第140話「牙城」後編
第二十七話「牙城」後編
ガシン!ガシン!ガシン!……
鋼鉄製の
「わっ!わっ!バカ!来るなっ!……くっ!!よけろっ!!よけて前に出るんだっ!!」
機械らしく一糸乱れぬ集団動作で後方へ下がる軍団に
「は、はい!全軍!!”
それを受けて
”
機能停止秒読み前の
ガシン!ガシン!
悪戦苦闘する兵士達の都合などお構いなく、無機質な鉄人達は予定通り真っ直ぐに下がり続ける。
「ぬっ!くっ!」
ガシン!ガシン!
「うわ……ちょ、ちょっと!」
当初予定通りの動きとは言え……
鉄板仕込みの大盾と同じく鉄が
「…………」
――”サルでも出来る機械化兵入門”
翻弄され、てんてこ舞いで髪がボサボサになった目つきの悪い少女は、手にしていた”手作り小冊子”をジトッと睨んでから……
「にゅぅぅっ!!あのバカ
バシッ!!
だんっ!だんっ!だんっ!!
冊子を地面に叩きつけ、それを
「キーーーー!このっ!このバカ眼鏡っ!!」
地ベタに張り付き、
――
と記されてあった。
「
「ムキーー!ウキッキッ!!誰がサル以下かぁぁっ!!」
「ひぃっ!!」
前髪をキッチリと眉毛の所でそろえたショートバングの髪型。
小柄であどけなさの残る顔立ちの少女はヒステリックに叫び、報告に来た兵士は悲鳴をあげて後方へ一歩たじろぐ。
「はぁはぁ……あのバカ
息を切らせ、小さい肩を上下させながらも少女はギロリと部隊長を睨んだ。
「ひぃっ!……あの……すみません」
容姿を見れば可愛らしい部類に入る少女だが、それとは対照的な無愛想で目つきの悪い彼女はその言動の雑さと態度から、とても正統・
「はぁ?はぁ……な、なぜ
「い、いえ……なんとなく」
――
「ふん、それよりチョットだけ手間取ったが大丈夫か?敵に感づかれたりとか」
「あ、はい、それは流石に大丈夫かと……」
部隊内に多少の混乱はあったがそれもほんの僅かな時間で、隊列編制の最中にはよくあることだ。
部隊長はそう考えて、慌てて答えるとすっかり前後の入れ替わった自軍を指さす。
「
少女はうんうんと頷き、そして足元でボロボロになった冊子を更に踏みつけながらグイッと胸を張った。
「うむ!良きにはからえいっ!!」
――
―
「うぬ……やはり妙だ、これは」
しかし、
「なにか?」
「これは……まさか……うぬ……確かに思い込んで……」
だが
「
「!?……う……うむ」
そしてようやっと、
「そうだな……どうやら我らは
「!?」
その応えに今度は
「
中年の筆頭参謀はそんな部下を前にキッパリと断言する。
「なっ!?……あり得ません!!現にあの機械化兵がこの東門を強襲しているではありませんか!!」
そして、それに対する
――基礎原理から完全に創出された”
――
そんな
「だろうね……故にこの私も不覚を取った。
「あの
「う……それは……しかし、それは
「だがしかし、これまでの
「そ、それは……確かに」
「
「う……そんな」
「ああ、つくづく馬鹿げた事を考える青年ではある」
言葉が追いつかない
「私が彼の考えを読んで東門に守備の中心部隊を集中させるのを見越し、それを敢えて受ける形で裏をかいた……」
「そんな!!そんな策がありましょうか!?」
またも
「
――策略では到底及ばない
ならば、その策に乗せられたうえで、完成された策の僅かな隙を突く形で、残った殆どの
そして自身はそれらを殆ど用いずに極少人数にて……
「
「っ!?」
声の調子が変わった筆頭参謀の問いかけに
――
東門に敵の攻撃を引きつける為の小細工だ。
つまり二の丸はそれを悟らせないために護衛が”百人”程度……
「し、しかし……
――多くても二、三十だろう
それ以上の数なら、索敵の網に掛かるはずだ。
そうした意味から
「
「う……うぅ」
どれほど報いが無い努力でも彼女の為ならばそれこそが彼の報いとなる。
――
それが
ここまで
「“天の時”、”地の利“、”人の力“、この三要を得ただけではあの青年には不足であったか……
「
「……は、はっ!!」
「とりあえずこの東門を守りつつ、我が手中にある手勢では最も手練れの
ドッ!!ズドドォォォォォォーーーーーーンッ!!
「!?」
正にその時、遠く正門の在る方向から……
随分離れたこの地まで響く爆音と天を焦がす黒煙が上がった!!
「な、なんだぁっ!?」
「あ、あれをっ!!正門が!城壁が燃えて……」
突然な異変に、大勢の
「間に合えば良いが……”死なす”にはあまりにも惜しい人物だ」
「…………このままだと多分、死ぬのは君だよ
第二十七話「牙城」後編 END
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