第118話「坂居湊攻略戦」後編(改訂版)
第五話「
――
商業組合を密かに味方に引き入れた事により、
「くっ!何故に気づかなかった!!くそっ!
「落ち着いて下さい、敵船団はそう多く有りません!斯くなる上は港内に誘い込みいつも通り順次撃破を行いましょう」
――
――しかし
ガガァァン!
ドドォォン!
「うっ!な、何をしておる!下がらせよ、船間をもっと開けて陣形を維持せぬか!」
まんまと
今回ばかりは勝手が違う!!
逆に至る所に停泊、逆走した商船が邪魔で、駐留軍の軍船同士が進路を潰し合ったり接触したりで
「ぐぬぅぅっ!何故に今日に限って……」
ドゴォォ!
「わっ!何をしている!!」
「ぬぬ……敵艦隊はどうしてああも匠に操船できるのだっ!?」
――これらは勿論、
湾内の商船にパニックを装わせる事により、一見して
しかしてその実は、
――その最たるものが……
「なっ!なんだと!?どこの商人の船だ!!我が軍港を塞ぐのはっ!!」
――普段は使用されることのない軍専用口の強制閉鎖!
湾外周をグルッと囲んで伸びた左右の細い軍専用出入口を左右とも、これらの商船にて塞ぐという暴挙だ。
準備万端出撃した主力艦隊にて入り組む湾内に敵を囲い込み、侵入者を袋の鼠にするという
「くっ!この大型商船団は……
その時には既に重量商船が数隻、両脇の軍艦専用出撃口を見事に塞いでいたのだ。
――これでもう……
港内の軍艦は思うように操船出来ず、我が
援軍の主力艦隊は出口を塞がれ、細い軍艦用通路から渋滞してどうにも動けない。
「先に泥の詰まった銃は鉄棒にも劣るってな……おっと、この”戦国世界”には重火器は無かったよな」
「
「はい、
私も同じ方向を見て答える。
「しかし、策を仕込み済みとはいえあの軍の動きが周到さ、流石だ。地上の
「はい、確か覇王姫の懐刀と言われる、アルトォーヌ・サレン=ロアノフだったかと」
私の答えに
「成る程なぁ。”白き砦”……白い肌、白い髪、色白と言うよりは色素を全て忘れて生まれてきたような不自然な希薄さの、あの華奢で存在感の希薄な美女、
満足そうに頷かれ、改めてその傑物を賛辞される。
「良し、
我が君の命に私はビシッと背筋を伸ばし敬礼をした。
「はい!後事は全てこの
――
――こうして
「私は……」
「なるほどねぇ。
長く艶やかな黒髪を後ろで束ねたポニーテールとやや垂れ気味の瞳、
それに
「指示を
「……」
――
――この時、私はどうかしていたのだ
この女に……
さして親しくも無く、それどころか
「そうねぇ、焦燥の
「……」
――言いたくない、口が裂けても嫌!
「そう……まぁいいわ。それよりもぉ、そう言う事なら難しくは無いわねぇ」
――?
「…………」
女の私でも一瞬ドキリとする妖艶さ。
私から見て完成された大人の女性である
「良い?
――そうだ、
「
――!?
「は、はいっ!?」
私は自身がジッと睨んでいた女の呼びかけで我に返る。
「ふふ……”謹慎処分”ってワケじゃないならぁ、強引について行っちゃえば良いでしょう?」
「え?は?……あの?」
ちょっと考え事をしている間にどうなったらこう言う結論に?
――何を言っているの?この女は……
私は意表を突かれたのと、強引すぎる話の流れに戸惑っていた。
「今回はねぇ、
「……」
――そこまでは知らない
「
「や、
――アピール?
――それはつまり……
「作戦の本質から連れて行くのは特に見栄えのする女だけらしいからぁ、
「だ、だから!何を……」
「何をってぇ……だからサイカくんの愛人役の一人として……」
「っ!?」
――
そ、そんな恐れ多い!!
――いえ!そもそもそういう話じゃ……
「
必死に反論する私を楽しそうに眺めるやや垂れ気味の瞳がキラリと光る。
「関係無いわ、これは女としての自己顕示欲なのよ。じゃあ、
「…………」
――この……女……
普段から気怠げでやる気が無いとか、飄々としているとか……
散々男を欺いているけど本質は多分コレだ!!
”融通が利かない”とはつまり”一途で”
”根底では頑な”とはつまり”芯が通っていて”
”挑戦的な”とはつまり”正々堂々とした”
――つまり
――
「な、内外にアピールと言ったり、関係無いって言ったり……無茶苦茶ですよ、
私はなんだか解らない敗北感を前に、そう細やかな抵抗を返すのがやっとだ。
「ねぇ、
「…………」
――
ずっとそう思って生きてきた。
――けれどそれはもう無理で……
今まで通りあの方のお側に居たいなら、
今まで通りのやり方じゃ”それさえ”維持できない。
――だって……
「……」
私はここに来て初めて、無意識だったけれど”しっかり”と瞳を上げていた。
――誰にも取られたくないっ!!
だって……
――
「ふふ、
――利いた風な事を……
「…………らないの?」
「?」
そうして私は目前の”ぽっと出女”に言ってやるのだ。
「だから解らないのですか?
初めて外に向けた女としての私の本心……
その宣戦布告を受けて――
長く艶やかな黒髪を後ろで束ねたポニーテールの美女は、やや垂れ気味の瞳を細めながら
「…………ふふ」
そんな不敵な笑みを常備した女は本当に……
憎らしいほど愉しそうだった。
第五話「
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