第127話「徒花不実(あだばなふじつ)」前編(改訂版)
第十四話「
ダダッ!!
「い、イケる!!
第一砦から見上げる形で戦況を覗っていた
まさかの
それほどまでに、あの
「うおぉぉっ!!」
対して――
閃光となって迫り来る
ブゥォォォン!
地面スレスレ、下段から一気に振り上げて迎撃の態勢をとった!
ガッ!ガリガリガリ!!
――否!
地面スレスレどころか槍先は地面に激突し、地表を削りながら
バフゥッ!!!
破裂したかの如くに砂と砂利が一気に巻き上がって、それは騎士姫の視界を遮り飛び散った!
「……」
しかし騎士姫、
愛馬である白馬”
ガゴォォォォッ!!
「っ!?」
突如!回避したはずの砂埃から現れる巨大な”黒塊”!!
巻き上がる砂塵の中から、人の頭部ほどの岩塊が泥を纏って
――う、うそだろっ!?
その瞬間を見た
あの
それは
地中の岩を削り出して、それを”凶器”として利用するためだったのだ!!
「に、人間
砂や小石程度ならともかく……
地面に埋没したあの大きさの岩を!槍の一振りで苦もせず削り出し”
そして、それだけでも脅威的な膂力と驚愕するのに……
シュパァァ!
「こ、こっちもこっちで”バケモノ”だっ!!」
完全に不意を突かれて飛来したはずの岩塊を
――っ!!
唖然とするばかりの
「お!おおぉぉぉぉっ!!」
”化け物”二人の本当の戦場はここからっ!!
そうだ――
地面に埋没した岩を槍の一振りで苦もせず削り出し”
この男の振るった槍先はそれでも全く速度を落とすこと無く、
自然の岩塊を凶器の”
間合いで抜かれたら最後、防ぐのは困難極まりない。
つまり先行した
「く!
絶対必中!
回避不可能な一撃を前に
「……」
しかし
カッ!
自らの細首を刈りに迫る死の穂先を……
振り切ってしまったはずの抜き身の刀身、その柄尻を巧みに操り軽く接触させて見事に豪槍の穂先を上方へと弾き逸らしたのだった。
「お!?……おおおおおおっ!?」
そして今度は!槍を振るった
飛来する岩塊を斬り落とすため振り下ろした刀身では対処に間に合わない、避けられる間合いもとうに過ぎている……
――これぞ絶対必中!!
誰もがそう確信した瞬間に、彼女は握った柄尻を
「……」
それは角度とタイミングが数ミリ、数十分の一秒……
その”どれ”を損ねても為し得ない”
ザザッ!!
ズザザァァッ!!
そのまま、お互いが馬を交差させ、入れ違って……
二人は再び対峙する。
「人の子か?……”
「……」
「まあ良い。いや良いな……見えぬ刃、超高速の剣技……実に手強いぞ」
しかし討ち漏らした結果とは裏腹に、必殺の一撃を回避された”武神”の大きめの口は
――
――な、なんだよ、これ?こ、こんな異次元の一騎打ちって……
「とても……勝敗予測のしようが無いじゃないか」
第一砦より傍観していた
――撤退か?進軍か?
自身の器量を遙かに越える戦場に、彼は決断を出来ずにいたのだ。
「……」
ダダッ!!
だがそんな事はお構い無し、再び駆け出す白い閃光!!
「
そして迎え撃つ”武神”!
「ちょっ!ちょっと!
「背筋が凍るほどの殺気!これぞ戦場の醍醐味だっ!!」
馬上で
「……」
そして
――キンッ!
「なにっ!?」
「っ!?」
しかしそれを遮ったのは……第三の剣!!
「……貴様?」
瞬時に動きを止めた両雄……
「……っ!?」
いや、特に
同時に――
白馬の上で僅かに右肩を下げた様に見える彼女の右手の甲には、鮮やかな
「く、
驚きに声を上げる
「…………」
「誰だ?貴様」
美少女と偉丈夫、馬上の英傑二人は同じ方向を向いていた。
――二人の戦士が対峙する中央辺りの僅かに奥……
「神速応変の出口は一瞬の間に在り……」
――ふらりと人影が在った
「打抜きの生命は電瞬に在り。変幻自在の妙、剣禅一味の無応剣を至極とす」
いつの間に……というにはあまりにも当然の如く。
「”武”に
そこには
「
その人物の素性は――
「せ、せんせい……」
「我が求道を体現せし唯一の剣……
――ザシッ
――ザシッ
寡黙に先を見据えて歩を進める男の両の
――ザシッ
「貴公……武芸者か?」
そう、この雰囲気、常に生死を纏う緊張感……
それは”
いま、
その男は”武芸者”であった。
――ザ……
そして物騒な面魂の武芸者の足が
「…………
感情の薄弱な
――
後に解るだろう、この”居合い刀”が所持する
切先から峰側の
それは身長百六十センチ中頃の
そして、その刀の最たる特徴である六百グラムを切る驚異的な軽さ……
鞘内のやや青みがかった刀身はどのような金属でどのような加工を付加されているのだろうか?
軽量化の代償である脆さと引き換えに”有り得ない”ほどの切れ味であるという。
「…………」
刀を差し出された馬上の騎士姫は、
「手に取れ、
「…………」
更に
「
「
「?」
「
刀を差し出す武芸者の言葉を遮って、
陶器の如き白き肌の頬を感情の朱に染め、彼女は
「せんせい、わたしはもう
髪といい瞳といい肌の色から鎧の色まで
その希有な容姿と感情薄いことから、
あの時……
謎の包帯男、
それでも……
――”
――さいか……
――あの
――生きる”まねごと”をして人形のまま壊れていくだけだった……
だからこそ!
――だから、わたしは……
――ただの
それは
”
それは彼女にとって一番大切な
「貴様の呼称などどうでも良い。詮無き事柄だ。それよりも貴様は、この
「っ!」
――汚色!!
武芸者、
だが――
「
バシ!
「っ!」
咄嗟に手にした刀を振るおうとした
納刀したままであった”
「くっ……」
「先に我が太刀如きに後れをとったのがその証拠!非を認めるのだ」
――先に我が太刀如きに後れを……
つまりは先ほど割り込みによる一撃の負傷……
「…………」
険しい
現に
「
カチャリ……
鬼気迫る刀気を纏って
「待て待てまてぇぇーーいっ!」
睨み合っている師弟……
しかし
「我が一騎打ちを邪魔するとはどういう了見だ?謎の武芸者よっ!」
言わずもがな……
それは、槍を手に馬に跨がった偉丈夫、
「貴公が
師弟の間に勢いよく割って入る馬上の
「…………匹夫が」
キン!
それは”剣聖”と呼ばれし程の武芸者、
「おっ!?」
棒立ちに見えた武芸者の、体幹に一切のブレ無く放たれる超速の薙ぎ払い。
それは
”
――”刀身は
と言わしめた必殺の剣技だ。
――――が!?
ガシィィン!!
地上から馬上に在る自分の首を刈りに来た、視認出来ぬ程の高速な刃を、
「…………」
「…………」
そのまま高低差のある位置で鋭い眼光を交わす二人の武人。
「……………………見えぬ……はずだが?」
暫し睨み合った後に、
ダラリと右下に抜刀した刃を下げた”武芸者”
「だな、殆ど見えぬぞ?……だが、戦場では予想外の力が宿ることもあるっ!」
受ける馬上の”武将”
「予想外の力だと?」
「………?」
そして同じく、その光景を間近で観察していた
――修練を極めて得し剣技に応戦するだけの事象……
「
ヒュバッ、ヒュバッ――
ニカッと太陽の笑顔で手にした豪槍を一振り!二振り!
――ブゥォォォン!
派手にグルグルと振り回してからピタリと脇に挟んで停止、颯爽と構える英傑!
「そ・れ・は・なぁ!それは……”
「…………」
「…………」
神速の絶技を修める事のみ、死生を代償にしてまで血の修練で研磨してきた二人の剣士を前にして――
第十四話「
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