第134話「広小路砦の攻防」中編(改訂版)
第二十一話「広小路砦の攻防」中編
明けて早朝――
その日の始まり”も”昨日までと同様だった。
ワァァァァッ!!
ワァァァァッ!!
ダダダダッ!
ダダダダッ!
直ぐに
「ぬぅぅ!相も変わらぬ……追うぞっ!!」
迎え撃つ敵将、
ドドドドドドドッ!!
昨日、幾度も繰り返された戦風景。
一斉に
ドドドドドドドッ!
だがそれも……
ドドッ……ドッ……!!
「……」
いつの間にか
「反転っ!!」
昨日までと同じ行動を”なぞった”のは、そこまでだった。
「迎撃っ!」
オオオオッッ!!
オオオオッッ!!
一斉に馬首を返し一気に反撃に撃って出る!
「なっ!?」
「うわっ!」
昨日までの伏線が多いに有効であった証拠に、この反転攻勢は完全に敵の虚を突いた形となった。
そして暫し――
両軍入り乱れた戦場は我が
ギィィーーン!
ワァァァァァァッ!!
オオオオッッ!!
そこは騎馬では最強を称する
元々数の有利も相まって直ぐに立て直し盛り返してきた。
――
「流石だな、多少の揺さぶりくらいでは揺るがないか……」
――それに
俺は馬上から乱戦の渦中、”その一点”に視線を向ける。
ガキィィーーン!
「ぐわっ!」
ザシュ!
「ぎゃっ!」
血気盛んな戦場最中に在っても一線を画する異色の熱気!!
ブオォォーーーーン!!
「ひっ!」「がはっ!」「うわぁぁっ!?」
そこに一際目立つ、巨馬に跨がった武人が唯独りっ!
手柄目当てに群がる歴戦の強者共をまるで市場に置かれた”一山幾ら”の有象無象として千切っては投げ、蹴散らす豪勇無双!
「おおっ!やっとかぁっ!これぞ我が
ゴォォォッ!!
「ひぃぃっ!」「ぎゃひぃ!」「ぎゃぁぁっ!」
豪槍の一振りで
「おおおおっ!ははははっ!」
「……」
勿論言うまでも無いが……
――おいおい……
俺にとって
「やっぱ”
俺は溜息交じりに腰の
そして――
シャラン!
「おう!おう!おおう!そこの規格外ぃ!!いい加減ちょっとは常識ってものを
「おっ?おおおっ!!我が天運
そして俺の姿を視界に捉えた化物は、実にキラキラとした
――ちっ!戦馬鹿めっ!
ダダッ!ダダッ!
長年生き別れた兄弟を迎えるような、そんなキラキラした瞳で物騒な槍を構える男に……
ダダッ!ダダッ!
俺は乗馬を加速させる!
ダダッ!ダダッ!
大地を削り跳ねる
ダダッ!ダダッ!
「……」
――”人馬一体”
それは俺がこれから成す”
「……」
ダダダダッ!
そのまま勢いを殺すこと無く敵射程圏内に侵入した俺は、顔前にて地面と水平に寝かした刀を握る右手に左手を添えた。
ブルルゥッ!!
ここまで――
額の流星が
手綱から完全に両手を放し、両太ももだけで
ダダッ!ダダッ!
「いざっ!
そして
ブゥォォーーーーォン!!
「っ!!」
凄まじい
凄まじい
”
――だがっ!
ズザザァァッ!
凄まじい旋風が穂先の、僅か下を
「……」
大気ごと薙ぎ払う豪槍の一撃では、
「ぬぅっ!?」
射程に勝る槍の一撃も!
大気を
巻き込まれる
ヒューー
俺は瞬間的に少量の空気を肺に流し込み、
「っ!」
ドシュ!
「ぐっ!?すずは……」
我が”
バシュゥゥ!!
「すずは……ら……ぬぅぅ」
次の瞬間、仰け反った
「
――
――
――
敵が動体に帯同する風と同化し、その流気を用いた風刃にて敵を穿つ!
それは
ダダッ!ダダッ!
「…………」
俺と
――”
それは確かに
――だが……
――しかし……
「…………」
俺は、斬られたままの姿勢で未だ馬上に在る男を見る。
「ふ……ふふっ……はは……はは、ははははは!」
装備した鎧に伝う血をそのままに、その男は豪快に笑い出した。
「なんだこれはっ!?この
「…………」
――なんだその嬉しそうな顔は……
――とても今し方、斬られたばかりの男の反応じゃないよな
正直面食らう俺に、その常識外れの男は嬉々として続ける。
「俺が
「…………」
全く
面白い
――こういう手合いの
心底そう思う。
そう、特に戦場では命が幾つ在っても足りない。
大体、ああして今も馬上に在るのは……
一撃必殺であるはずの”
――信じ難い反応速度……いや、”
「ええと、
だが、取りあえずそういう非常識な事実は置いて於いて……
俺はもうひとつの、奴の台詞で気に掛かったことを確認してみる。
「おお?そうだな、俺が戦場で槍を交えたいと願う相手に順番をつけるとだ……覇王姫と名高い
実に物騒な面子を嬉々として口にする
「……」
――やっぱ、関わり合いになりたくない輩だ……
「後は……そうだな、
「……」
――鈴木
その時、俺は多分かなり変な顔でその人物の名を聞いていただろう。
「おお、そうだ!たった今、貴殿もそこに名を連ねたぞ、
「……」
肩から血を流しつつも、至極ご機嫌な”最強無敗”に俺はさらに確認した。
「鈴木
「んん?それはそうだろう?鈴木
――いや全く
同僚が
とても常人の反応ではないと、俺は心中で突っ込みつつも思う。
その
――何気に”俺が二回も”入ってんじゃねぇかよっ!!
…………と、
「…………はは」
その実に嫌な事実に俺は力なく笑うしか無かった。
第二十一話「広小路砦の攻防」中編 END
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