下天の幻器編
第114話「始動」(改訂版)
第一話「始動」
「では……
スッキリした顔立ちで黒髪を尻尾のように後ろで結わえた好青年が聞いてくる。
「ああ、まぁな……」
側近の好青年、
「?……その割には少し浮かない表情ですが?」
俺の表情を
「
「
小さく驚く
――
だが、普段の
「いや、ミスと言うほどでは無いな、というかここ最近は連戦だったからなぁ。疲れが溜まっていたのだろう」
「そう……ですか。成る程、だから今回、
俺は自らの言も含めて否定し、そして
そう、俺は”
結局、
理由は”俺の傍に控えることで何かあれば直ぐに対応できるから”
だそうだが……こんな事があって、
本当に
――目前の真面目を絵に描いた様な男、
無理をする時にはするが、休める時には休む……
メリハリをつけないと緊急時に力を発揮できないと承知しているからだ。
だが
――まぁな……そういう所をフォローしてやるのが俺の仕事でもある
俺は今回の件は俺のミスでもあると、そう言う意味で結構ヘコんでいたのだ。
――
「それよりも……
俺は気持ちを切り替え、そう聞く。
「はい」
俺の言葉を受けて軽く頭を下げた
そのまま彼の後ろに控えていた三人の女達に視線を送って促した。
「はい、
答えたのは三人の女の中で一番年長の落ち着いた雰囲気の
「
即座に、三人の中で一番小柄でハキハキとした口調の
「いいえ、
そして三人の中で一番背が高く、透ける赤毛の髪をした
「貴女達、御前ですよ、ここは筆頭である私の意見に従うのが……」
「はぁ?
「信じられないのは
三人の娘達は三者三様……
意見を言い合って譲らず騒ぎ出す。
「いや……おいおい」
意見を聞いたのは俺だが……
「御前であるぞ”
――!!
だがその騒々しさは
――おお流石だ!
「申し訳ありません
「いや俺には文句がある!!てか、怖いな!別にそこまでは必要ないだろ」
――そうだ……
俺が
「流石は
――いやいや……こんなことで死刑執行する方が”蟻の杯”ほども無い器だろうが?
そして、もう説明も必要ないだろうが……
この三人の女達は、我が
「……」
我が
機知に富み、行動力に優れ、人心掌握に精通した
時に温和に時に非情に……
工作任務から外交の下準備までそつなく
故に自らの身辺警護も、趣味と実益を兼ねた存在として妙齢、美貌の女ばかりで固めていた。
彼女らは
「……」
――で、俺がその”
「我が軍と
この
「まぁな……
そして永年の歴史から蓄えられた豊富な資金と強固な独立軍……
”
「
俺はそう答えながら側近の顔を見る。
「
側近、
最強国
百戦錬磨の”魔人”
「”
「どうだろうなぁ……とはいえ、あの地域をなんとか
俺は
「……」
そして
「で、
だからこそ
そして……
場合によっては”その美女達の身を
”
郷に入っては郷に従う……いや、類は友を呼ぶか?
相手に親近感を持たせる、王同士の交渉にはそういう小細工も必要だ。
「……」
俺の視線を受け、三人の女達は全て承知しているとばかりにスッと頭を下げた。
――
彼女たちは元々は様々な経歴を持つ女の集まりだ。
没落した武家の娘、破産した商家の娘、難民、夜盗、そして遊女……
今回俺に同行する三人は、俺の護衛及びその後の各種任務を負った女達だ。
――そう、場合によっては”その美女達の身を
”
こう言う”絡め手”の任務には持って来いの集団だろう。
――
「成る程……では」
コンコン!
俺の意向を察し、
部屋の扉がノックされ、次いで小さく頼りなげな声が響く。
「あの……重要会議中に申し訳ありません、その……領王閣下にお目通りしたいという方が……」
――”領王閣下”
それは
そっと扉が開き、怖ず怖ずと顔を出した侍従は案の定……
――
前
「あの……」
恐縮する
「
「す、すみません!けれど……」
「
縮こまる
主君の手前、クソ真面目故の言動だろうし、口調こそ厳しいが決して怒りにまかせた言葉でも無い。
「い、いえ、領王閣下……
「うっ!コホン!コホッ!」
俺へのフォローのつもりだったのだろうが、
「は、ははは……
俺は面白いネタを仕入れたとばかりに笑って目の前の仮病男を指さしていた。
「さ、
「はいはい、まぁ見習得の
「さ、
抗議する男を余所に俺は楽しくてしょうが無い。
「う……で、た、
耳を真っ赤にした
「はい、それが名は名乗って頂けずに……ただ」
「名を名乗らぬ不審者を通したのか!」
一転、再び険しくなる
「いえ、身元はハッキリとしています、ですが、あの……大丈夫な方なのですが、その……」
何故か先程の
「
凄む
「で、なんだって?名を名乗りたくないが俺の周知の人物ってか」
「はい……名では無くて……こう……伝えてほしいと……」
――なんだ?これ以上面白い展開があるのか?
俺は焦った
「わかった、会おう!で、なんて言ってたんだ?」
「はい、あ、あの……に……」
「に?」
――なんだ?そこまで言いにくいことなの……
「う……あ……さ、”
「へ?は?えぇっ!!」
意外な方向から放たれた攻撃に驚きで素っ頓狂な声を上げる俺!
そして極限まで顔を真っ赤に染めた
「……さ、
「……」
「……」
「……」
流石に呆れる
すっかりと静まりかえるその場。
そこに居合わせた者達、特に女達の俺に向ける視線が非常に痛い。
「いや!いやいや!!知らないからっ!俺、そんな奇妙な奴隷!?知らないからっ!!」
主座から立ち上がって必死に弁明する俺は、衆人からの相変わらずな痛い視線に晒されていたのだった。
第一話「始動」END
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます