第116話「白金姫の焦燥」(改訂版)
第三話「
同じく
そして”
大要塞とも呼ぶべき巨城、
例えば、”
荒波の最中に天を貫くが如くそそり立つ黒き鋼鉄の壁!
堅き黒甲羅を
その化物と並び立つ地上の大要塞がこの地の”
――方や海の”黒き鋼鉄の
――方や陸の”黄金の
この二物に世の誰もが共通させられる認識は……
真に”難攻不落”!!
この一言のみだ。
――
―
その
「はいはい、確かにここまでは順調ですよ?ええ、順調ですとも!けど、ここから先は
眼鏡をかけた、少し小太りした青年が唾を飛ばして必死に主張する。
「それもそうだが……
眼鏡をかけた小太り青年に反論したのはこれまた眼鏡をかけた中々容姿の整った青年。
ただ
「……」
”良く出来て”はいるが……
その青年の右目は義眼であり、間近で観察すると義眼の目尻には小さい傷もある。
「だろ?ウチワ君」
右目が義眼である青年の名は”
もとは東の最強国”
新しく”正統・
「確かにそうですがねぇ、
自身の名を訂正した眼鏡で小太りの青年は、大テーブル上に広げた
「……ううん、というか確かに手堅いが……これだと開戦までの用意に三ヶ月はかかるんじゃないか?」
「……」
「う!?……ま、まぁ……それだけあの城は強固で、攻略は難しいってことで……」
――難攻不落の”
この小太り男は暗にそれは不可能であり、ここは諦めて撤退をと言っているのだ。
「ええと、つまりですねぇ、ここは
「おいおい、それは……」
バンッ!
その場にテーブルを激しく叩く音が響く!
それは
「ウッチー?問題外!別の作戦!!」
作戦テーブルを叩いて立ち上がったのは――
「う……く、
おどおどとした様子でその声の主に視線を送る
「別の!」
それを受けるのは先ほどまで二人のやり取りを黙って聞いていた少女、少しばかり表情乏しいが抜群に整った容姿の美少女である。
「け、けど……やっぱ危険だし……」
少女の険のある視線を受けながらも逃げ腰で怖ず怖ずと立ち上がる小太り青年。
バンッ!
「うひっ!」
美少女は、あわよくばそのまま作戦会議場を後にしようとする
「……」
抜きん出た美貌を所持するも、表情乏しいのが玉に瑕な美少女も、今回ばかりはそのリアクションからご機嫌麗しくないのは確かだった。
「く、
白磁のようなきめ細かい白い肌。
整った輪郭に、それに応じる以上の美しい
そして特筆するべきはその
プラチナブロンドの美少女の瞳は、輝く銀河を再現したような
それはまさに幾万の星の大河の
「隊長命令!ウッチー!」
その至宝の
「”さいか”が言ってたわ、作戦面はウッチーに任せておけば取りあえずオッケーだって」
「う……す、
その
彼は”近代国家世界”では
「ウッチー!」
「う……はい」
つまり、既に除隊していたのをつい二ヶ月程前に
「俺からも頼むよ、ウッチー。
「いやいや!
不服そうにそうツッコミながらも、ウッチーこと
「なんでこんなことに……だいたい僕は……うう……あれがこうなって……それで……」
グチグチと泣き言を言いながらも作戦図と格闘を始める
そしてそれを確認した
――
―
――この状況から遡ること二ヶ月とちょっと前のこと
大きな時系列では、
「ウッチーなら問題無いだろ?
俺は並行して進めていた軍事作戦、正統・
「”
側近である
「ウッチーはやる気無しで超堅実だからなぁ」
「では、やはり別の人選を……」
「けど有能だ」
その言には同意しつつも俺は意思を変えない。
「……」
呟いた俺の言葉に
「
特に不満無く納得した顔でそう言う
「ていうか、なぁ?もう既に軍に復帰させた」
「っ!?」
さらに俺はアッサリとそう続ける。
これには流石の
「そういう事ならば……しかし、よくもあの”面倒くさがりな臆病者が”それ”を承諾したものですね」
「…………」
――おいおい、
もうちょっとオブラートに……
というか、悲しくもその表現がピッタリなのがウッチーのチャームポイントだ。
「それはな……”美女と長時間過ごせてハラハラドキドキの高給バイト!”があるって釣り上げてだな、実は軍の仕事だと分かって後でグダグダ言う奴に、それじゃあと……強引に賭け事に持ち込んで無理矢理了承させたってわけだ」
「…………」
俺の回答に
「どうした
そうだ、
「…………賭けには何を用いて?」
盗人猛々しく主張する俺に、
「ああ?言っただろ?真っ当な方法……”
そう、著しく優劣の差があるものでは賭けとは言えない。
俺の言葉に
「ロイ・デ・シュヴァリエ……ですか」
――ロイ・デ・シュヴァリエ
それは二つの陣営に別れた白と黒の多様な駒を駆使して優劣を競う盤面
縦十六マス、横十六マスの戦場で、
簡単に言うと、
そして俺は、この
――とはいえ……
というか、我が
「まぁ……
そして切り替えた
「だから……”
――
再び時は進み、場所は
「わ、わかりましたって……うう……一応、
暫し作戦図と睨めっこし、軍部隊を象った駒をあーでもないこーでもないと不気味な独り言と共に動かしていた
共同軍事作戦遂行中の同盟国である”独眼竜”と、自陣営の上官である”
「……」
「……」
そしてそれを受け――
二人の将軍は無言ながら同時に小さく頷いた。
流石は
無理難題を押しつけられ、イヤイヤに対応策を模索していた割には迅速で優秀な対応だ。
「そうだな、とりあえずはそれで上出来とするか」
”独眼竜”
「……」
”
「だったら直ぐに取りかかるから、
そして
「…………」
「なんだか忙しないな?
「色々とあるんスよ、多分……てか、ほんっと!
――
―
一方、
「…………」
独り硬い表情、愛らしい桜色の唇を引き締めて歩いていた。
「まだ……まだ、
腰に装備した精巧な飾り細工の施された、白漆の鞘が艶っぽく輝く見目麗しき純白の佳人……
本人も意識してないだろう彼女は、愛刀”
――
瞬く間に各地を制圧した
「……」
だがそれでも、
「……」
今まで見せたことの無い彼女の焦り……
今まで皆無だった手柄への執着……
「……ぜったいに……わたしが落とすから……」
最早、
「わたしが一番役に立つの……さいかの……」
幾度も幾度も当然の如く
当然の如く
此度だけは――
「ぜったいに……」
第三話「
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます