第97話「破格の”利”」前編(改訂版)
第五十七話「破格の”利”」前編
「くれぐれも気を付けられよ
「解っております、計算高く油断の出来ぬ男だと……父も良く
「交渉事は弱みを見せた方の負け、あのような男相手では尚更の事。心して参られよ
「……」
左右から付き
自分が
「
「
「……」
左右からステレオで垂れ流される雑音に眉間を
――そうだというのなら、何故にそのような男と交渉をするのか?
――そこまで嫌っておきながら、何故に侵略者”
答えは……それだけあの男が”有能”だと言うこと。
この戦も、今後も、
それは、今の今まで政治や戦に全く関わって来なかった、国政などに疎い
――だったら……陰口などくだらない事を言わなければ良いのに……
そう思いつつも、そんなことは口に出来るはずも無く、お飾りの
「……」
それはこの大役への緊張と同時に、少しでもこの……”耳障りな”声を聞く時間を減らすためでもあった。
「お待ちしておりました。ささ、
――ここは
十年以上前に使われなくなって廃棄された
――ギィィッ!
先に到着していたのだろう
「おぉ、これはこれは……前にお目にかかった時は何年前でしたか?」
そこには――
天井も何も無い……
青空がすっかり見える開放的な廃墟。
ギリギリ崩れきっていない四方に残る石壁と、意外にしっかり残った錆びた鉄扉の向こうで大きめの石台の上に腰掛ける
――いや、そんな事よりっ!
「くっ!どういうことです、
「どう?約定通り護衛は十人未満、場所はこの廃砦、問題ないはずであるが?」
入るなり驚愕に震えた声を上げる
「そ……それの……それの
「ふむ、
「っ!?」
「ふ、
言葉にならない
「そうそう、正確には六年ほど前か、
「う……うぅ、ひっく……」
そこには涙顔の幼児。
「や、やめて!」
泣きはらした子供の顔を見て
「ひ、卑怯なっ!貴様、武人としての誇りは無いのかっ!」
「
顔面蒼白、声にならない
当の
「俺はなぁ……残念ながら我が主君ほどに武勇にも戦術にも精通しておらぬ、故に得意な分野で仕える御方に報いるだけ、それも武人とは言えぬか?」
「詭弁を!約定破りの痴れ者がっ!」
腰の刀に手をかけて、
「約定破り?……ふむ、お
だが、
「っ!?……ま、まさか!?」
そして、
「ふん、我らは貴様の如き変節漢に
すっかり青い顔になった
「
そして更に、別の男が余裕の笑みを浮かべながら右手をサッと挙げる。
――ザッザッ!
――ザザッ!
廃砦の崩れかけた壁の隙間から……一人、二人……五人、十人……
武装した兵士達がわらわらと姿を見せ、殺気立った雰囲気で抜き身の剣を手に
その数……三十人以上。
「き、聞いてないわ……私……聞いてません」
ガクガクと膝を震わせながら、味方であるはずの男達に
「ふん、
「で、でも……これでは約定が!……いえ、こんな……
「大事の前の小事ですよ、
「なっ!……話がっ!それでは話が違いま……」
バシッ!
「っ!」
取り
「出過ぎた口を効くな、この素人がっ!!お前は大人しくお飾りの神輿に乗っておれば良い、
「うっ……あ、あぁぁ……しょ、
本来自身を護衛するはずの男達の足元で、崩れ落ちて嗚咽するしか出来ない女。
――
そして、その光景を一部始終見届けた
「ふむ……これでは……折角、悪役を買って出た俺の立場が無いな……ふむ」
残念そうに
第五十七話「破格の”利”」前編 END
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