第133話「小さな勇気」前編(改訂版)
第二十話「小さな勇気」前編
難攻不落の”黄金の
西は――
既に一度は
――そして東は
”
「今話した通り本国の更なる援軍は暫し時がかかる。どうやら
砦の一室、難しい顔で上座に座る
黒い鎧兜姿に額から鼻まで覆った黒い仮面を装着し、露出した顎には立派な髭を蓄えている
”
「さて、話は変わるが
濁った双眼に歪んだ笑み……
確かに有能ではあるが、この黒仮面の策士は少しばかり歪んでいると。
「思ったよりも敵が
「出来るのか?敵は”
現場指揮官である
「…………」
「
”本城”、”二砦”攻略と三手に分けて攻める正統・
「それは……
「礼節?ふふん」
自身の目の前でズケズケと
「あの手の山出しが”王覇の英雄”とは大層な、片田舎の”
”
それは数ヶ月前の”
その戦に途中参戦した
「
「ぬ……うぅ」
多少配慮を欠こうと、人間的にどうだろうと、
故に
「た、確かに……兵力もそうだが、敵の統率は見事と言うほか無いのだ。あの鈴原
「そんな事は今聞いておらぬっ!」
「くっ!?」
本当のことではあるが、言い訳にも聞こえる現場指揮官を一括する黒仮面。
「
「……」
打って変わり、諭すような口調で話す
「だがな……戦が終わった時、お主だけが失態の責任を取ることになるのはどうだ?このままではそうなるとは思わんか?
そして、ここぞとばかりに現況をタテにして言い寄る黒仮面の軍師、
「ぬ……ぬぬ……なら貴殿はどうせよと言うのだ」
とはいえ、痛いところを突かれた
それを受けて、黒仮面は待っていたとばかりに露出した口元をニヤリと歪ませる。
「なに、どうせ落とされる砦ならば、その後に敵の
「な……んだとっ!?」
「敵を充分に引きつけたところで砦に火を着け、そして全軍で打って出る。文字通り目前の敵を煙に巻いて目指すのは
そしてその続きを聞いて
「ひ、
「
「し、しかし……その行軍を目前の鈴原
窮地から一転、敵の
「充分引きつけた後に炎で煙に巻くと言ったであろう?そして軍を出した後は道中に点在する村々を焼いて廻るのだ。本城への開かれた道とは違い
――っ!!
あまりにも非情!
しかしそれ故にどこまでも合理的!
それは策士としては真っ当であるかもしれないが……
「そ、それは!民を盾にすると言う事か……」
噂には聞いていたが、直に目にする黒仮面の軍師が冷酷さに
「ふん……」
黒い鎧兜姿に額から鼻まで覆った黒い仮面を装着し、露出した顎には立派な髭を蓄えている
成る程この男は、この血の通わぬ合理的思考という才覚で”
予想通り決断に躊躇する
「民を盾に?それはどうか……そうだな、最終的に生き残った民草はそのまま
――生き残った……
火を着ける側の人間がその言い草とは。
”
「た、民の保護は……」
そして心の動揺を隠せぬ声で零れた彼の言葉は……
良く言えば良心の呵責から、悪く言えば”一応は抵抗した様に”見せる為だ。
「ふん、それこそ敵が武装も無く逃げるだけの
「…………」
”安心”とはどの口が言うのか。
「
――っ!?
それこそがトドメの一言であった。
「…………そ、そうだな……大事の前の小事、全ては我が
破滅から躍進……
窮地の
「うむ、流石は
そして――
黒い鎧兜姿に額から鼻まで覆った黒い仮面を装着し、露出した顎には立派な髭を蓄えている
”
――
―
「また来ましたっ!!
難攻不落の
西の
「よし!今回も程良く分断出来ているな。直ぐに攻撃を仕掛けろ!但し前に出過ぎるなよ」
黒仮面軍師、
そこには幾重にも罠が仕掛けられていた。
砦を攻めていたはずの鈴原
それに慌てた
それまでに散々後ろを突かれて三割強もの被害を出してしまう。
残った五千ほどの兵達も森と村を焼くことで一旦追撃からは免れたが……
次作として、
「兵が!?うわぁぁっ!!」
「くそっ!なんで
とはいえ――
伏兵と言っても
だが当初の予定とは違う形で追い込まれて森深くに逃げ込んだ
――
「本当に……」
そしてその複数の伏兵部隊を統括指揮する
「本当に敵がこんな森中に来るなんて……あの
つい、そんな言葉を零し、小さい体を悔しさに震えさせる。
「そろそろ岩陰の第二隊の投入をしましょう。……若様?……ええと、あのー?」
そう、
指示を請う部下の言に反応しない。
「ちょ、ちょっと!若様!
「う!……う、うん!?」
年齢通りというか、このなんとも頼りない伏兵部隊司令官――
「ですから!そろそろ第二隊をぶつけて片付けないと!直ぐに次の
戦場でボサッとする見た目通り頼りない司令官に、分隊指揮官である男は呆れながらも引き続き指示をせっつく。
「あ……うん……いや、うむ!では第二隊を……」
「第二隊!
――オオオオッッ!!
そして部下は”やっと”か、と言わんばかりに。
司令官たる
「…………うぅ」
もうお解りだろうが……
――
名目上は
そして同じく
実際に実務を
強襲歩兵部隊隊長、
作戦参謀、
そして現在進行形で若輩の
いや、当時は
その下で働いていた者達で、彼女の同門でもある者達だ。
「うぅ……た、
「心配いりません。ここには敵兵を寄せ付けぬようにしております」
「…………」
安全なのは良い。
良いが……
これでは無能だと!
ハッキリ言われているようなモノだからだ。
――”
――”お前みたいな雑魚の
――”この場に素人のお子様はお前一人きりしかいないだろ?”
あの鈴原
それらの言葉が
「
そういう反発から、
強引に、駄々っ子の如き我が儘で、その役を無理矢理にねじ込んだ。
それは……
彼が生来から抱いていて、異国の地で爆発した
そして、男の端くれとしての少々の意地……
「心配為さらずとも敵軍は脆いです、これは楽な戦いに……」
そんな主君の心など知らず、
「くっ!」
そして、この半人前の子供はそれがなおのこと面白くない。
憎っくき相手である鈴原
――なんだっていうんだよ!
「ぼ、僕にだって……できるんだ……」
――オオオオッッ!!
「わ、若っ!!そちらにっ!!」
――っ!?
彼が自身の矮小なプライドに固執するがあまり戦場を見失っていた瞬間を……
「抜くぞっ!!なんとしても
ドドドドドドドッ!!
「う……うわぁぁぁっ!!」
容赦の無い
第二十話「小さな勇気」前編 END
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