おお……
「裁きの炎、し、熾天使が……我らを断罪に降臨したの……か」
後方を一瞬で壊滅させられ、辿り着くべき第二城門の直前で立ち尽くした
「な……
そしてそれは、
――
天性の直感と呆れるほどの強運を備え、凶悪なまでの軍の強さを誇るという”戦の子”、”武”の
参謀でありペリカの幼なじみでもある”白き砦”、”智”のアルトォーヌ・サレン=ロアノフ。
そしてその”武”の
「……あ……あぅ」
ドサッ!
「お、お赦しを……」
「……い、命ばかりは」
ドササッ!
”覇王”にして個の武勇を天下に轟かせる”紅蓮の
その圧倒的
「ぬ……うぅぅっ!」
だが、その中に在って
「う、
「……貴方、その主君である
鬼気迫る形相、渾身の気迫で門前で構える
「軍略とはそういうモノだ……我が命を用いて
そして応える
「……」
課せられた使命……
”
現在の統治国家では無い、
「いざっ!覇王姫!!」
その言に炎の美姫は小さく頷いた。
「
「我が名は
「アルヴァーク」
ヒィィーーン!
透き通る肌に映える鮮烈な石榴の唇が愛馬の名を発し、赤毛の駿馬はその瞬間に炎風となって的へと疾駆する!
「おおおおおおっっ!!」
「……」
直線上!見る間に距離は消失し、
ガッ!ガガッ!!
全身全霊の力で突き出された不惜身命の穂先は、将姫の首では無く拳に押さえ込まれる!!
「ぐっ!!おおおおおおっっ!!」
ならばとその拳ごと貫かんとする壮士の意地を――
ギャギャ……ガッ!!
無理矢理に膂力で押し込む覇王の拳!!
グググ!!
グ!――――――メキ!メキャキャッ!!
「なっ!?」
そしてそれは恐ろしい事に!!
朱槍は貫くで無く!
或いは折れるで無く!
メキャキャキャッ!!
――バカンッ!!
固定した鉄棒が万力で圧迫されて破裂する様に男の手元で
「なっ!?なななっ!!」
死を覚悟した壮士にして、驚愕する怪異!!
常軌を逸する破壊力、いや圧壊力!!
背後で鉄門に宛がっていた槍尻は数十センチもめり込み、
「く……」
死を覚悟した男の目には、迫り来る
「
ただ
ブワァァッ!!ガコォォォーーーーン!!
激しい衝撃と共に砕かれたのは男とその背後にある鉄扉!
何人もの屈強な男が
――おっおおおおおおっっ!!
――おおおおおおっっ!!
「覇王閣下……手こずりまして申し訳ない」
最早、残った
「…………思ったより”早かった”わね」
紅蓮の
「は?閣下……」
噛み合わない会話を不思議に思った
――
――!?
――果たしてそこには!!
「それとも私情を挟むなら、”遅過ぎる”と言うべきかしら?」
血と炎の赤が溢れる戦場只中に佇む、白く輝く騎士姫が独り。
「……」
輝く
整った輪郭と、それに応じる以上の美しい
白い肌を少し紅葉させた頬と控えめな桜色の唇。
「え、ま……まさか」
噂に聞く美貌と風貌に
「
――そして特筆するべきはその
プラチナブロンドの美少女が所持する瞳は、輝く銀河を再現したような
星空をも霞ませる魅惑の
「序列三位……
プラチナの騎士姫はペリカの問いかけには……いや、外界の一切に反応せずに呟く。
――
そして機械的に動いた白魚の如き右手は、
切先から峰側の
「
美しく整った造形に表情が著しく欠損した人形の様な存在。
ペリカは以前の印象とは変わり果てた騎士姫の方へ完全に対峙するように向き合い、そして覇王の拳をゆっくりと構える。
「そう、
高く高く……
巨大で、激しく、雄雄しい造形の覇者の拳を構え、名高き紅蓮の
――
――輝く銀河を再現したような
二つの魔眼が交じり合い、そして――
ブワッ!!
ヒュバ!!
燃える赤は圧倒的な風となり!!
輝く白は無機質に
「今回だけは歓迎するわ、
「……」
第四十二話「
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