第122話「奥泉行路 参」(改訂版)
第九話「
――今回の”
状況としては交渉の余地は充分に在る。
――だが”それだけ”では弱いかもしれない
なんと言っても我が
――”歴史は夜作られる”と言う言葉もある
色々な意味で言うなればそれは的を射ており、そういう”世の裏道”や”人の欲望”を駆使して生き残ってきたのが”
だからこそ俺は今回、事前に”それ”を刺激した。
――どうやって?
遙か離れた敵国の領主に、一瞥もせずに我が
それは”戦国世界”では難しいだろう。
――だから
テレビ番組のインタビューを利用した!
全国放送である”情熱島国”とかいう密着型の人気ドキュメンタリー番組で、とびきりの美少女であり、最強格の
戦国世界側で
事前に接触してきた
そして好色家と噂高い
――
――それは自身の治める”
恐らく
そして……
相手を悩ませる事ができればそれはもう”交渉”の始まりだ。
”気にかける”という事は、既に選択肢の一つに入っているという事だからだ。
――
―
「お……おおっ!!」
両隣に
「おおぉぉっっ!なんという!なんという名花!!」
――
「……」
少々大袈裟な反応に見えない事も無いが……
正直、見慣れたはずの俺も思わず魅入ってしまう”その光景”だから無理も無い。
――
「!?」
「!!」
その存在感に気圧されたのだろう、
――まぁ、この二人は中々の別格だからなぁ……
隣国の姫武者にして今は我が
落ち着いた雰囲気を
美しい宝石の施された髪飾りで
「準備に手間取り、遅くなってしまい申し訳ありません。
シャナリシャナリと緩やかなる歩みを止めて優雅な所作で俺の後ろに坐した女は、床に三つ指を着いて深々と頭を下げて挨拶する。
「……」
言葉を発する薄く
――完璧だ……
――完璧なる淑女を演じきっているな、
それを微塵も感じさせぬ淑やかさ!
――つかみ所のない彼女ならではの流石の”化け様”だ!
「同じく……
だが本当の意味で俺を予定外に魅入らせたのはこの少女……
ショートカットの毛先をふわりと巻いて細やかなワイヤーワークに色取り取りのビーズが施された髪飾りを艶やかな黒髪にはわせた装い。
黒髪との色彩のコントラストがよく映えて申し分ない可愛らしさである。
一転、華奢な少女の
白い肩も露わなオフショルダーで少し大胆であるがウエストラインやバストラインにフラワーモチーフをアクセントにしたフィッシュテールシルエットの可愛らしい膝丈ドレスで、全体的には華美過ぎない上品さを総合演出することに成功している。
”少しだけ冒険をしながらも少女の清楚可憐な魅力を引き出した”というようなその装いは……本当に
「……」
その直後、彼女は一瞬だけ俺に視線を移したが、
「……」
「……ぁ」
その瞬間に背後を見ていた俺と視線が鉢合わさってしまい……
少女は慌てて大きめの黒い瞳を伏せた。
「……」
良く知った少女の、恥ずかしげに頬を染めた姿は――
俺の
「……」
――いやいや、
「おおおおっ!!片や奥底に確固たる意志を秘めながらに、その
興奮しきった
「片や清楚可憐な器にして、母性をも内包せし
続いてその指が同様に、俺の後ろで控える清楚な
「おおうっ!!なんとも
「…………」
――二人の姿を目の当たりにして豹変したな、なんて分かり易い……
俺は自身で計っておいてなんだが、
――まぁ確かに、
特に
驚いた。
俺は目前の禿げ親父と全くの同意見だったのだ。
――しかし
確か
まさかこんな禿げ親父が、そういう乙女チックな情報を所持しているとは思わなかった。
一目見て
「どうだ?教えてくれ、
「……」
――天性の
本質を見抜く眼力……
やはり侮り難し、
「
――ならばやはりこの機に話を進めない手はないだろう!
俺は当初の予定通り、このままの流れで交渉に入る算段だった。
「おぉそうか!?
四角い
「……」
――いやオッサン!従者じゃなくて”主賓”の名を覚えろよっ!!
色々気になる箇所はあるにはあるが……
それを素直に受け、俺は
「……」
「……」
噂に高き東奥の
その最奥の場所でお互いに美女を
――
カタン、カタッ
直ぐに所狭しと酒と料理が運び込まれ、俺と
――
そしてものの数分もしないうちに、
「早速で悪いが
”
「うむ、成る程!!時に
「いや、それは解りかねるが……でだ、そう言った交渉を極秘裏に行いたいのだが……」
「うむ、成る程!!
「…………」
――聞いてないな……全く
俺は溜息を
見た目上は
やはりそれは――
これが重要な会合だから我慢しているのだろうか、それとも”お
俺にはそんな高度な女心は察しもつかないが、それとは別に”これは難儀をしそうだ”と考えながらも取りあえずは話を続ける事にする。
「さっきも言ったが彼女たちは物じゃない、不可能だ。あと、いい加減に主題に……」
「ほほぅ!?不可能とな?しかしそれは……」
――?
途端に
「この”
「……っ!?」
自信に満ちた眼光!自信に溢れる口元!
――不可能な需要には先ず不可能な供給を
――そうきたか!!
成る程、本来”取引”とは
――だが
俺は埋め尽くされた酒池肉林を前に”
「金脈、銀脈、山の幸に美女達……
「…………」
俺の突然の切り出しに、視線で
――まだまだこれからだ
「一つ言おう!
「……………………ほぅ、で?」
構わず続ける俺に
「で……何だというのだ?無い物は買えば良い。金は十二分に在るのだ、余った物は売り、足らぬ物は買う、市場とはそういうものぞ」
しっかり張り出した
正面から俺を見据える男には精気が
――古狸め、やはり一筋縄では行かないか
「ならば更に言おう!交易は道を経て行われる。奥泉には”道”も無い!生活の
「…………」
その指摘にも
――!?
いや!四角い
――
これは地形的なもので誰にでも解ることだ。
では……
――
これは……
領土をグルリと
それに何か問題があるのか?
それが大有りだ!
”
この地は
つまり領主である
そして永年の歴史から蓄えられた豊富な資金と強固な独立軍”
――だが最強国
訳が無いが……
北の
――故に……行うのは”輸出入の制限”
色々と難癖を付けて物流を阻害して徐々に国力を落とさせ、最終的には根を上げさせる。
――
――
物資の不足で軍は有名無実、民に不満は募ってゆく……
事に海の無い”
大軍はあっても兵糧が不足しては戦は出来ない。
金はあっても民を餓えさせては王としては落第だ。
そうして”
「確か”国内安保”の名の下に
俺は”
「時に
だが、畳みかける機会とばかり俺が発する言葉を遮るように、
「……”
――っ!?
俺の優位性はその一言で停滞した。
「…………」
「図星か?かははっ!ならばだ、この件は知っておるか?あざとき
「…………この……件」
相手のペースに持ち込まれようとしていると知りつつも、俺はどうしても興味を隠せない。
「そうだ。在る界隈で語り継がれる”
第九話「
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