第146話「勝兵先勝」
第三十三話「勝兵先勝」
「ではその様に……皆も抜かりなく進めて下さい」
鈴原
主座に坐した俺の左隣に副官の鈴原
右隣には
そして前に膝を着いて
「では、これにて解散……」
「くっ!だから俺はどうしても鈴原に会って……うぐ……くっ!か、構うなよっ!」
――あれは……
「構う?調子に乗るな
――そう、独眼竜で、後の方も聞いた声だ
「誰が死に……痛てててっ!引っ張るな、怪我人だぞっ!!
「うるさい!お前なんて死人で充分だ!寝てろと言ったら寝てろ!!バカ
――そうそう、
俺は大概鬱陶しくなって、側近の
「そこ、そこの二人です!何を騒いで……あっ!?」
「おい鈴原!!く……痛ぅ……お前どう言うつもりだ!!」
その隙間から怪我人らしからぬ強引さで体を無理やり割り込み、幕内に入ってくる正統・
「バカ
そしてその怪我人を支えるというか、殆ど引っ掴んでぶら下がっている様な状態であった無愛想で目つきの悪い
「…………」
「…………」
途端に目が合う俺と偽眼鏡男。
――たく……騒々しい奴等だ
「お前な、
「あーーーーっ!!」
――な、なんだ!?
顔を合わせて二秒ほど、
「おま……鈴原……お前という男は……俺の作戦を邪魔してむざむざと逃げ帰ったと思ったら……こんな所で美女達を
――は?
俺はキョトンとする。
「……」
「え?ええ!?」
「まぁ、美女だなんて
――いやいや……確かにこの部屋内は女だらけだけども!
「サイカくんはぁ、真っ昼間からでもお盛んよねぇ?」
――で、
「馬鹿眼鏡、作戦会議中だと言っただろうが……だいたいなぁ、それを言うならお前だって女連れだろうが」
呆れながらも俺は、怪我のためだろう
「俺が?美女連れ……」
「いやいやいやいや!!ないない!!そもそも
ドサッ!
「うわっ!」
ドカッドカッドカッ!!
「ぎゃっ!おまっ!そこは……痛ててっ!やめ!やめろぉっ!!」
前髪をキッチリと眉毛の所でそろえたショートバングの髪型で小柄であどけなさの残った可愛らしい少女は、その容姿からは想像つかないくらいに容赦無く怪我人を地面に落とし、そして転がった偽眼鏡男の負傷した腹部に巻かれた真新しい包帯部分に向けて感情の無い無愛想な目つきで的確な蹴りを次々とヒットさせていた。
――うわぁぁ、
見ているこっちの横腹が痛くなるような惨状である。
「がはっ!おまえ……
「大丈夫だ。
――
俺は偽眼鏡男の貴重な犠牲を反面教師に、くれぐれも女性の扱いには気を付けようと肝に銘じたのだった。
――
―
「と言うか、茶番は
暫く
何故なら、どうやら怪我を押して
「
俺の問いかけに、すっかり目つきの悪い侍女の足跡だらけになった独眼竜はブスッとした表情で睨んでくる。
――因みに、現在この天幕内には俺と副官の
「先ずは俺を助けに来た件だ!無謀にも鈴原本人が来るなんてどうかしている……そして後は察しの通りだがな、敵総大将を討ち取る機会より俺の命を優先するなんて愚行だ」
「ああ……ええと、簡潔に言うとだな」
俺はスッと目前に座る盟友を見据えた。
「俺達の勝ちだ」
「………………………………は?」
キッカリ数秒、固まった後で
「鈴原っ!」
「
俺の言葉に、ここからでも
「鈴原っ!お前は
――
唾を飛ばして突っかかってくる男を前に、俺は隣に控えて立つ黒髪ショートカットの副官に目配せする。
「はい、
「う……そう……なのか?」
「はい、それから独立行政特区である”
「…………」
「更には
「な……そんなことまで」
「まぁな、
「完全に……
俺の付け足しを聞き流して独りボソリと呟く独眼竜に俺は更に続けるように
「はい、事前に我が工作部隊”
「それだけあれば、城周辺に籠もった八万近い兵を計算に入れても、あの城は数ヶ月は持つはず、その間に兵站の回復をされてしまうのではないか」
「無理だな、持って十日、いや内部でなにか起こったらもっと早く”ボロ”を出すだろう」
――っ!?
俺の返答を受け、
「十日?そんな馬鹿な!それに内部で”ボロ”だと!?」
兵糧の総量、そして鉄の結束を持つ
「兵数が八万じゃなくてもっとあるからなぁ……」
俺の付け足した言葉にハッとなる。
「まさかっ!?鈴原、おまえっ!?」
――ご名答!!
さすが”独眼竜”と呼ばれる男、察しが良い。
最年少で最強国家の頂点に名を連ねていただけは在る。
「はい、その為に
俺の言葉を継いで副官の
「更に焼け出された周辺の村民も受け入れざるを得ない状況で、恐らく城内の数は十二万程になるかと」
「……す、鈴原」
俺の顔を相変わらず凝視する偽眼鏡男に俺はまだ追い打ちを掛ける。
「十二万といってもな、逃げ込んだ者達は何日も飲まず食わずで到着、さぞ食料消費は嵩んだろうし、そのうち二万は村民でしかも負傷者多数……わかるか?自分たちの陣営が非道を行ったツケだからその入城に対して拒むことも出来ず、さらに必要とする医師団の素性を徹底的に調査する時間も無い」
「医師団……急遽呼び寄せた民間の医者達が……まさか!?」
――ほんと優秀だな
「そうだ、我が
――流血に
――医者という職業は極自然にあらゆる場所に紛れることが易いのだ
「後はな、頃合いを見て、残り少ない
「…………」
もう最初と違い、
「ああ、勿論……お前が敵軍の支柱である総大将、
「鈴原……お前は本当に……お前だけは敵には廻したくないな」
脂汗を拭い俺に笑う独眼竜、
「難攻不落の”黄金の
第三十三話「勝兵先勝」END
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