第145話「黄雀」前編
第三十二話「
「”
「はい、
「……」
――”
海を挟んだ北の大地、”
「攻め手は勿論、
俺の一応の確認に副官の少女は頷く。
――なんというか……
――しかし
北の島に点在する数多の狩猟民族を統一した若き王、
”
今回、俺は前述の目的の為に、その”
実際のところ
――それにしても出来すぎだ!
「
「はい、
――成る程な、やはり俺の策は
俺は
「つまり……
そう、
――となれば……
俺が数で圧倒する
「
心配そうに俺に向ける少女の大きめの瞳に俺はフッと笑う。
「まぁ、結果オーライだろう」
この状況では
敵援軍が行軍の導線を
――そう、紛れもなく、状況的には”上々”なのだ
「正体不明勢力に感謝だなぁ」
「”正体不明”……ですか?」
開き直って”ハハハッ”と笑う俺に、少女の視線は微妙だった。
――まぁな、ほんと……
そして、副官の少女が向ける視線の意味を十分解っている俺は、心中で叫んでいた。
――”今回は”何を
「”あの女”は……油断できません」
目前の黒髪ショートカットの美少女がそれを察した様に睨む。
「そ、そうか?……だな……」
彼女が睨んでいるのは俺と言うより、その向こう……
俺の思考の先に居るだろう、暗黒のお姫様だ。
――新政・
この俺をまんまと出し抜くこれ程の手並みは、
そしてこれまでの経験から、
毎度毎度、
「…………」
脳裏にいつも通り、意地悪く微笑んだ
腰まで届く降ろされた緑の黒髪はゆるやかにウェーブがかかって輝き、白く透き通った肌と対照的な
”奈落”の
”
――
「…………」
そうだ。無論なにも感じないわけでは無いが……
――文句を言うにも
――ち、ちきしょーーうぅっ!!
「…………
「うっ!?」
俺の心中をどこまで見透かしているのか解らない
「と、…………そ、それより
俺はわざとらしく話題を変えた。
「さい……」
「失礼致します。お呼びだと、
まだ何か言いたそうな
「助かっ……いや、よく来た!入れ」
――なんとか凌いだ……ふぅ
バサッ!
直ぐに入口の幕が上げられ、一人の風格在る髭の武将と少年が入幕する。
「………………………………
そしてそのまま俺の前にドサリと投げやりに座った少女と見紛う容姿の美少年は、居心地悪そうに視線を逸らしがちにして名乗り、
「……」
続いてその少年の後ろに控えて膝を落とした将は、変わって礼儀正しい綺麗な所作で頭を下げる。
――わかりやすいなぁ、少年……
心情がそのまま態度に出る
「
「…………」
しかし俺の少しばかり持ち上げた言葉にも、当の子供は不満げな表情で視線を合わせない。
「これは有り難きお言葉。我が主君も感激のあまり直ぐに言葉にならない様子、代わってこの
「そうか。ならば良いが、貴殿達をここに呼んだのは……」
相も変わらずそつがない
「ハッキリと言うたらどうじゃ
「
「僕は何もしちょらんっ!!砦の包囲は
「…………」
――一応、”
俺はふぅと溜息を吐き、そして傍らに置いていた布製の長袋に入ったあるモノを投げた。
ガシァァッ!
長袋は子供が座る地面のすぐ前に落ちる。
「なっ!?なんの……」
――なんのつもりだ?
いきなり目前に何かを投げつけられ、
「褒美だ。貴殿の刀は戦で折れたって聞いたからな」
「なっ!」
俺の答えに、
「ど、どこまで人を小馬鹿に!……ぼ、僕が……僕が……て、敵を前に無様を晒したって……皮肉を……」
――うわぁ、メチャ捻くれてるなぁ
俺はそんな感想を抱きつつ思春期全開の少年に問う。
「無様?それはもしかして”漏らした”ことか?」
「なっ!!」
そして俺の身も蓋もない言い様に、目前の子供の耳は見る見る真っ赤に染まった。
「そんな恥じる事かねぇ?生まれて初めて死にかけたんならそのくらい普通だろ?
「き、
一気に羞恥に染まった顔を伏せ、地面とガッツリにらめっこ状態になる少年。
――うわ……やらかした?俺?
最近の若者はナイーブだから気をつけないと……と、そういう俺も高々、十八歳の若輩者だけど。
「…………」
――兎に角、この状況はなんとかしないと不味い……
俺が
「…………
だが俺の思いとは別に、俯いてガックリと肩を落とす
第三十二話「
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