第105話「通算成績」後編(改訂版)
第六十五話「通算成績」後編
「……綺麗事?」
それを臆すること無く見据える男は、そのまま俺の言葉をなぞって返す。
「一々お前は綺麗事ばかりで、クソ真面目で正直面倒臭いんだよ!俺のやり方に文句があるならそう言って恨み事の一つくらい……」
「私……俺は謀叛人だ、それを行動で示したのだ。かくなる上は速やかに処断を……」
――ちっ!
「ばーかっ!クソ真面目くん!カチコチ頭ぁ!」
ブォン!
俺は愛刀を振り上げては挑発し、目前の男に罵詈雑言を浴びせていた。
「ぬっ!」
これには流石に眉を
「謀叛人なんだろ?俺に謀叛を起こしたんだろ?なら最後まで抵抗してみろよ、
――酷い仕打ちだ……
折れた刀を投げ与え、捕虜にかかって来いと言い放つ。
場合によっては無抵抗の相手を責めるより質が悪い。
これこそが謀叛人に相応しい罰だと、戦士としての真っ当な死さえ与えない裁きといえる俺の行動に、後ろの三人はどう思っているだろうか?
「…………しょう……ち」
後方の三人娘がどう感じているかはともかく、目前の
ガチャ!
目の前に転がる無惨な愛刀を拾い上げ、立ち上がって構えた。
「先生っ!それはあまりにも……はっ!ゆ、
案の定、俺の所業に堪りかねた
「いざっ!」
役にも立ちそうもない”
「……」
――理不尽が窮まっていても、あくまで俺の裁きに殉じるか……
「そらよっ!!」
俺は容赦無く一気に踏み込み、
シュオン!
「くっ!」
そして
見苦しくも無駄な抵抗をして、律儀にも応えてみせる!
ガキィィィーーン!!
激しい火花が飛び散り、俺の手の中にある刀の柄から伝わる……
――本日”二度目”という衝撃!!
俺の振り下ろした切っ先は
「……ふん」
――刀という物は……以下略
「なっ!?」
これには流石の
「ちっ、仕方無いなぁ……」
ガラァァン!
俺は
「気にくわないんだよ、
俺の酷い挑発に
「くっ……なにが」
堪りかねたかのように下を向いたかと思うと、その口がゆっくりと開く。
「はぁ?聞こえないって、クソ真面目くん」
ガラァァン!
そして男の手から折れた刀が落ち、その男はバッと勢いよく顔を上げる!
「貴方は
「…………」
――は、はは、釣れた!……
俺は内心でガッツポーズをする。
「はぁ?そうか、犬に失礼だったか?クソ真面目くん」
そして心中を表面には出さず、蔑んだ態度を演じ続ける。
「なっ!貴方は……貴方という人はどういう……」
――
「俺は
俺は思わず口元が緩むのを必死で抑えつつ、ガキの口喧嘩を続行する。
「く……だ、大体……私はお
「そうだっけ?忘れたなぁ」
「都合の悪いことはそうやって……
「過去に
いつの間にか俺と
「あ、あの……えっと?これって」
「……」
「……くっ……
「もういいでしょう……そろそろ」
そして観念した目でそう訴えるが、俺は……
「不満があるんだろうが?なら、やるか?」
俺はその先を、決して言葉にさせない。
「…………やる?」
意味が解らないといった顔をする
「……」
俺は頷いて、握った拳を自慢げに掲げ、それから相手の鼻先に合わせた。
――いっせぇえのぉぉっ!!
ガゴォォ!
「ぐはっ!」
そして殴り飛ばすっ!
――っ!?
これには流石に三人娘も全員、口をポカンと開けて固まっていた。
「ぐっ……うぅ、
片膝を着いて鼻血を拭う
「なんだ?
俺はニヤリと笑って、拳を試合前のボクサーの様にシュッシュッと何度か空に放つ。
「…………あくまで、あくまで貴方は……」
俯き気味にボソボソと呟く鼻血男に、俺は不真面目な態度で耳に手を宛てて挑発をする。
「はぁ?だから聞こえないってクソまじ……」
ガコォォ!
「ぐはっ!」
だが言葉を全部終える前に、不意に
「せ、先生っ!?」
「さいかっ!」
これには流石に
「いいからっ!!」
――っ!!
それをいち早く制したのは
「っ!」
咄嗟に
――手を出すなと!
――出る幕では無いと!
「…………」
――
「て……
俺はそんな
「なんだ……主君に手を上げるのか?クソ真面目が取り柄の
そして、そんな理不尽を言ってのける。
「…………間違いだ」
呟く様な声で応えながら男は顔を上げた。
「はぁ?」
俺はぶっ飛ばされる前と同じ
「だから
「戦績は?」
聞きながら俺も、鼻血を拭っていた拳を胸の前に構える。
「”ちょっとばかし”でなく、私の圧勝だったはず!!」
そして再会してから
第六十五話「通算成績」後編 END
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