第98話「気怠げ(アンニュイ)な午後の病室と企む女」前編(改訂版)
第五十八話「
「
「……」
「いえ、なんでもないです!」
上半身裸になった俺の背後に回り、手際よく傷の手当てを施してくれている女性に睨まれた俺は、要求を言葉途中で呑み込んで大人しく従う。
――いやいや、だってな、涙目なんだぜ?これってある意味最強だよなぁ……
どれだけ口うるさく言われても一向に留意しない俺に、医者であるお団子
「…………」
――
丸く愛嬌のある瞳とおっとりした口元が特徴の、長い髪を後頭部で団子に
つまり、情報収集の
そんな
それも”とびきり”凄腕の外科医である。
「た、確かに、命の危険は無いです……けど……こ、こんな重傷で仕事なんて……」
「いや……あれだ……あの……ごめんなさい」
因みに、”酒樽”と”組紐”は倉庫から自身で調達した。
それは、
――と、言っても……かなり怪しまれていたのだが……
「お、応急処置としては間違っていませんが……て、適当すぎま……す」
「……」
全く
そうして固定しなければ
「ええと……ほっとけば治るかなぁ?とか」
ギュッ!
「いてっ!」
恐る恐ると巫山戯た返答をする俺に、
「と、
――ちっ、三人ともグルかよ……
「お。王さまっ!」
「うっ!はい反省してますっ!」
と、まぁ……こういう感じで、普段は”おっとり”さんだが俺がこんな無謀を行うと、彼女の機嫌は
とはいえ、
だから、彼女が涙目になってまで抗議するのは今回の様な場合事……
俺が結構やりがちな、こう言った無理を継続し続ける事による病状の悪化に結びつくような行為であった。
「……」
「……」
暫く黙々と治療に専念する
「……」
「……」
因みに
――目端の利くヤツだ、ちっ!忌忌しい
「……」
「……せ、
少しばかりして、彼女の怒りが治まって来るだろう頃合いをみて、俺は尋ねた。
「はい、い、
「そうか……」
――なるほど、情報収集を兼ねた行路の安全確保か……慎重な
俺は
「……」
「……」
一方的に受け手な患者の手持ち無沙汰な時間……
「…………」
――そういえば、
――アイツも今回、
俺はこの間に、つい先程まで振り返っていた案件の二件目、この時点で一応の解決をしている案件のうち残る一件を状況整理の意味も兼ね、改めて心中で振り返ってみることにした。
――それは”近代国家世界”で
―
「
そう報告された俺は……
結局、近代国家世界での超
「…………」
――
俺は”面倒くさい事じゃなけりゃ良いが”と心配しながらも、
「…………」
この世界での常識……
”近代国家”側での傷は、一度”戦国世界”側に戻ると綺麗さっぱり無くなる。
それどころか”死さえもリセットされるのだが、逆に”戦国世界”での傷や死は近代国家世界にも適用されてしまう。
だが、
で、俺は当然、そのお団子女子を称えたのだが……
「い、いえ……わ、私は最善を尽くした……だけですので……」
とか、当の本人は少し照れくさそうに頬を赤らめ”はにかんで”いたが、若いのに実際ホントに大した名医だ。
「…………っ!」
とか、そんなことを考えて居る間にも、俺は目当てである”
「…………」
――ええい、考えていても仕方が無いっ!
そうだ、幾ら
――コンコン……
ガチャッ!
「
俺はノックの後、思いきってドアを開け病室の中に……
「サイカくん遅いわよっ!
「…………」
――
「……えと……あのだな……お前何言ってんの?」
彼女はそんな、ドン引きな俺の問いかけは一切気にも留めないで、
「
溜息を一つ
――ほんと、マイペースだな……この”
大国、
そして、
このままでは”
その焦りが領主である
あと……
と、俺は
勝手な話だ。今まで全て国事の厄介ごとを
兎に角、そう言った理由で小国領、
「お前の”
ベッドに横になって上半身のみ起こした女、その横に置いたパイプ椅子に腰掛けた俺は大いに不服だったから、
「終わりのつもりだったのよ……」
そんな俺のあからさまな態度に、てっきり軽口が返ってくると思っていた俺。
「……」
だが女の言葉と表情は、予想外な
いつもは後ろで束ねて垂らした長い黒髪を編み込んで
「おわ……り?」
俺は驚きで一呼吸遅れて返す。
「そうよ、やるだけのことは十分やったと自負しているから、
「……」
そこで俺は心当たりを思い出す。
――”ワタシが代表を続ける理由?
――”一番能力のある者が責任を持つ、それだけよ”
在る時、戦場で俺がなんと言うこと無く質問した時の彼女の答えだ。
だが、女だてらに武器を持ち、先頭きって戦う彼女を、
第五十八話「
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