第98話「気怠げ(アンニュイ)な午後の病室と企む女」後編(改訂版)
第五十八話「
――
女性としては高めの身長と
薄く
終日
俺の所領である”
大国”
一つの選択ミス、至らぬ判断で国が滅び領民は生活基盤……ヘタをすると命を失う。
その重責から逃れたいが為に彼女の父や兄達は優柔不断、日和見主義を貫いていた。
それは俺に言わせれば”領主として自身が生まれ持った運命から逃げ出しただけ”だ。
――だから……
――”一番能力のある者が責任を持つ、それだけよ”
俺の興味本位な質問にも、
家中の誰もが”
思えば……
盟主国である
義理の無い
危険極まりない俺の暗殺指令や交渉を指示されても……
そして、今回の様に
彼女は黙々と従ってきた。
――全ては……故国”
いいや、他の誰よりも”領主”を全うしているクソ真面目な女だ。
俺はそれらを
終始
誰よりも……そう、実は俺が知る誰よりも真面目なこの女を、俺はあの”
――”
「終わりのはずだったのよ……力及ばずこの身は
「……」
「でも、生き残ってしまった以上は……責任を持た無ければならないのよ」
「……」
――”
俺は彼女の
そしてそれが彼女の”矜恃”というなら……
この先の困難、十中八九起こるであろう命を賭した骨肉の争いは、部外者の俺がとやかく言うことでは無いだろう。
”
だからこそ、今日までより一層の理不尽に耐えてきたのだろう。
しかし今回、
普段の
「
「同情はいいわ、私は失敗したのだから……戦国の世では敗者が滅びるのは当然でしょう」
「……」
「強国に従う事しかできない弱小国は選択肢を誤れば即滅亡……」
「……」
そうだ、それに関しては同じく国を代表する者として俺は……何も言えない。
「だから……新たな主に従って
「…………そうか残念だな……って、は?」
俺はしんみりと頷きかけてから、間抜け顔になっていた。
「…………あるじ?……新たな?」
てっきり俺は
生き残りと滅亡の狭間で、これから
だが実際は……その言葉にポカンと間抜けに口を開ける。
「だからぁ……この状況下でもしつこく生き延びていて、
「……………………ある」
俺は……もう、不承不承にそう応える。
「そう、良かった……で、その国の王はワタシと
「…………」
――断れません
「終わっていたものを無理矢理、自身のロマンチシズムでお節介にも延命させておいて、後は知らないって言えるかしら?」
「…………」
――言えません
「そうそう、あとね……一応腐れ縁もあって、命懸けで一騎打ちしてくれてまで助けた女を見捨てるような男だと……」
「もういい……勘弁してくれ」
真綿で首を絞め続けられ、
「そう?でも何をかしら?……この情勢下でしつこく生き延び、
――この女は……やっぱりこの
「わかった……解ったからもう勘弁してくれ、
「……」
諦めて相手の要求を丸呑みする俺だが、目前の女の顔はまだ足りなさそうだった。
――鬼めっ!この
「……も、勿論、自治権は今まで通り保証するし、領主は元より家臣団もそのままで良い……う……うぐぐ」
俺はこの
故に、俺は……信じられないほど大幅に譲歩していた。
「……ふふ、浪花節ね、サイカくん」
――どの口がっ!!
「……ふふ」
「……」
――ちっ……まぁ良いけどな
直後、思わず
実は先程まで終始……普段の
迂闊にも俺はそう思ってしまったのだった。
「ありがとうサイカくん……そうね、だったらケジメは必要ね……」
この顛末を
「お、おい……」
薄い入院着を一枚
スラリと背が高く、豊かな胸の膨らみと見事に括れた腰、そして形の良いヒップライン……
こうして改めて見る
「
思わずドキリとしてしまった俺だが、直ぐにそれは必要ないと彼女の行動を留めようとするが……
――スッ
女はそのままその場に膝をつき
「……」
長い髪を編んで
「
「……」
「……”純潔”を捧げます」
「………………は?……て、おいおい、忠誠はともかく”純潔”って……おい?」
俺は面食らった。
いや、食らうだろ?
この状況、この雰囲気でボケるか?
「サイカくん、”
「…………」
――やられた!
――この……この……女狐め!
小国領”
――この女……俺の良心を……この……
「あ、あと、ワタシ怪我で武将としては暫く役に立たないから、それまではこの
「なんでそうなるっ!」
「だって、
「っ!?」
――ああ、そう言った確かに……っ!?
そ、そうか……つまり俺は
――いやいや、あり得ないって!俺はそんな人質のような人道に
「……」
俺の頭に色々と過去にしでかしてきた事が浮んでいた。
――いいやっ!”
「ふふ、現状は
「…………」
「……ふふ」
思わず見つめ合う俺達。
だが勿論、色気のあるものとは程遠い。
「……
「ええ、
「う……」
「ふつつか者ですが、可愛がってあげてね、サイカくん」
「うわぁぁぁっ!!」
俺は叫んだ!おうさ!叫ばいでかっ!この理不尽にっ!!
「ごめんね、サイカくんに意中の女性が既に居るのは知っているけど、
「う……う……」
一転、もの凄く殊勝に詫びる女は……これも彼女の”本心”なんだろう。
――ときどき可愛いのは……反則だと思う
「保証……俺が
考えてみれば
これは彼女にとっても苦渋の決断と言うことか?
なら俺は尚更この話を呑むわけにはいかない。
「
目前の女を実は真面目な女だと認識する俺は、真剣に悩んだ末に答えようと……
「あ、あと意外かもだけど、ワタシ”初モノ”なのよ、ふふふ、楽しみが増して良かったわねサイカくん」
「……」
「ふふっ」
「おま……ぜ、ぜぇっーーたい!!確信犯だろぉぉーー!!」
”
やっぱり俺には苦手な女だった。
第五十八話「
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