第143話「死中求活」
第三十話「死中求活」
ガシィィン!
「ぬぅっ!」
――名称不明の”
その一撃を肉厚な戦斧で受けた大男は
「お、
ザシュゥゥーー!
「くっ!」
だが、その男はそんな体勢のままで右手に握った
「この
「……」
度の無い眼鏡の奥で緊張の糸を張り詰めたままの瞳を光らせ、青年は両腕に装着した
「それに先程の”見切り”……その
左手に肉厚の”大戦斧”、右手に4尺5寸の”
「……」
対して――
間合いへとジリジリと
指先から肘の辺りまであるその
「見せてみよ独眼竜よ、”
その様は
さらに細かく言うならば手の甲部分には多少の出っ張り部分があり、そこからレンズのようなパーツが覗いているのが確認できた。
「違うってのに……たく……」
「
その間もジリジリと間を詰める
「…………」
――だがそれでも……
獰猛な両の牙を高く振り上げた二の腕からは極太の血管が浮き出るほど力が
――検証するまでもなく、”
「
ゆっくりと……
相手との間合いを見極めながら
「幾つものセンサー類から外部情報を取得し、肉体に
そして……
――!
遂に
「強化?高々二本の腕だけが
ズ……
ゴゴオォォッ!
途端に
「っ!九五式装甲”
シュォォーー!!
対応する
ガィィィィーーーーン!!
空間に展開した半径が二メートルほどの銀円光は
「
同時に
「っ!」
その一撃に、
ガキィィーーーーン!!
互いの目前で激しく散る火花!!
「ぬうぅっ!」
「くっ!」
結果、その攻防で後ろに下がったのは
――ちぃぃっ!これほど強化しても打ち負けるのかよっ!!
「その
再び落下を始める二振りの血に餓えた”鉄塊”だっ!!
グオォォォーーーー!!
ゴゴォォォーーーー!!
貪欲に血を欲するギラついた凶刃!
圧殺に歓喜の唸りを上げる圧巻の
それは大気を裂いて撃ち
「っ!」
――回避は
…………不可能っ!!
物理衝撃を吸収する光壁の”
…………もう間に合わない
――ならば
ババッ!
先程完全に打ち負けたはずの
「
即座に
既に単品の
青年が選択した対抗術は、歴戦の
「……」
――どのみち防御は間に合わない……ならっ!
だが無謀と云うなら
ブォン!
そして、青年と
「やってやるよ、トコトンだろうがっ!」
ほぼ時間を
「貴様っ!!」
――”それは”
無防備な自身の頭に迫る凶刃に全く対処すること無く、攻撃の技を繰り出す青年。
当然防御が皆無なのだから、数瞬後に青年の頭は鈍器で打ちつけられた卵と同じ末路を辿るだろう。
それを回避する唯一の手段は相手より先に相手を撃つことのみ!
文字通り……
――
「三式百五十番……”
ドッゴォォォォォーーーーーーーーーーン!!
無防備な頭を敵の牙に晒したまま拳を振り切る!
ガギィィッ!
バキャッ!
「ぐぬぉっ!!」
それは瞬きの何分の一程の差で独眼竜が、
「き……さ……小僧ぉ……」
堪らずガクリと膝を床に落とした
「…………」
常人のそれとは明らかに一線を
――
それは恐るべきものであった。
プシューー
脅威の一撃を放った左腕の武装兵器の、その表面装甲から蒸気の様な湯気が激しく噴き出す。
「く……まだ……か」
威力を飛躍的に増強させる”重加速フィールド”を打ち抜く突貫打撃。
三式百五十番”
ガクンッ!
「ぐぅぅ……」
そして横腹から床へと流れ滴る鮮血!
それは紛れもなく
「っ…………」
目前に崩れ落ちたままの敵将、
”
そのため一撃必殺とまではいかなかったが……
あの破格の衝撃を受けた
対して――
苦し紛れに横腹を削られたが、内臓には達していない。
「くっ……」
だが、不意に
――斬られた場所が悪い
そう、よりにもよって”腹”……
腕や足なら兎も角、戦場で腹は止血できない。
「……く……う……」
なんとか立ち上がって目前の
このままでは出血量が多すぎる。
肉体派では無い彼には過酷すぎる
「ち……くそ」
出血と相まって
つまりこれ以上の失血は死を意味するのだ。
「……シュ……
残った一体、頼みの
「ほ、
ガキィィーーン!
「そ、総大将っ!!
ギャリィィーーン!
僅かに残った兵士達は敵味方混戦で、どちらの陣営もこの場に駆けつけるのを妨害し合って消耗戦状態であった。
「………………」
――ここまで来て
青年は今一歩届かぬ自身の不甲斐なさに強く下唇を噛む。
ガタッ!
――っ!?
その時、彼の目前にはその口惜しさを上回る衝撃の光景が……
「こ、小僧……いや”独眼竜”……やるではないか……」
左上半身を欠損した巨大な獣が、折れた刀身を握りしめて立ち上がったのだ。
「……かはっ……慢心だ……まさかここまでやるとは……かはは……」
「……」
再び目の前に立ちはだかる
「ど……うした?まだ……
朱に染まった
とても闘える状態では無いはずだが……
「心底、ば……ケモノですね……
その闘気は微塵も揺らいでいない!
「ぐっ……ううっ!!」
そして
「こ、こんな無法を
「それこそ余計なお世話、心外ですよ……それに俺には……」
青年はヨロヨロと立ち上がり、そして再び
「
――そう俺には……
数年前とは違う。
この戦の結果を……
――盟友と認めたあの男ならば……俺の
「………………」
――
隻眼の
「”
命を賭した覚悟と共に大地を蹴っ……
ギャリィィーーン!
「ぐはっ!!」
ドシュゥゥ!!
「ぎゃぁぁっ!!」
――っ!?
独眼竜と
その場に残っていた
そこには――
「…………たく、なんでもかんでも俺に背負わすなよ、そうでなくても俺は色々と忙しいんだ」
――っ!?
死を決意した隻眼の男が生きた左目に映ったのは紛れもないその”人物”
「どうした?”
そこに居たのは
愛刀である”小烏丸を”肩に担いだ、不敵な喰わせ者と悪名高い男――
第三十話「死中求活」END
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