第93話「十字傷の魔人」前編(改訂版)
第五十三話「十字傷の魔人」前編
おおおおおぉぉぉぉっ!!!!
おおおおおぉぉぉぉっ!!!!
自軍優勢に勢いを増す
「崩れたぞっ!突入せよっ!」
ドドドドォォーー!!
しかし、勢いよく突入した
――シュオォーーン!
――シュオォーーン!
崩れる
ブウオォーーン!
バキィィッ!
「ぎゃっ!」
「がはっ!」
二メートルはあろう人型の影、見上げる高さのズングリムックリとした白銀の体躯。
人なら関節に当たる部分の隙間などからピコピコと
異形が蛇腹状の腕は大蛇のように
「”
その異形の頭部に赤く光る二つの円形のモノは人の双眼に似た役割を果たして不気味に光っていた。
「こ、これはまさか……
「うっ……」
「バケ……モノ……」
二体の
ワァァァァッーー!!
ワァァァァッーー!!
「なっ!?」
そこに後背、左右から蹴散らしたはずの
「ぎゃっ!」
「ぐはぁぁっ!」
敵中突破、分断どころか、
碌な抵抗も出来ずに殲滅されていった。
――
―
「
俺は誘い込まれ、今まさに壊滅の憂き目にある
開戦当初、同種の横長方形陣で激突した両軍。
お互いの前面で激しく押し合い、馬鹿正直な力比べを展開したわけだが……
愚直な戦法による対決は、兵力と士気に勝る
――実は”これ”は”
そして案の定、
――飛んで火に入る……なんとやら
俺は
”今回は”……敵の足止め用として
そして我が陣の只中に
で、この局面での”精鋭部隊”の存在とは……
今回用意した先遣隊二千の内訳は、
そして、
陣形は一見すると
それを五列、四段に並べた総兵力二千の”複合陣”だった。
疲労で士気が低く、”
それを補う為の編成として臨海の兵を導入した混成軍を編成した。
つまり、前面の
「我が軍を自軍と同様に”只一つの塊”と思い込んだ敵を、その”隙”にまんまと誘い込み、身動きできない密集状態で効率よく取り囲む……鈴木
俺の横で
「……」
――恐ろしい陣形、”迷宮封殺陣”ね……だが”これ”は
俺はその士官の言葉に皮肉っぽい笑みを返す。
ヒュルルルーー
「おっ!?」
とその時、戦場である
――合図、角度は西南か
「まぁな……けど、これは全体を把握したうえで、その都度的確な指示を出せる人物が居なければ機能しない。優れた総指揮官あっての陣形だからな」
俺の皮肉っぽい笑み、”迷宮封殺陣”の本来の姿は
俺は
「な、なるほど……あっ?」
ダッ!
そして、
――
―
戦場から少し離れた丘の上……
数人の護衛兵に護られ、馬上にて眼下で展開される自軍と
「……」
くせっ毛のショートカットに、そばかす顔の快活そうな少女の瞳には澄んだ叡智が見て取れる。
――それは彼女が”策士”たる
「中央やや左に新たに突入した
彼女の待機する小高い丘からなら戦場が一望でき、自軍が採る陣形、碁盤の目のように格子状に並んだ小隊が成す複合陣と、その路地に誘い込まれた迷い人の如き敵軍の数隊が手に取るように確認出来る。
少女は独りブツブツと呟き、少し思案したかと思うと……サッと右手を挙げる。
「移動中の
「は、はい、了解しました!」
少女に付き従う兵士の内、直ちに弓兵が
ヒュルルルーー
ピュロローー
種類の違う二本の
矢の種類と角度、それが
「これで……多分、
ふぅ、と軽く息を
可愛らしい口元には僅かに微笑みがあった。
「
それを見た部下の不思議そうな顔を余所に少女はボソリと呟く。
「鈴木……鈴原
”
「…………」
本人も未だ自覚は無いであろうが、既に恋い焦がれる少女の”
そして
第五十三話「十字傷の魔人」前編 END
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