第97話「破格の”利”」後編(改訂版)
第五十七話「破格の”利”」後編
「余裕だな、
「といっても、お前のような”信頼に値せん男は脅して我らの役に立つように利用する”だけだがな!」
いやらしい笑みを浮かべながら、剣を向けて勝ち誇る
「
「なに?」
窮地のはずの
「いや何でも無い。それより、”信頼に値せん男は脅して”……だったか?それは俺も同意見だ。但し……」
――ザザザッ!
刃を突きつけていた!
「なっ!?」
「こ、これは……どういう……」
慌てふためく男達。
「ふむ、別段驚くべき事ではないだろう?お
「お主達は、”あの御方”にお仕えするには価値が無さ過ぎる……しかしだ、間抜けなお主達が決起してくれて感謝もしている」
「なにっ!?」
「
状況を、歩み寄る
「解らぬか?
「ぬ……このっ……恥知らずが」
「か、
見苦しい恨み事を叫びながらも、見る間に縛り上げられる六人の男達。
「…………」
それを尻目に、
「あ……あぅ……命だけは……幼い
傍らに立つ
「か、
ガッ!
「うっ!」
それを振り払い、
「死する覚悟も持たぬ者が戦場に立つのでは無い!
「……うっ……うぅ」
蹲り、見上げる女に
「
「う……うぅ……お願いです……かんじゅうろ……う……さま……」
だが
ただ弟の命を懇願することに必死な
「…………古今東西、反逆罪は例外なく死罪である。だが俺には裁定権は無い、全ては我が主君、
それが意味を成さないと理解した
「か……
後背で泣き喚き、取り押さえられて連れ行かれる
――
「
「…………」
部下の問いかけに
「反乱者共に非道な脅しをかけたのも、今回の対応にご自身が前面に出られたのも……その……なんというか、”利”を追求する
部下の言葉は後半ごにょごにょと要領を得なくなるが……
「ふむ、”計算高い男”と揶揄される、損得勘定しか興味の無い俺のような俗物が何故に主君の矢面に立って悪役を引き受けるか疑問だというのだろう?」
そして部下が言いにくい事をハッキリと口にする。
「う……あの……はい」
申し訳なさそうに頷く
「嫌われたり憎まれたりは部下の役目だろう。頂点たる御方は民にも部下にも慕われている方が何かと良い」
「で、ですから……その……その考え方が……」
「ふむ、俺らしくないと?」
「……」
”計算高い人物”と噂高い
「…………」
そして
「
「それは……我ら下級兵士達も聞き及んでおります」
多分、それは気の迷いだったのだろう。
「ふむ、つまりな……」
どこかで……生涯に一度くらいは……
”
「……っ!?」
その時、兵士が見たのは……
壮年の
「焦がれたのだ」
「は?……え……と?」
腹黒い代名詞の様な男の、純粋になにかを渇望して止まない、憧れに目一杯、手を伸ばす少年のような瞳に……兵士はつい対応を見失う。
「この戦国世界に男子として生を受けたなら誰もが一度は夢を見、そして諦める壮大な浪漫……俺の様に汚れ、年を取っても”それ”を思い起こさせる
「……
「
「ん?」
兵士はそんな台詞を口にして、真っ直ぐに
「その時に!その場所で!居並ぶ重臣の方々に放たれた
そして誇らしげに、まるで自分の言葉のように胸を張る。
「んん……そうだな……」
だが、素直に瞳をキラキラとさせる若き兵士に
それは……
諸将の心を痺れさせるに足る
”
それでも今日の
「あの御方が本当は何を求めているのか……俺如きにはそれが計り知れん」
「
――それでも
「ふふ……だがな、お仕えすることで、そんな計り知れん”とびきり”のお零れを頂けるやもしれん。
少しだけ照れくさくなったのだろうか?
――
―
「おい、
「ん、ああ?
「……」
少しばかり”ぼー”としていた俺に、
「ホントに大丈夫かお前?やっぱ怪我が……子供じゃ無いんだから強がってどうする」
「心配性な奴だな、”戦での怪我”なんてものはな、気合いなんだよ!解るか?気合い!医者なんて大体は大層に診断して自分の仕事を作るのが目的でだな……」
図星ではあったのだが、それ故に俺は偽眼鏡くんの言い方がなんとなく癪に触って、苦しい言い訳をするが……
実際の俺の体は苦痛による脂汗が止まらない状況だった。
「嘘くさいな……」
「ホントだって」
「じゃ、同じ事をその
「は?」
俺は不毛なやり取りを続けていた相手、
「お、王様……、二度と無茶はしないと……な、何度も何度も王様は……ひ、酷いです……」
初めてそこに誰か居ることに気がついた。
「うぅ……」
いつの間にか俺の背後には、
――マジかよ……これで気配に気づけないなんて……重傷だな……
其の事実、そしてこの状況……
些細な抵抗を諦めた俺は素直に頭を下げたのだった。
「ごめんなさい」
第五十七話「破格の”利”」後編 END
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