第134話「広小路砦の攻防」後編(改訂版)
第二十一話「広小路砦の攻防」後編
「
――はぁ?
――誰が好き好んで、お前みたいな
ダッ!!
名乗り半ばの”最強無敗”に俺は距離を詰め、
――と、そう言いたいところが、
――”
ヒュバッ!
斬りかかっていた!
――だが、
「お、おおうっ!?」
――ちっ!
「
ブゥォォーーーーン!!
「くっ!」
そして
ギャリィィーーン!
大振りの槍裁きからは想像が出来ない繊細な正確さで一気に振り下ろされる一撃!
「ちぃっ!」
”
破格の一撃だっ!
ギャリッ!ギャリ……
それを受けた、刀を握った右手が瞬時に痺れ、
ギャッ!ギャ!ギャ!ギャ――――シャラン!
我が
俺は咄嗟に切っ先を傾け、威力を刀身半ばから下方へと向け受け流したのだ。
「おおぅ!
自らの一撃を
振り下ろした槍を右手一本に持ち替え、更に空いた左腕を天に掲げた無防備な恰好で俺を挑発してくる。
「さぁ!鈴原
ギギ……
到底右手一本とは思えない相手の槍を俺は両手の
ギギ……ギ……ギャリィーーンッ!!
再び渾身の力で跳ね上げた!
――”鈴原
「気安く
自ら掲げた左手に続き、槍を持った右手も天に投げ出した形の
「ははっ!ははは」
……なっても、その
どう見ても”待ってました!”なのだった。
「…………ちっ」
剣の射程で万歳、完全無防備な前面を晒す相手。
だが、そんな絶好の
ダダッ!
”最強無敗”の期待に輝く
「す、鈴原
完全に肩すかし!
俺には
「ならばぁ!!おおおおっ!!」
ブオォォーーーーン!
絶好の好機を捨てて背を向ける俺に、最強無敗の追撃が打ち下ろされる!
背後から一刀両断!
俺が真っ二つになるのも必至であった。
ヒュヒュ!ヒュォン!
「ぬっ!?おおぅっ!?」
だがその瞬間だった!
突如飛来する矢閃が、槍を振り下ろしにかかった男を襲う!
「ぬぅっ!」
正確な軌道で頭部を射貫かんとする”一矢目”を僅かに頭を
「ふっおっ!!」
――それとほぼ同時に!
一矢目の影から露わになる、首を狙った”二矢目”を……
これまた異常な反応速度にて、そのまま
――そして更なる”三矢目”
ギィィーーン!
最後にして仕上げの矢を!
心臓を貫くはずだった凶弾を!
手にした槍の柄で薙ぎ払い、完璧に対処する脅威の怪物!!
「……マジかよ」
”一矢三連”と恐れられる”彼女”の絶技を、こうも易く裁ききるとは流石”最強無敗”!
不意打ちも、飛び道具による強襲でも、まるで揺るがない巨雄に……
俺は素直に敬意を表する。
――けどなっ!!
シュバッ!
――誰が?誰と?
――”一騎打ち”してるって言ったよっ!
そして
在ろうはずの無い”四矢目”となったのは――
「な、なにっ!?」
直ぐさま踵を返した、俺の刀による至近からの”跳ね斬り”だった!
――っ!???
ただでさえ神業の部類である”三連射撃”の奇襲を露払いに、その隙に再び死地に舞い戻った俺は、自らが四撃目の矢と成って未曾有の”四連撃”を繰り出して最強武神の攻略を試みるっ!
「う、うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
吠える
だが、一、二矢で
――どうよ!この連携技はっ!!
これは流石の
ガッ!ガシィィン!!
「ななっ!?」
だが、その
「う、腕だとっ!?」
俺の渾身の一撃を!こともあろうか素手である左拳で撃ち落としたのだ!
「フッフッ……ハァァーー」
荒い息を吐き出しながら、馬上にて崩れた体勢をゆっくりと戻す最強無敗。
「…………おいおい」
――ここまできたらもう……
言うまでも無く”刀”は鉄の塊だ。
そして加速の頂点に達した”刀身”を撃ち落とす”拳”なんて芸当は、超絶な反射神経が
「おまえ正真正銘の化物だよ……
ダダッ!
――だからってな!
驚いてばかりもいられない。仕切り直しだ!
またも距離を取った俺は、やや離れた位置で愛馬”
「…………」
そして、再び
「成る程……
対して――
ここに来て、この戦場で終始見せていた笑みを完全に捨て去った
戦場で見せる
先ほどの矢の着弾角度から、見えぬ狙撃手の位置を完全に把握したうえでの備えであろう。
「…………」
――
混戦に
ここに至り、
「…………狙撃
木場の言うとおり、我が
両軍入り乱れる戦場の熱闘と馬群による砂煙……
諸諸の隙を突いて組み立てられた我が臨海の
「今さら卑怯とか言うなよ
”
「くく……くくく、はははは!ははははっ!」
「…………」
しかし
剛勇無双の最強無敗様は、並の将にとっての完全な窮地でさえ、そのまま肩を揺らせて笑い出す。
「なんとも幸運な戦場だ!!”
だが、それでも、
「鈴原
オオオオッッ!!
オオオオッッ!!
ご自慢の騎馬部隊と共に突撃を敢行した!
――
津波と化して俺と俺が率いる部隊へ!
そしてその後ろに確保した
突撃に特化した”
「おおおおおおおおっ!!」
俺が奴との一騎打ちをこのまま”二対一”で対処してくるならば、自分は数と練度に勝る騎馬部隊で徹底的に突破して、その勢いのまま”狙撃
一見強引で好き勝手に戦っている様に見えるその男は、状況次第であれだけ固執した俺との”一騎打ち”をアッサリ捨てて集団戦法に切り替える臨機応変さを併せ持つ英傑だった。
――さすが
――そんじょ
オオオオッッ!!
オオオオッッ!!
――と、感心ばかりもしていられない
突撃に特化した
「開けっ!!」
俺はその戦いには乗らず、
「っっ!?すずはらぁぁっ!!」
――だから……
――気安く呼ぶなって
あくまで正面から
そんな将たる気概の無い俺は、
ドドドドドドドッ!!
ドドドドドドドッ!!
綺麗に左右二手に分かれた我が
オオオオッッ!!
オオオオッッ!!
「潰せっ!あの忌忌しい“
「
オオオオッッ!!
勇んだ雄叫びが飛び交う
「
そんないきり立った騎馬隊の最中で、将たる
「
自ら口にした言を直ぐさま取り消し、そして馬上から離れた
「…………」
――この距離でこの眼力……
「中々に
侮れない洞察力の”最強無敗”に睨まれたことで、思わず”ゾクリ”と背筋に走る冷たい感覚を”武者震い”と片づけるなら……
――”それ”は虚勢が過ぎるだろう
最強騎馬軍団の突撃に恐れをなしてアッサリ道を譲り、後方の”
そう侮って防備を怠り用兵に隙を見せてくれるなら、後ろから散々に”突っついて”やろうと思ったのだが。
「……」
――動くこと
あれほどの応変に苛烈な突撃を用いてなお、浮つかず警戒を怠る事無く場を見据える男は、将としても甘い相手ではない。
――そして恐らく
そりゃそうだ。
これほどの強兵に、数でも劣る我が
「…………」
そんな危機的状況で、愛馬”
「なにを企む?鈴原
我が”
どこか期待を秘めた眼で俺を見て叫ぶっ!
「……」
――まったく、
”個”の武勇は類を見ない”破格”を誇り、
”群”を率いては”圧倒的”に場を制す。
”謀”に対する充分な”智”を備え、
そして”欺”に対しては”動物的本能”でそれを察する。
――改めて再認識する
「だよなぁ?正解だよ……
そんな男と目が合った俺は――
何故か自然と口端が上がる感覚に……
「ふっ」
今度こそは自身の”
第二十一話「広小路砦の攻防」後編 END
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます