第153話「虚矢現滅(ファントム・ショット)」前編
第四十話「
「
俺がそんなトンデモ情報を得たのは、新政・
「はい。
流石は”白き砦”と恐れられるほどの智将、
「なんで東の……海を越えて
副官である鈴原
「わかりません、ですがそういう状況であるのは事実です」
「…………」
――考えられるのは……
今回の
つまり、宗教国家
仇敵で犬猿の仲である
「
――攻撃は最大の防御……いや、意趣返しってか?
――それこそがあの”紅蓮の
俺は燃えるような深紅の髪と、
魅つめる者
「それで、どう致しましょう?」
そんな俺にショートカット美少女の副官が遠慮がちに尋ねてくる。
「…………そうだな」
我が
だが
――あの
そういう疑問を胸に、結局は全く援軍の必要などなかったという間抜けな状況の俺はチラリと視線を移す。
「アンタらはどうする?」
俺はその問題をその場に同席していたちょっとワケありな面々に投げたのだ。
「私共の目的は元から
しっかりとした瞳で俺を見据えて即答したのは、確か
刀を携えた、腰まである艶やかな長い黒髪が美しい色白の
「そうですね、敵が敗走しているなら、
続いて答えたのは、前髪を横に流した肩までのミディアムヘアの清潔で生真面目な印象の、毛先を軽くワンカールしている辺りオシャレにも気を遣っている感じの少女。
利発そうな静かな瞳からこの一派の参謀的な役割だろうと推測される少女は、控えめな薄い唇に少し含みのあるような悪い笑みを浮かべる。
――こっちは確か
残るこの場に居る異色の一派はあと二人……
「まぁねぇ、子供のお使いじゃないから僕たちも」
――そして
「……」
――こいつだ……
”やる気の無い態度”が表に出た様な、見た目は悪くないが目つきは少々悪い男。
いや、目つきが悪いと言うよりも本当の意味で何者にも動じない瞳を思わせる不感症ぶりが黒い瞳に宿ったある意味得体の知れない男だ。
――確か
俺と同じ歳だと聞いたような気がするが、とてもそんな浅い経験を生きてきたとは思えない、得体の知れない男。
年相応とはほど遠い
つまり俺の本能はこう告げているのだ。
――
「…………
と、思わずそんな本音を小さく呟いてしまう俺だったが、とはいえ
「そうか、なら……参謀、どうするのが最善か?」
俺はそのまま俺の後ろに控えていた
「はい!であれば……ここは軍を二手に別け、一方はこのまま進んで当初の攻略目標である
ピシリと背筋を伸ばして応えるのは、くせっ毛のショートカットにそばかす顔の快活そうな顔立ちの少女。
俺が
「なるほど、確かに」
「私も同意です」
「だね」
急に振られた割には中々に堂々とした態度で応じた少女に、その的確な方策に、
――が……
「二手に別けるのは良し!だが足りないな、それでは上策とはほど遠い」
――っ!?
俺の言葉に場は引き締まり、そして面々の視線は再び献策した少女に集中する。
「で、では!別働隊による迎撃を確実にするため、”
少女は即座に修正策を提案するが、
「足りない!敗走といっても軍だ、
俺により、それも”にべもなく”却下される。
「う……では、伏兵部隊を本隊から
「足りない!迎撃部隊の援軍になるのは兵のみか?硬直した思考を捨てろ!」
「う……」
――ざわっ
即座に献策を否定する、
「あの……
やがて、流石に場の空気の悪さを見兼ねた
「参謀!人も国も、息の根を止めるのは”心臓”だ」
俺は構わずにそう言った。
――っ!!
そして……
誰もが哀れんだ瞳を少女に向ける中で、くせっ毛のショートカットにそばかす顔の少女は――
「……」
「つ、
――ザワッ!
途端、周囲は一瞬にしてざわつく。
急遽、敵の首都へと攻撃目標を変更となれば当然だろう。
「なぜ?」
そして俺はそんな周囲を無視して参謀に問う。
「主力が不在の
「……」
息を呑む者達。
そして
だが敗戦で戦意低下が著しい将兵達に届く凶報……
宗都、つまり首都の陥落と同時に帰る場所を奪われた喪失感。
兵士達の家族は人質同然で、そして補給も断たれる。
そんな喪失感……いや、虚無感に陥った中での伏兵による強襲はさぞ辛かろう。
――そう、
「宗都攻略は可能か?」
ここまでは良し。だが肝心なのはそこだ!
「主力軍が不在である現状で可能性は充分にありますが、必ずしも攻略した後で敵に知らせる必要はありません。それがたとえ疑報であっても、攻め込まれたと言う事実と火煙だけで虚矢は実矢として兵士の心を折るでしょう」
続く俺の問いに参謀の少女はしっかりと俺と視線を交じらせて応えた。
――虚の矢にて実の大軍を打ち
――
俺はニヤリと笑い返した。
「上策!我が参謀、”
――おおっ!
高らかな俺の言葉に一同は大きく頷き、そして一気に士気も上がったろう。
「行くわよ
「はは、
「そう言う
雌伏の時を耐え忍んできた
「……」
そこに只独り……
そう、その男だけは……
「…………くだらねぇ」
第四十話「
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