第89話「走為上計」後編(改訂版)
第四十九話「
「確かに”
そうだ、
「それよりも俺が提案するのはもっと安全であり、
俺はこんな状況でさえ愉しそうに”
「……」
「……」
で、結果だが……
自信を持って放った俺の言葉を聞いた皆の反応は……視線は明らかに白けていた。
――うっ!
皆の顔を観察するに……
そんな新興宗教か通販番組のような眉唾モノの売り文句で誰が信じるかと!
そういう
――
「それは……その”
流石に周りの反応を考慮……したかどうかは解らないが、麗しの暗黒姫様は
「あ、ああ、大体そんな感じだ」
「……」
「……」
そして、そう答える俺にまたも周りは同様の反応を示す。
――
「…………いいわ」
「ひっ、姫様っ!!こんな怪しい勧誘に!」
「そうですっ!これは典型的な”
――おいおい、信用無いなぁ……てか、”
「ふふ、良いのよ……問題ないわ」
「ですがっ!」
俺を見て微笑する主に、それでも食い下がる右側に巨大な眼帯の女。
「
――おおーーいっ!
――なに”しれっと”俺を生物学的見地から貶めてくれてんのっ!?
「で、ですが……その、ならば、その胡散臭い”待避場所”とやらくらいは事前に確認を……」
――言いたい放題だな……
「そうだな、えっと
俺は
「う……はい」
突然指名され、
さっきまでは俺の採った防衛策に興味津々だった彼女も、俺の提示する逃亡先にはどうも懐疑的なようだ。
――これだけ実績を示しても……思った以上に信用無いな、”
――くっ……
俺は正直、ほんの少しだけ傷ついたが……そうも言っていられない。
「いや、
気を取り直してそう宣言する。
「……」
だが、
それでもイマイチ想像が及ばないのだろう、黙り込んでしまう。
「……」
――ま、まぁいい、これで最初に異論をぶつけてきた三人の内二人は論破?した
――後は……
俺は最初に異論を唱えてきた内の三人目……最後の一人に視線をやる。
「……で、最後にお前だ、
革製の、最早、仮面といえるくらいの大きな眼帯で右顔半分を覆った奇抜な風体。
しかし、露出した左半分から見える顔は細く涼しい瞳にキリリとした口元という、
”
改め、現在は
「ああ、その通りだ」
――さすが……”格”が抜きん出ているな
成る程と、改めて感じ入る。
俺が幼少の頃に伝え聞いた戦国名将の中でも尊敬する人物の一人、”軍神”、
「後にも先にも落ち度の欠片も無い、
「…………」
――
「
「それは……理屈が逆だ
「…………」
「落ち度があるか無いかなんて関係無い。
「ふん、
――!
その言い方に、俺では無く……
――
素人でも分かるほどの、ちょっとシャレにならない殺気が漏れ出ている。
静かにざわつく場……
俺がこの地に到着したばかりの時、
下手をするとあの時の、”
「言葉が過ぎますね……
すかさず、銀縁フレームの眼鏡をかけた美女が”
そして――
明らかに
レンズの奥の瞳で、主君の後ろにて物騒な殺気を放つ
――
先程の言をちょっとだけ訂正!
”
「ふふ……
そして……
比肩しうる存在が想像すら出来ない氷の如き美貌、
――
そうだった。忘れてはいけない。
この異質なる逸材達、棘を仕込んだ三輪の
「お、おう……だからこそ、それだから俺は行くべき場所だと、会うべき相手だと思っている」
そんな感じで、完全にペースを暗黒姫に握られた俺は、もうそろそろこの論争に終止符を打ちたいと考えていた。
「……なにを?……言っている?お前は……」
課程の説明をすっ飛ばした俺の結論に、眼帯の
「別に……至極真っ当な事を言ったまでだ。こんな場所で虜囚になるよりも、
――ならば
――”
「す、
――だろうな、呟いた
そうだ、俺は、俺達は……
その認識の共有だけ出来ればそれで良いだろう?
「ぬ……ぬう」
パンパカパーーン!!
紆余曲折の後、三人全員の論破終了、お疲れ様です!
「皆、解ってくれたか?それなら、結局行き先はだな……」
――まぁな、正直、納得には程遠いだろうが……
他に妙手が考えつかない面々と、”
「
俺の解答を最後まで聞かず、暗黒のお姫様はアッサリと頷いた。
「ひ、姫様!?」
「そうです、大切な
当然の反応とは言え、相変わらずなんて非道い言われようだ俺。
「ふふ、そうね、
――でもって、そこの”
――可愛らしく笑ってる場合ですか?フォロー、フォローしろよっ!!
「……」
ガタッ!
そんな中、
「状況は……承服いたしましょう。ですが、ここまで来て!ここまで皆で戦って来た成果をこうもあっさり覆す……全く未練無く”敗北”を認める意気地の無い男の言葉がどこまで信用に値するか?行き先を聞き出してから判断しても遅くは……」
――さすが
俺は自然と口元がニヤリと歪む感覚を感じていた。
流石だよ、本当に……とは言っても、勿論”褒め言葉”では無いけどな。
成果?皆で一生懸命頑張ってきた?
結果に対応できなければ”それら”は本当に無価値な徒労に成り果てる。
大局の前で勝ちだの負けだの……阿呆らしい。
――そんな”仲間ごっこ”や”自己満足”なんぞが戦の趨勢を左右するかよっ!
少々苛立った俺が……
「
これまでと同じように反論しようとした時だった。
「……」
「っ!?」
そっと、俺にだけ解るように視線を送った暗黒の姫は……静かに言葉を発する。
「そうね、”
「ふふ」
一切の不安の欠片さえも無かったのだった。
第四十九話「
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