第124話「密談」後編(改訂版)
第十一話「密談」後編
――
俺の脳裏にはあの時の……
”六大国家会議”での”猫かぶり少女”の姿が浮かぶ。
――”あ、あ、あんたっ!もしかして、
ちょこんとした可愛らしい鼻と綻んだ桃の花のように淡い香りがしそうな優しい唇。
毛先をカールさせたショートボブが愛らしい容姿によく似合っていた少女。
大きめの潤んだ瞳は少し垂れぎみであり、そこから上目遣いに他人を伺う様子はなんとも男の保護的欲求がそそられる魅力がある……様に見えた、控えめで大人しげな少女の”地”は……
「…………」
目前でしたり顔な四角い眼の禿げ親父に向け、俺は静かに首を左右に振ってみせた。
「”アレ”は……無いな」
そして溜息交じりに呟く俺を、その禿げ親父は”かははっ!”と軽快に笑って捨てる。
「
「……」
この禿げ親父……
それに取りあえずあの性格を置いてもだ、あの瞳は……
彼女の少し垂れぎみな薄い茶色の瞳は……
「”魔眼の姫”が
――序列一位、”黄金の姫”である
澄んだ濡れ羽色の
その宝石の中で波間に時折揺れるように顕現し黄金鏡の煌めきを魅せる、神々しいまでに神秘的で印象的な
――序列二位、”
一言で言うなら”純粋なる闇”
恐ろしいまでに
――序列三位、”
魅つめる
――序列四位、”
輝く銀河を再現したような
それはまさに幾万の星の大河の
――と、
恐らくは
文字通りその
究極の美を内包する至高の宝石達なのだ!
――
「ところがだ、
確かに”希に見る美少女”であり、その瞳も美しくはあったのだが……
「成る程。
「”魔眼の姫”の証明としてはこれ以上無い理由だ!」
俺はキッパリと言い放つ。
「くくくっ……まあ、一先ずは聞け、
序列五位、”
――
”
そして、征服した
つまりは
一般的には”
「この
「…………」
最終的には
結局、遺恨を残さないという目的もある事から様々な宗教を混在させるという形式を採用して対応したというのが
「つまりだ、この
「……なるほど、宗教国家”
俺はここまでの
「かははっ、
――五年前か
俺が
「なるほど、それで面識が…………って?ちょっとまて!」
そこまで聞いて、俺は目前の禿げ親父をマジマジと見直す。
「
面食らってしまった俺の問いに、禿げ親父は四角い眼を細めて”かはは”と笑う。
「それは”よりけり”じゃ……かははっ!
「…………」
流石に俺は閉口する。
この”
「かはははっ!なんて顔をしておる
「…………そうか。いや、ならまあいい、それより」
――そんな適当で自分本位の天命があってたまるか!
と、俺は本心では呆れながらも話の続きを促した。
「
――”ある種”の力?
噂ほどでは俺も聞いたことがあるが……
――どんな怪我も病魔も治癒する
「その儀式の折だけは信者は
「…………」
「その時のあの娘……いや、
――なんだ?この……
――
それは
「…………」
「そうであるな……潤んだ瞳と綻んだ桃の花のような淡い香の可憐な少女。サラサラと煌めく栗色の髪がその愛らしい容姿によく似合っておった……」
――おいおい、オッサン……
その熱に浮かされて様な顔、思春期の男子中学生かよ?とツッコミたくなる。
「一見、どう見ても年端もいかぬ愛らしき少女であったが……」
「あったが?」
俺は正直、禿げ親父の意外すぎる反応に半ば呆れながらも聞く。
「うむ…………その少女が、そんな可愛らしい類いの存在で無いことを
――っ!
一瞬で、
恋する中学生から百戦錬磨の
「”では、始めます”とな……無表情なまま、そう呟いた少女は
「……」
当時の様子を語り出す
「少女の白い指が我が額を薄らと伝い、そこから何か……解らない波が
「……」
「痛みとかでは無い……普通は経験することが無いだろう心地良さから来るだろう違和感に、翻弄される
「……」
「
「
「
「…………」
未知の能力を発言した時に現れる魔眼……
最後の”魔眼の姫”はそういう
――しかし……治癒の異能……
確かに魔眼の能力は俺も過去に
――
事実なら
俺は
「わかった、一先ずはそれで納得しよう。事の真偽は
ほんの少し思考した後にそう答えた俺に、
禿げ親父は本当に愉しそうに口元を緩めて――
「かははっ!噂通り”喰わせ者”よな、
「……」
――流石の忠言
天性の
「かははははっ……はは…………と、場も和んだところで、そろそろ本題に入っても良いか?
「……」
――ほんと……流石だよ
この状況で更に
――”
俺は平然を装い、頷いてから四角い
「勿論だ。俺が提案するのは四カ国による……」
――
―
そして事が成り、”繁栄と快楽に
――
ダダッ!ダダダッ!
朗報には未だ暫しかかりそうだと思考に耽っていた俺は……
「……」
再び響いた大地を蹴る蹄の音に現実に戻る。
ダダッ!ダ……
やがて我が
「
「ああ……」
冬の始まりを告げるともいえる今年一番の冷え込みの中、
ヒヒィィーーン!!
一人目の伝令兵が俺達の元を訪れてから数十分後。
「ほ、報告致しますっ!」
僅か数十人を引き連れて山中に陣取る俺の元に報告を入れる二人目の伝令兵は、またもや馬が完全に停止するのを待たずに飛び降りて慌ただしく俺の前に
「大義です。続けなさい」
――我が
――そして……その情報の重要度をよく理解している
「
「そうか……で、
「はっ!
「…………」
――はは、”
兵力が多ければ、それだけその兵を養う補給部隊も大規模になる。
つまりはそれだけ我が
”
――あの
今回は元
俺は報告を聞き、一応は頷きながらも内心はヒヤヒヤものであった。
「受け渡す物資を多めに用意しておいて正解でしたね」
「…………」
俺は傍らの側近をじっと見詰め……
――いつもの”軍服姿”
――勿体ない、もうちょっとあの姿を……
「
「いや……何でも無い」
黙ったままの俺に不思議そうな視線を向ける少女に短くそう応えてから、俺はその場の全員に指示を出す。
「直ちに
――おおおおぅっ!!
そして俺の飛ばした檄に応じて士気も上がった一行は、一時中断していた進行を意気揚々と再開するのだった。
第十一話「密談」後編 END
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます