第125話「砦の武神」(改訂版)
第十二話「砦の武神」
――
言うまでも無く東の最強国にとって”
その難攻不落の城を
武名高き老練の宿将は”
生粋の名将だけに与えられし”旺帝二十四将”の称号を冠する将軍。
その中でも
進軍跡に無類の屍山を築いたと云う”魔人”と恐れられし
そして……
その”
また、それとは別に
――
「だーかーらぁっ!大兵力を擁した
「待っていても城は落とせない、時間が経つともっと敵が増えてくるから!」
カタッ
彼女は壁に立てかけてあった、精巧な飾り細工の施された白漆の鞘が艶っぽく輝く純白の佳人……愛刀”
「ちょっ!まって!……って!わ、わかった!わかりましたって!!」
小太り眼鏡の参謀役、
――強大国の名将が何万もの兵力を擁して守る天下の大要塞”
彼女の参謀である
同時に
時間をかけるほどに不利になって行くのも自明の理であった。
現に、この状況を続けている間に敵方へ駆けつけた援軍で
――対して
”
その内訳は……
同盟国の加勢という形で出兵した
主役が脇役より小勢というのはなんとも格好のつかない話であるが、正統・
現状の兵力不足は如何ともし難いが、既に伝令にて状況打破のため
――けどなぁ……時間をかければかけるほど明らかに敵軍がより兵力を充実させるだろうし……
この時の
勝てる未来は全く見えなかったのだ。
「じゃ、じゃあさ、
そういう考えからも、
いや、妥協案を同級生でこの戦国世界では上官である
「…………」
美しく輝く星の銀河を煌めかせながら、小首を傾げて暫し考える美少女。
「お……おぉ!」
――や、やっぱ
「……ん……具体的には?ウッチー」
そしてその美少女が、桜色の可愛らしい唇から放った問いかけにウッチーこと
「て、敵援軍が配備されたのは”
「……」
自身の副官、参謀であるウッチーこと
「そ、そこを二つとも……ええと、奪取?できれば、
説明中もジッと美しい
「………ん………うん……」
そして
「えっとぉ、”
八万近くの兵力を蓄えるに至った難攻不落城に無謀な特攻をされるよりは遙かにマシだと、急遽代案を出した参謀、
――これはこれで結構イケるかも?
目前の美少女が真摯に自分の意見に耳を傾け、可愛らしく
――”お前の上官になる
それは
普段は天然系のお嬢様である彼女は、戦場では一転、意外すぎるほど効率的に思考して動く。
また、コミュニケーションの苦手さも、持ち前の希なる美貌とズバ抜けた剣技という
彼女の副官の任を命じられてから今に至るまで、
――だが……
将の
そして今回……
どうも今回ばかりは、それを割り引いても異様に”かかり気味”だと感じる点もあるのだ。
「…………」
そんな”
彼は次第に考えを改め、この時、既に頭の中で更なる策の再構築を始めていたのだ。
「ウッチー、それでいこう!直ぐに準備を!」
輝く表情のお嬢様は
「へ?え?……あ、ちょっと!
――
――そういった
そして舞台は領都”
――巨城”
本来なら
「
――っ!?
砦に設置された
「はっ!一刻程前に
「兵力は
急に後ろから声をかけた男の正体を視認した見張り兵士達は、緊張にピンと背筋を伸ばして報告する。
「ほぅ……で、敵連合軍大将は誰だ?」
兵士達に問いかけた男は、がっちりとした肩幅に鍛えられた太い腕、そして厚い胸板の
「おう!おう!
楽しそうに問いを続ける男の双眸は、意気が
陽とした風貌にして実に見事な男ぶり、
三十歳そこそこの実に堂々としたその武人の正体は……
――
最強国
”
そう!
百戦錬磨の”魔人”
「…………」
兵士の一人はその堂々とした武人、
彼が登ってきただろう
「……う……ぷっ!……っ!!」
そして突然堪えきれずに吹き出し、慌ててその口元を押さえる。
この
この堂々たる体躯を縮こませ、
楽しみを待ちきれない
「ん?どうした、俺の顔に何かついているか?」
「い、いえっ!あの……その……」
ジッと自分を見る一人の兵士が視線を不思議に思った
「いえ!こ、
その光景を見て、直ぐにもう一人の兵士が相方をフォローをする。
この辺りの気の付き様と咄嗟の連携は――
この兵士達の付き合いが長いと言う事が見て取れる。
「ん?そうか……で、敵将は誰だ?」
どちらにしても、堂々たる武人である
「はい、旗印は
ガッ!
――っ!
途端に
「おおおおっ!
堂々たる武人……
最強国”
まるで子供のように瞳をキラキラとさせて敵が陣取る平原を眺めていた!
「
些末事を気にしないカラッとした性格の男も、”こと戦に関して”はこの通り……
いや、そのまんまっ!
それこそ天真爛漫な童子の如きだ!
「喜べ兵士諸君っ!当たりだっ!この戦場は大当たりだっ!!はっはっはっ!俺は昔からくじ運は良い方だからなぁ!」
そう言って兵士の肩をバンバンと叩く、気さくで豪胆な男は……
陰謀渦巻く戦国の世に在って
「その辺にしておけ、
――!?
そんな独りテンションが上がりまくる”純粋なる武人”に水を差したのは新たなる声……
振り向いた兵士達が見たのは、風格ある初老の将の姿。
「や、
「は……はっ!」
兵士達は驚いて顔を見合わせ、そして直ぐに慌てて敬礼する!
下級兵士が配置されるこんな
「おおっ叔父上っ!叔父上も
しかし軽く注意された本人は全く懲りる様子も無く、キラキラとさせた双眸を
「まったく……相変わらず”
その様子に呆れた様に笑った宿将は甥っ子によって指定された場所に行き、そして同じように敵軍の展開される平原を眺めていた。
「うむ……確かにあれは
眼を細めて確認する
「
――
傍で会話を聞く兵士二人はゴクリと唾を飲み込む。
その脅威的な伝説は
――しかし当の堂々たる武人は……
「それは尚のこと楽しみであるなぁ、はははっ!!心配召さるな叔父上、この
実に明朗快活、豪快に笑い飛ばしたのだった。
第十二話「砦の武神」END
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