第118話「坂居湊攻略戦」前編(改訂版)
第五話「
”
そんな”二つ名”を持つ女が、どういうわけか
「予測はしてたけれどぉ……あまり歓迎はされていないみたいねぇ?」
不満があからさまに
――歓迎?どの口がそれを言うの!
この
それ自体はまぁ良い。
それ自体は支配者たる
隣国で縁も浅くない彼女と彼女の国を助けるのは私も反対はしない。
けれど……
――あろう事か
――自領”
――
永年の想いを抑えつけて
「……」
無作法にも来客を睨みつけて黙る私だったが――
コンコン!
「失礼致します」
暫くしてノック音が響き、その後に使用人が
「……」
「……」
未だ来訪者を睨む私とそれを何食わぬ顔で受け流す気怠げ女の横を通り、
「なるほどぉ、”
――なに?…………っと、そんなことよりっ!
「御用向きは何でしょうか、
――そうだ!特に”
「あら、ごめんねぇ」
そんな敵意丸出しな私の言葉を受けた
お互いが避けようとして”つい同じ方向へ”動いて微妙な感じになるアレだ。
「
緊張感のない女に私は苛立ちを隠せず再度答えを求める。
「
――こ、この女は……
「いいえ、少し前に採用された使用人の中の一人で……って、私の話聞いてますか!
あくまで
退室したばかりの
「私は経験から”そういうの”敏感でね……と、それはそうと今日はねぇ、
――”そういうの”?
あの
癖の強い女相手に私はその言葉の意味がイマイチ解らなかったが――
「サイカくんが明日、この
「知ってます。それが?」
ある意味、もうこの女との真っ当な会話は諦めた私は、女の話を最後まで聞くまでも無いと早々に会話を切り上げようとする。
「そう?サイカくんの事となると流石ね、ふふ」
――っ!
対して、その余裕な態度に再び私はカチンと来てしまった!
「言っておきますがっ!!
私は完全に頭に血が上っていたのだ。
だから言葉使いも滅茶苦茶で……
「出会ったのは何年も前だけどね、気づいたのは最近なのよ」
――はっ!?
けれどそんな私の支離滅裂な
「な、なにを?」
戸惑う私。
「だからぁ、病院でね、寝ている間も……なんて言うのかしら……こう、落ち着かなくてぇ……そうね、悶々と……っていうのかしら?そんな感じでゴロゴロしてたのよぉ」
「…………」
――なに?なにを言っているの?この女……
柄に無く頬を染めたりして。
「
「……」
その言葉に……
その彼女らしからぬ力強い瞳に……
――ああ
――駄目だ
女としての私は全てを察していた。
「そんなの……」
私には
「ええ、そうね。
――だから!!
「そんなの卑怯ですっ!!私はもっと前から!ずっとずっと前からっ!なのに誰も彼もっ!後になってっ!!」
――私はこの女の感情を許すことが出来ないっ!!
「そうよね、
「だから……
――
いけしゃあしゃあとこの図々しい女はっ!?
最も早く参戦したにも拘わらず、自らの不甲斐なさで出遅れた私の窮地を――
「……」
――
――身も心も全て賭してお仕えする女
それで良いと……
そうでないと駄目だと……
”
――なのに今更……
――なのに後から後から何も知らない馬鹿女達が……
今更ながらこの秘めた想いを”そのまま”にしていては駄目だと!
そしてなによりもあの……あの”暗黒姫っ”!!
「くっ……」
――我が君に対する部外者女達の勝手な恋慕に急かされ!
「今更……卑怯……」
――私の想いは……
「変わらないとねぇ、一生後悔することが人生にはあるのよ」
それをまるで見透かしたかのような気怠げ女の言葉。
――利いた風な事を!
私は自然と震える身体で……
視線も合わさずに……
「……」
けれど確かに一度だけ、顎を小さく下に――
僅かに、だけど確かに頷いてから私は目前の敵を正面に見据えていた。
「良い瞳だわ……そうねぇ?先ずは数週前にあった
そして、まんまと手の内のなんとも情けない
――
―
”
本州中央北部に勢力を誇る宗教国家は、南に
”光輪神”を主神として取り巻く六柱の神々を称して”
そんな宗教国家”
そしてその”
――
「港町であるこの領土での戦は主に海戦です。ですが屈指の商業都市でもあるこの地では経済活動自体を止めることは、中央を牛耳る”
――”
その旗艦内の司令室にて――
くせっ毛のショートカットにそばかす顔の快活そうな顔立ちの少女がそう説明する。
――彼女は
”新政・
事情があって我が
――
「ですので、”
一通り
「……では
「いいえ、この状況でそれは不可能かと。
最新の状況分析からそう答える
確かにそんな程度の兵力では一時も経たず易々と全員捕縛されるだろう。
「では?」
私は会議進行のために客将参謀にその先を問う。
――
だが
”屈指の商業都市”故に、“
とはいえ、やはり
――欲深い男だわ……
私は敵国ながら
けれど……
その
調べでは、
一日に数百という商戦の寄港を逆に多様な斥候としても用い、
そしてその報が入れば、素早く交通整理して商船を湾内奥の
最悪、湾内にまで攻め入られても――
商船取引用に築港され、入り組んだ湾内を上手く利用し、それを撃破する!
広い湾内を幾重にも分断した港内はちょっとした迷路だ。
細長い運行可能域に迂回、行き止まり……
戦い馴れた
そして普段は使用されることのない湾外側をグルッと囲んで伸びた左右の細い軍艦出入口。
そこから準備万端出撃した主力艦隊にて、入り組む湾内に敵を囲い込み袋の鼠にする!
こういった周到の防備から
――全て商人達との堅い信頼関係があってこその防備であるといえるけど
それにしても……
本国からの要らぬ枷で手足を縛られた状態にも拘わらず、これほどの防備を固められる良将……
――俗物の
私はスムーズに会議が進むように合いの手を入れながらも、基本的には
「そこで……先生が考案されたのが”調略による敵軍の切り崩し”です」
その言に場は少しばかり騒がしくなる。
「切り崩し?」
「あの宗教国相手にですか?」
――そう、これが今回この作戦の肝だ
「効果的な切り崩しとなると敵軍の……
――何時も通りの暗黙の了解
「最初は俺も
狂信者……とまでは言えないが、
信仰というものは時に忠誠心などよりも厄介だ。
道理や欲望、情でさえも動かない事が往々にして在る。
「確かに……
「そう言う意味では
そう、ここは皆が一致する見解だろう。
だけど、だからといって――
この
――けれど心配は必要ない!
それは私の
「そ・れ・で・だ……」
案の定、難しい顔を並べる部下達に
「調略の
――っ!?
そこには軍艦とは別種の駒がある。
つまり商船を象った木製の駒が多数置かれていたのだ。
「
私は待ってましたとばかりに、疑問を浮かべる諸将を答えへと導く役に徹する。
――そう、
「
未だ疑問符を浮かべたままの諸将達に向け、
「はい、
――
この後、作戦の開示と詳細な指示は……滞りなく進んだ。
「……」
――
その代償がこの
我が
その年月、資金……
掛かった手間を考えると、
そう考える者も多いだろうけど、
「……」
既にこの時には、
戦国の国家を取り巻く状況などは多様に変化して当然で……
そう言う意味では――
”実を避けて虚を撃つ、兵に常勢なく水に常形なし”
これは戦術レベルの話だけでは無く、戦略にも適用されて
多種多様な状況を受け入れ、
つまり……
――
――
――
一見、切迫した状況で結ばざるを得なかった不利なこれらの三点の問題は、
既に
それはこれから始める強大国、”
「先生……」
私がそんな感動に心を震わせていた間に、いつの間にか
「先生、では号令をお願い致します」
「ああ」
――
全員、すっかり気合いの入った良い顔になっている。
そう……私も……
「……」
特に今回、
「
「はい、
何故か不安そうな瞳でそんな私を見る
「いや、なんでもない」
「?」
「我が手持ちの海兵力と百ばかりの
――おおおおっ!!
そうして……
第五話「
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