第123話「逃避行」(改訂版)
第十話「逃避行」
「なにが”話はついた”よ!じゃあこの状況はどう説明するわけなの!?」
腰まである艶やかな長い黒髪が美しい色白の
「う……そんなこと言われても……交渉はバッチリだったんですよ、完璧!だけどあの”
襟部分に可憐な白い花の刺繍が施された清楚なグレーのセーラ服の上に、淡いピンク色の薄いカーディガンを羽織った少女がやや気圧されながらも反論する。
「今更条件を!?ここに来て!?私達はもう引き返せないところまで来てるのよ!」
大和撫子の更なる追求に制服姿の少女は”うぅ”と黙り込む。
「どうなの?
「それは……ですから……」
執拗な追求に終始、制服姿の少女はタジタジだ。
利発そうな静かな瞳と控えめな薄い唇……
前髪を横に流した肩までのミディアムヘアの髪型は清潔で生真面目な印象を受けるが、毛先を軽くワンカールしている辺りオシャレにも気を遣っている最近の女子高生という感じの制服少女。
真面目そうな少女は動揺した表情のまま、まさに答えに窮していた。
「まぁまぁ、
それを見かねてだろう、長い髪の大和撫子とミディアムヘアの制服少女の間に割り込んだのは、中性的な美形で一見して静かなインテリっぽい容姿である男、
――ここは”
女二人、男一人が大きめのテーブルを挟んで座っていた。
「それは……そうだけど、あんな条件では”
長い黒髪と色白な容姿の大和撫子、
「それは……私もそう思います。ですから次案を提案したいと思ってるんです」
少し落ち着きを取り戻した制服姿の少女、
「次案?戦に紛れて”
「大丈夫です、
一転、随分と得意げな瞳を輝かせる利発そうな制服少女を見て――
「……」
「……」
――失態をしでかした直後にこうも自信満々にまぁ良く言えるものだと……
「まぁ……とにかく。そう言う事なら僕たちは出来るだけ目立たない様に大人しくしていよう」
「そ、そうね……
ともあれ、
「……」
「……」
「……」
――
「そういえば、”
暫し顔を見合わせる三人だったが、やがて
「え……あ……あはは」
それに対し、あからさまな苦笑いを返す
「どうしたんですか?もしかして……あのデリカシー無し男がっ!?」
その様子を見て、
「いや、ないないっ!!
「挑まれたのっ!?」
「挑まれたんですかっ!?」
「うっ……ま、まぁ……
「誤魔化して!?」
弟の表情から何か不穏なものを感じ取ったのか、姉の
「ご、誤魔化して……ええと、代わりに
「……は?」
「……ちょ、それって!?」
「いや、個人的戦闘力が破格の”
「あのバカ太郎っ!!」
「あのバカ太郎っ!!」
――ガチャリ
「誰が”バカ太郎”だ……陰口言うヤツは
ちょうどその瞬間、計ったように姿を現したのは……
”やる気の無い態度”が表に出た様な青年。
見た目は悪くないが目つきは少々悪い。
いや、目つきが悪いと言うよりも本当の意味で何者にも動じない瞳を思わせる不感症ぶりが黒い瞳に宿ったある意味得体の知れない青年だ。
「
作為的に真面目な少女を全面に押し出した
「酷い言われようだな……戦は”戦国世界”でだ、この”近代国家世界”では屋敷に居てもおかしくないだろうが。大体だなぁ”戦場を暢気に”だって?豪傑だな
あきれ顔で生気無しに反論する渦中の青年、
「
今度は
「おいおい、
――っ!?
正確にはその中の”ある単語”に、”
――うわぁー、
対立する男女に挟まれていた
「それが不用心だというのよ
「いや、その糾弾内容こそどういう事だ?
「そうなのよっ!
「いやだから……信じられないのはお前だ、
パンパン!!
――!?
口論が激しくなり取り止めも無くなりそうになった時、
両手を大きく打ち合わす音が響いた。
「はいはい、そこまでだよ三人とも。話がこんがらがってきちゃってるよ……」
手を打ったのは
「
――っ!?
「け、
「
あきれ顔の
「だ・か・らぁっ!主題はそこじゃないでしょ、ね?ね!」
「う……」
「……」
二人の乙女は顔を真っ赤に染めたまま更に抗議しようとするが……
「くだらねぇ……」
そして”やる気の無い態度”が表に出た様な元凶はまるで他人事の様に呟いていた。
その元凶、目つきが少々悪く何者にも動じない不感症ぶりが黒い瞳に宿ったある意味得体の知れない青年……
「じゃあ取りあえず、もう一度……
そんなぶっきらぼうな態度の男に苦笑いを返しつつ、
「
改めて
「……そう……ですね。……えーこほん、土壇場で
「有り得ないわ!それじゃぁ
「まぁね……亡命組の僕たちは
「
「はい、私もそれでは意味が無いと思います。一時でも生殺与奪を相手に握られるのは好ましくありません」
「二日前に
「はい、新たな亡命先です……」
――
「そう……それしかないわよね」
そして決意を秘めた武人の瞳で、大和撫子は白い
「まぁねぇ……ここまで来たら”毒を食らわば皿までも”かなぁ」
相変わらずの茶化した口調ではあるが、
――亡命先からの亡命……
故国である
少なくとも国家に恥をかかせる結果になるのだから脱出は怪しまれないように、監視の目を
そこまでして……
新たな受け入れ先に拒まれた場合は目も当てられないのだが。
「
「だね、あと受け入れ先で不当な扱いを受けない保証と、
条件は言い出したらきりが無いが……
「はい……あります。その二国に
決意の籠もった瞳で
「…………くだらねぇ」
その場で唯独り……
既にその答えに察しがついているのだろう。
”やる気の無い態度”が表に出た男が人知れずボソリと呟いたのだった。
「それは
第十話「逃避行」END
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