第132話「評定は踊る、然れど……」(改訂版)
第十九話「評定は踊る、然れど……」
――天下の
守護するのはこの地の領主で在り、
この国を東の最強国たらしめた将帥の頂点たる”
それを前身とする”
――対して
その正門前平原に巨大な堀を挟んで対峙する形で展開する”軍団”は……
鉄板仕込みの大盾と、同じく鉄が
その総数は
シュオォーーン!
シュオォーーン!
更に鉄甲兵士群に
二メートルはあろう見上げる高さのズングリムックリとした白銀の体躯は、人なら関節に当たる部分の隙間などからピコピコと
キュイィーーン
頭部らしき部位に二つの円形状の、双眼に似たレンズを赤く光らせる異形。
シュオォーーン!
シュオォーーン!
戦国世界では近代国家世界で確立されている既存の技術は成立しない。
――それが神の定めし常識ならば……と、
”確立されている既存の技術でなければ戦国世界でも存在できるはずだ!”
そういうネジの飛んだ発想で奇跡を実現してしまった独りの男の手により、基礎原理から完全に創出された……
”
――
量産機で廉価バージョンだがそれなりだぞ、と本人が大胆にも
それはまさに、”神の
――
―
「しかし難攻不落の”黄金の
平原に展開された鉄甲兵士軍団の中央後方にて指揮を執る
「でだ、その”
名目的には攻撃側連合軍の総大将たる正統・
その副将として、
その二部隊が城正面で攻城戦を仕掛け、更に左翼部隊に正統・
つまり、ここ
攻める正統・
守る
という事になっていた。
それは、三倍の兵力ではびくともせず、五倍する兵力であっても優に半年は持ち堪える鉄壁の大城と噂される
「”
本当に嫌そうにそう溜息交じりに返す、”独眼竜”の傍に馬を並べた小太り眼鏡の男。
――”
用意周到、強固に固められた城を攻めるのは困難で最も効率が悪く、成せても被害が大きい。
「鈴原君の命令だし、やるしかないって言ってもなぁ、あれはやっぱり……なぁぁ」
この文句の多い小太り眼鏡男は……
――
才能は認めるが軍人としては慎重に期過ぎ、精気の無さも顕著な男。
――そして
やる気無しで超堅実、
と散々であるが、それでもその二人が共に抱く共通の認識は……
人物は
そういう
「その鈴原と……例の
「既に発ちましたよ。
ここまでで既によく知ったネガティブ思想の参謀に対し、”それはそうと”と切り替えた
「そうか、なら俺たちも役割を……」
――難攻不落の”黄金の
――鉄壁の”
「…………」
「
途中で黙り込む総大将に参謀は訝しい視線を向けていた。
「いや、
正直、困難極まる分担場所……
しかしその事実に反し、”独眼竜”が
「うぅ……前から思ってたんスけど、
「俺と鈴原が?」
「その
「そうか?…………それは光栄だな」
対して、暫し思考した後、
「おっと、その賛辞は取りあえず置いておいて……そろそろその”ちょっかい”とやらを出すか!」
シャラン!
そして、あまり使い慣れていなさそうな剣を抜き、掲げたかと思うと
「前進っ!」
城前攻撃隊、全軍に城攻めの号令を下した!
「い、いや、褒めてないッスよ!ぜんぜんっ!」
それを受け、文句を漏らしながらも
――
対する
「城正面、敵軍が動き出しましたっ!!」
物見兵からの合図にその場の諸将の顔が見る見る
「相手の動きをつぶさに監視、射程に入ってくるなら城壁上にて飛び道具で対応だ!同時に各部署の指揮官に伝達、迂闊に
城主、
「ふぅ……む……
「あの”独眼竜”
一様に渋い顔つきの諸将を見れば、五千の
いや、正確には彼が創造した”
「筆頭参謀、
その空気を
総大将である
「…………
名門、諸将が居並ぶ司令室で――
好意的ばかりとは言えない視線を一身に浴びながらも、それを一向に気にせぬ飄々とした男が指名を受けてスッと席を立つ。
「まぁ、ですねぇ……最も勝利に近い方法をと言うのであれば、城守備部隊を一万ほど残して残り全軍で打って出るのが間違い無いと思うのですが……」
先程まで
「相手はあの”独眼竜”だぞっ!あの常識外の”
「素人が!天下の堅城たるこの
――が、諸将の反応は芳しくなかった。
敵は四万三千。
対して味方は七万八千五百。
ほぼ倍する兵力を
城に集う諸将には守勢に固執する空気が蔓延していた。
「ふぅぅ」
そして
領内の重要拠点、
最強国たる
更に敵方には、
絶対的な城ならばこそ、篭もりたくなるのも無理からずと言ったところだろう。
人知れず溜息を
「今までの結果はですなぁ、
「貴様っ!
「
その冷静な分析が仇となった。
「……」
その権力下で為政者への正確な評価など、余程出来た人物か熟成された政治体系でないと難しいうえに、元は敵方だった彼の立場なら尚のことだ。
「落ち着け諸将よ!
「それは……」
「ぬぅぅ……」
総大将である
取りあえずではあるが……
「身に余る評価を頂き光栄です」
「だがな、筆頭参謀よ。
――とはいえ
「
総大将の意を受け、
「守備に優れる”黄金の
それでも尚、持論を曲げない
「貴様、まだそのような愚策をっ!」
「貴様如きが総大将たる
再び再燃する
「兵糧と言えば……この戦が始まる前から敵が密かに画策していたという我が領土周辺地域での食料物資の買い占め阻止、それと開戦後の兵站の確保と、既に貴公が敵の謀略を
――っ!?
非効率に燃える場を収めるためだろう、ここに来て
”こ、この男は!そんなことまで手を尽くしていたのか!?”
――と
”敵の計略を事前に察知し、既にそこまで手を打っていたのか!?”
――と
先の
誰の目にも明らかな、この場に居合わせる
「……」
「……」
いつの間にか諸将は渋い顔で押し黙ってしまっていた。
「籠城戦に対する兵糧の蓄えも、
「それでもです。完璧にとは押さえられておりません。敵の策の巧妙さと迅速さ故に近隣の食料物資の調達は予定の七割ほどを確保したまで……また兵站は確保しておりますが、それも
兵力で勝るという利点を生かし、多少の犠牲を出そうとも
彼が戦を優位に進めるため骨を折って動いた結果――
それが諸将の安心感となり、無難な籠城戦という消極的な流れを作りだしてしまった。
「…………ふむ」
自らが大抜擢した筆頭参謀がここまで
――未だ籠城するには問題無い備蓄の食料
だがそれも当初の七割、完璧では無い。
――補給路の確保
そのために
特に
だが戦に絶対は無い。
――なんにせよ、相手は策士として名を馳せる
「……」
「……」
思案を始める上官を前に、
それでも戦というのはどうなるか終わってみるまでわからない。
彼は自身の波瀾万丈な人生経験からそれを
「ふむ、確かに。この”
――だが、それでも……
難攻不落の”黄金の
鉄壁の”
この優位を捨ててまで早期決戦に持ち込む思い切りに至るほどの、そんなリスクを冒す意味までは見いだせないでいた。
「では、
城主と筆頭参謀が睨めっこする間に突如割って入ったのは、ひとりの比較的若い将だった。
「ぬ……
「なるほど!!それならば敵の実力を量りつつ優位に戦を始められ、敵兵力を効率良く削れますな!」
「籠城で敵軍をこの
若き将の提案に場の将達は大いに感心し一気に活気付く。
――
「ふっ」
その若き当主たる秋山
そして諸将が諸手を挙げて賛同するこの案……
どちらにしろ勝ち戦が間違いないならば、やはり被害は最小限に
――ふぅ……
唯独り、筆頭参謀たる
とはいえ。
――もうここまでだろうと
実のところ、
「
そして、総大将である
一見……
いや、実際にも
その優位と鉄壁の城が、
万に一つという敵の奇策に備えるために冒す危険など、最強国
実際、それを警戒する
――予測可能な手堅い戦術を取る敵相手には奇策を仕込み易い……
戦況の不利さえ利用し、ほとんど存在しない可能性を生み出す
――”鈴原
――”王覇の英雄”とは実に侮り難いっ!
ぶるっと身震いした
「解りました。ならば……」
そうして
第十九話「評定は踊る、然れど……」 END
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