第149話「奈落の匕首」
第三十六話「奈落の
「違うわ、”
紅白地にヴィヴィッドな大輪の牡丹と桜をあしらい、金駒刺繍がふんだんに煌めく豪華な晴れ着姿の、
「それより
そして俺の質問に早々に返した美女は、俺の返事を待つ気も無く、対面のソファーから俺の横へと移動を始める。
――大国”
――スッ
「お、おい!
普段は腰まで降ろされた緩やかにウェーブがかかって輝く緑の黒髪を、毛先を
そこにあしらったピンクパールの大胆な大輪の髪飾りの豪奢さと、おくれ毛のキュートさという、普段の彼女とはまた違った魅力を溢れさせる出で立ち。
「ちょっ!?このメス猫……
大国の令嬢がみせる大胆な行動を前に、ソファーに座した俺の背後に立って控えていた
その際、咄嗟のことでつい本音が出てしまいそうになったが……流石にそれは言葉尻でなんとか修正して誤魔化したようだ。
「…………」
そして俺の背後で立った
細い銀縁フレームの眼鏡をかけたお堅い秘書といった趣のある中々の美人、
彼女とも
「今日はね、少し”
ギシリと……
”唯我独尊”我が道を行く美姫の座ったソファー座部が少しだけ沈み、彼女の方へとやや傾いた俺の右腕に
「なっ!?」
大きめの瞳を見開いた
――性格悪っ!!けど……か、可愛い……すぎる
「…………じゃなくてっ!」
俺は思わずボーとなる頭を振り払い、そして叫んだ!
「”
それでも変わらず薄い微笑みを常備する
だが、その彼女の白く透き通った肌と対照的な魅惑の唇よりも何よりも、
――対峙する者を
何年も彼女に付き従った古参の家臣であっても、彼女の美貌……特にその
「
「ぐっ……」
そう、
――それは一言で言うなら”純粋なる闇”
それほどに抗い難い、まことに希なる美貌の
その極めつけは、彼女を”
「
「お、おう……」
そして俺は、多少苛立った
――
――勿論、そんなのは知っている
「俺はまた……
気がついた時、ここに居る誰に言うでも無く俺は呟いていた。
「
――そりゃそうだろうよ……
あの”最強無敗”とか相手に散々に苦労した俺を前にして、まんまと”鳶に油揚げ”の実行犯の暗黒姫様は、何の呵責もない素敵な笑顔をお恵み下さる。
「周到だな
あのタイミングの良さは、やはり
つまり、いつも通り俺は彼女に”利用”されたって訳だ。
「
「……そ……そうだが……なんか納得いかない」
事の一部始終で背後の
「ふふ」
そんな不甲斐ない俺を魅惑的な漆黒の瞳で見つめながら、至上の美姫は続ける。
「それで、私はこの先、東と北を統べる予定だけれど、
――東と北?
――それは
――ならば……
「西とは俺の方で”
”
目の前の
流石にそんな身勝手な言葉には、
「なにも
「何を勝手なっ!!」
そこまで話しかけた
「
流石に堪りかねたのだろう
「…………」
「こ、このっ!!毎回毎回、
今まで抑えていた感情が溢れる
「お待ちを!その言は聞き捨てなりませ……」
主君への度重なる
冷静で人一倍場を弁える彼女でも”
だが、そんな状況下でも俺は、
「
俺の為に怒ってくれている
「うぅ……
多分これは決して欠かしてはいけない、そんな最重要事項が潜んでいると!
そう俺の本能が告げている!
「…………」
暗黒の美姫はそんな俺を見つめたまま。
「
「
「……」
数瞬置いて、まるで俺の反応を確認するように、
――
――いや、確かに”
「あの”覇王姫”、ペリカ・ルシアノ=ニトゥが負けるかよ?」
俺はそれが信じられない。
馬鹿げた運を持つ”戦の子”、
そして”
――こと、
そんな俺の思考を察したのだろうか、暗黒の美姫は言う。
「あの”花火女”。良くも悪くも”
――倒れる?
――倒される?あの”覇王姫”が?
――
「それこそ考えられないな、ペリカを倒すなんてのは最強無敗、
――そうだ、”
時折見せる拳に宿るあの”炎”
恐らく戦闘に特化した魔眼の所持者だと……
「流石ね、
――!?
――”例外”が唯一無二”!?
――そ、そうだ、確かに
――だが……
――それは……
その可能性に思わず思考停止する。
いや、その先を考えたくないという本能が働く俺を見て……
「ふぅ……」
暗黒の美姫はあからさまに溜息を
「相変わらず優しいのね、
そして本当に不機嫌にそう言うと彼女は続ける。
「
――
話の流れで充分予測できるその名を、一瞬、俺の頭は拒否した。
だが……
「”とある筋”からの情報で、最近どうやら”魔眼集め”に行動移行しているらしい”
――”とある筋”……ちっ!
「あの破戒坊主!いやその後ろで糸を引く奴か!気にくわないな」
それは俺の率直な気持ちだった。
「
――ちっ!
確かに、
――”
「……なら
「…………」
俺は思わず小声でそう呟いていたが、
「それで新政・
「…………いいえ。
私情を捨てきれない俺を冷ややかに見ていたはずの暗黒姫はしれっと私情入りまくりの台詞を放つ。
「重要なのは、人類共通の敵と言えるだろうあの怪人の魔眼収集を阻止すること。この一点だけよ」
「……」
――取りあえず、ペリカがどうでも良いかは置いておいて……確かにあの
「その為の旧
俺の言葉に
「だが、
流石に俺でもそこまで
多少の意地も無くは無かったが、その言葉に背後の
「なら雌雄を決しましょう。予定よりは少し早いけれど私の新政・
――!?
駆け引き?
挑発?
しかし確かに美しき口元に含んだ隠しきれない期待への
ゾクリと背筋に走る殺気は本物だ。
「………………
その瞬間、”暗黒の美姫”、”無垢なる深淵”の吸い込まれそうなほど純然たる奈落の
第三十六話「奈落の
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