第131話「子供(ガキ)」後編(改訂版)
第十八話「
「はい、我が君!」
直ぐさま――
天幕の外に少女の影が映り、
バサッ
そして返事から間を置くことなく、きっちりとした美しい一礼をしてから天幕に入ってくる黒髪ショートカットの美少女。
「っ!?」
それを見ていた
今さっきまで青ざめていた顔色を何故か瞬時に朱色に染めて
――これは……
至極単純な反応を受け流し、再び深く椅子に坐している俺の
「鈴原
そのまま
――実に”
対して
「……う……はぁ……」
相変わらず
――わかりやすいなぁ、この”ませ
俺はそんな感想を抱きながらも、
「
座ったまま、指先の腹を上に向けてチョイチョイと二、三度……
軽く曲げて
「…………はい、
俺の態度で全てを察したショートカットの美少女は、コクリと頷いてそっと立ち上がる。
――
そして、座した俺の側に立つ
「ご報告申し上げます……と……あと……それから……」
寄せられたお互いの顔の距離はかなり近く――
「う!……うぅ……」
それを目の当たりにした
――やはりな……
どうやらこの
「…………そうか、なるほど」
その間も、ボソボソと俺にだけ聞こえるように告げる彼女の報告内容を
そう、俺が先程示した指の合図は、極秘の報告――
つまり”内緒話”のサインであったのだ。
「……うぅ……く……」
わりと長い間、俺と
――しかし、生意気にも一人前にそういう男の顔をするのか
密かに子供の反応を観察していた俺は、先ほどからの鬱憤が少なからず消化不良であったこともあり……
「ふふん」
「…………ぁ」
不意打ちに思わず小さい声を上げる黒髪ショートカットの美少女。
俺は構うことなく
「………で………だ…………あとは……」
「は、はい……はい」
そして、突然の俺の奇行にも全く抵抗せずに身を委ねる
「う……うぅ」
その光景を目の当たりにし、悔しそうに唇を噛む
――自身さえ守れない子供が百年早いんだよ
俺は少しスッキリとしていた。
「はい、はい……そのように……」
ボソボソと彼女の耳元で指示を出し、
「……以上だ、後は任せた」
「はい……
そして最後の部分だけは皆に聞こえるようにそう言う俺に、腰から手が離れて解放されたはずのショートカット美少女は”ぽぅ……”と立ち尽くしたままだ。
「……
「あ、いえ!……た、確かに、はい!
途端に潤んだ大きめの瞳をサッと業務用に切り替え、少しばかり名残惜しそうに見ながらも彼女は一礼して俺から離れる。
「ああ、頼む」
まぁ取りあえず事は済んだと、俺が再び
「ぐっ……ぬぬぬっ!!」
案の定というか、全く予想通りというか、
――わかりやす過ぎて……逆に笑えるなぁ
俺の
まぁ、正直……
なんというか、気持ちが収まらなかったのだからこれくらい仕方が無い。
俺は心の中で大人げない自分をそう自己弁護する。
「どっちが
「では、
そして
「あ、はい!?ま、
さっきまでの腰抜けで駄々っ子な姿はどこへやら。
現金にもそういう不相応な台詞を吐き、嬉々とその後に付いて出る
「では、鈴原
そして、その
――
「ふぅ」
予期せぬ訪問者を適当に見送った俺の横で、その場に残った
――
――まんま
今さっきの態度を自分自身で十二分に分析出来ている俺は……
「
これ以上解りきった小言のような事を言われては面倒臭いと、
「
俺は
「ああ、わかった…………ええと……あのな……」
「?」
だが
――察しが悪い方じゃないと思っていたが?
首をかしげる俺に……
「す、鈴原。お前の心情は察するが、さっきも言ったように”
「…………」
――そういうことかよ、
――このお節介……
俺は――
思っていたよりも世話焼きで、見た目よりもずっと
「勿論、その時は経験者である俺も全力でサポートする!必ず……」
――ちっ
ちょいとばかり鬱陶しくなって……なんというか……
「…………」
――早々に追い払おう!
そういう結論に至る。
「さっきの
「ん?あ、あぁ……」
急に話題を変えられキョトンとする
「お前等と
「…………」
俺の話を聞いて、
「はぁ、あの……バカ娘」
ついさっきとは違う種類の溜息を
「わかった」
そして
「…………」
――やっと……
――やっと”独り”に戻れたか
俺はそう安堵しながらも、
「……」
実はさっきまでと……
「……ちっ」
ほんと、お節介な”
俺は軽く頭を振って、面倒見の良い経験者とやらを思考から振り払う。
「しかし……
そして先ほど
個人的な戦闘力だけで限定すれば、現在の
それに筆頭家臣の
――その
これは俺の完全な勘だが、”独眼竜”……
あの
――”正統・
どう見ても辺境の小勢力と、一見弱小に見えるが中々どうして結構な戦力だ。
「……」
だが――
敵にするならかなり厄介であるが、味方である以上は心強い!
とはいえ――
今現在の
――”
”俺に”とって彼女の抜けた穴は大きすぎる。
――いや、もっと核心に触れるならば……
海上にそそり立つ黒き鋼鉄の壁、堅き黒甲羅を
その大要塞と比肩しうる”黄金の
――そう、要は……
”ペテン師”鈴原
――そういう解に辿り着く
「…………」
俺はいつしか堅く握りしめた両の拳のままで、ゆっくりと立ち上がっていた。
――
「サイカくん?マコトちゃんから私を呼んでるって聞いたけどぉ?」
ちょうどその瞬間だった。
天幕の外から聞き慣れた気怠げ女の声が聞こえる。
「……」
――出来るか?
……だと?
――いいや!”ヤル”んだよっ!!
その声で気持ちを切り替え、自らに潜む弱音をねじ伏せる俺。
「……サイカくん?」
返事がない事を不振に思ったのだろう、その気怠げ女……
「
俺は天幕外で不審に思っているだろう相手に、その理由を別段説明するでもなく……
――バサッ!
そう言うと自らも外に向かった。
「……」
――大きな……穴……か
「
「……ええと?サイカくん?」
いきなり呼びつけておいて、やっと姿を現したかと思うと今度は意味の繋がらない謎台詞を口にする俺。
「……」
長く艶やかな黒髪を後ろで束ねたポニーテールとやや垂れ気味の瞳、それに
女としては背が高く、良く実った
張りのある
この……
――
そして、
――”
更には、
急遽、参戦した
我が
仕上げに、世間ではいつの間にか”王覇の英雄”なんてご大層な称号で呼ばれる俺……
”ペテン師”鈴原
――なに、こっちも必要な””手駒”が揃ったじゃないか!
「準備は……整った」
「サイカくん?」
やはり独り意味不明な言葉を吐く俺に、変わらず
「いや、何でも無い。詳しい説明は道中する……
こうして
東の最強国家”
第十八話「
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