第93話「十字傷の魔人」後編(改訂版)
第五十三話「十字傷の魔人」後編
ワァァァァッーー!!
ワァァァァッーー!!
「…………」
――大局は決した……だが、
俺は戦場只中にて――
削られ、既に三分の二以上を失った敵軍を眺めながらも、相手の士気が殆ど下がらず、また攻勢も弛めない戦いぶりにある決断を迫られていた。
「
――シャラン!
腰の”
「
カッ、カッ……と、馬を悠然と前に進め、独りの十文字槍を掲げた騎馬武者が呟きながら姿を現した。
「……」
馬上よりギラリと陽光を反射して高々と掲げられた十字型刃の穂先。
槍先に十の文字を形取った左右対称の禍々しい刃が、滴る血をそのままに尋常で無い剣気を
「で在れば、この
ザシッ!
そして俺の直ぐ目前に……
三メートルほどの鼻先に停止し、馬上にて堂々と仁王立つ。
「”冥府魔道”とか”
俺は下げた刀をそのままに、目前の男……
顔面に斜め傷、更に逆から斜め傷……
所持する槍と同様の十字傷を
わぁぁぁぁっーー!!
ギャリィィーーン!
ガキィィィーーン!
わぁぁぁぁっーー!!
わぁぁぁぁっーー!!
勝敗は決しつつあるといっても未だ混戦の戦場只中にて――
「……」
「……」
俺とその十字傷の男を囲む一帯は嘘のように静寂が支配する。
「……」
――いや……俺がそう感じるほど、この男の存在感は……
「ふん、抜かせ小僧が……だが」
十字傷の男は不敵に笑いながらも俺を見る眼光は
「見事だ!!この”
そうして男は掲げた十文字槍の穂先をグイと俺の方へと向けた。
「……」
――やっぱ”
スチャ!
俺は無言のままで、下げていた刀を引き上げて刃を水平に、前面に突き出して構える。
「俺は、鈴木
そして俺の
”
「人を喰った
「それはどうも、けどな……俺の戦術を”冥府魔道”とご大層に比喩して頂いて光栄の至りだが、キッカリ返上させて貰う。大体、俺には”
――”神如き
俺はそう軽口を返しながらもこの相手を理解していた。
――大局は決した!
それ自体は間違いの無い事実。
しかし我が”迷宮封殺陣”にこれほど根深く取り込まれて尚も抗うこの戦法……
侵入した自軍が尽く内部で絡め取られ、殲滅され行く状況で尚、離脱せずに持ち堪え続けさせるこの敵総大将……
――それは指揮官の選択として正解だ
この状況を恐れ、下手に退くよりはこのまま継続する方が戦える。
この状況で攻勢を止めるとなると主力の殆どを壊滅させられた
――しかし……
圧倒的不利、いや敗北は変わらないだろう。
壊滅までの時間が僅かに延びるだけ。
だが……この男、この剣気……
「
「ああ……冥府魔……いや、”
「……」
「……」
一転、言葉を封印し、睨み合う俺と敵将、
戦国最強と名高い”
其の流れを汲む”
「……」
――未だ
それもこれも、この
「この戦の
十字傷の烈将、
「……」
――ああそうだ……正面から徹底的に圧倒的に打ち破る!
ある意味、日和見を決め込む
それがお互いの共通の帰結!
――だからこそ……完全に
「既に言葉は必要あるまい、”神如き鬼子”よ……参るぞっ!」
十字傷の男が吠え、十文字槍の穂先を突き出した!
――故に”一騎打ち”!!
「
俺は敵将、
「おおっ!!
ガキィィィーーン!!
その
新たな火花が猛々しくも輝いたのだった。
第五十三話「十字傷の魔人」後編 END
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