第106話「情の深い独裁者」前編(改訂版)
↓最嘉と壱と真琴、スリーショットです↓
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第六十六話「情の深い独裁者」前編
「
ガツッ!
「ぐはっ!って……毎回毎回毎回、俺にはなっ!!ちゃんとした理由があるんだよっ!!」
ドカッ!
「がはっ!く……四年前、
ガキィッ!
「そ、それがどうした!?その方が効率が良かったんだよっ!」
ドカァッ!
――俺と
「ま、
「で、ですがっ!」
「……だいじょうぶ……あれ、は……ただの喧嘩だから」
「っ!?」
なおも食い下がる
――
――そうだ。これは喧嘩……
俺と
ドカッ!
「がはっ!」
――とは言っても、勿論お互いに手加減など微塵も無い!
ガツッ!
「ぐはっ!」
ドカッ!
「ぐぅっ!」
――だが、その殴り合いは奇妙なことに……
「効率?あの後、
ガシィィ!
「ぐっ……は……そ、それも計算の内だ!俺のやることには
バキィィッ!
永遠に続くかとさえ思われる殴り合いと口喧嘩。
「で、ですが!このままでは!」
「……」
だが、輝く
「…………」
その美しい”魔眼”が厳しい視線を向けるのは、
「あの?
バキィィッ!
「っ!?」
ドカァァ!
ガスゥゥ!
「…………」
そして……確かにその殴り合いは
お互いが容赦無く拳をぶつけ合ってはいるが、攻撃はあくまで顔面と腹部に集中し、急所などを狙うことは全くない。
「では、三年前っ!夕食の盛り付けが多い皿をジャンケンで決めようとした時、
「うっ!……あれにもちゃんとした理由が……」
会得した体術や格闘術をお互い一切使わない只の殴り合い。
「無いでしょうっ!?ジャンケンに理由なんて!」
バキィィッ!
「ぐっ……てか……お前は……三年も前の夕飯のこと根に持ってんじゃねぇっ!!」
ドカァァ!!
「ぐはぁっ!」
殴り合うのも何故か交互。
必ず交互に、しかも相手の拳撃を
「あの……これって……?」
荒事に疎い少女でも流石に気付く不自然さと、続けるごとに低レベルになる口論の内容に、
「だから喧嘩よ……真剣勝負のね」
「……」
――暗黙の了解が存在する喧嘩
阿吽の呼吸で、お互いがまるでルールに沿っているかの様な殴り合い。
しかしそうは言っても……
バキィィッ!
ガスゥゥ!!
正面切って殴り合っているのだから、そのダメージはお互いに甚大だ。
「はぁはぁはぁはぁ……」
「くっ……はぁはぁはぁ……」
二人の男の無惨に腫れ上がった血塗れの顔。
握った拳を構えたまま粗い呼吸を繰り返す男達はもうボロボロだ。
「さ、流石に、このままでは……」
「もうすぐ……終わるわ」
心配で涙目になった
「え?」
そして……その言葉から間を置かず、
「…………」
「はぁはぁ……わ、解っていたのです……四年前の盗賊退治……直前に、追い込む予定だった廃村に流入した難民が居るという噂レベルの情報が……貴方はそれで、
「……」
ボロボロになった腹心の部下が話す言葉を聞きながら、拳を握ったまま無言で立つ俺。
目前で
「
「
闘争心がすっかり消えた男の呟きを受け、
「……」
だが、聞こえて来る穏やかな声から多分……もう
「
「…………」
――俺には懐かしい
だが……
激しい殴り合いと口論から一転、しんみりとした口調に変わった
「……」
「……」
「……」
――すっかり静まりかえる広間で……
「
この瞬間、
衆人に対し、
「
――ガクン
そして男はそのまま……床に膝を落とした。
――
「い、
それまでなんとか感情を抑え静観していた
「……」
「こ、こんな……こんな結末……」
その言葉が完結する事の意味を知るが故に、
諦めと悲しみで誰もが表情を深く沈ませていた。
――そうかよ……
「……」
――どうあっても”死ぬ”のか
この男の憧憬に値するらしい
「……」
ガギィィン!
丁度、足元に転がっていた愛刀の残骸を踏みつけた!
ヒュオン、ヒュオン……
鍔を起点にしたシーソーの様な動き、その反動で舞い上がった”
「……幕です
「
既に心中を隠す術無く悲痛な声を上げる
――パシィ!
「…………」
とっくに覚悟を決めたろう、
「……」
ヒュォッ!
そして俺は感情を深く沈めた無機質な
第六十六話「情の深い独裁者」前編 END
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