第90話「実力と証」前編(改訂版)
第五十話「実力と証」前編
戦国世界最終日の深夜、日付が変わる寸前を狙って――
俺達が
北に”
”
――”
「
眼下に見渡せる
俺の右隣に
「そうか?
「それは……どうでしょうか?
今度は左隣で、細い銀縁フレームの眼鏡をかけたお堅い秘書といった趣のある中々の美人、
「まぁなぁ……とりあえず考えはある」
「まぁ」
「また、そんな風に簡単に……」
眼下の都市を見下ろしたままの俺の横顔を見ていた左の女は”ふふっ”と微笑み、右の少女は不満そうな顔で俺を睨む。
――
俺と
あの”
「鈴木……
――サッ!
俺は不満タラタラで棘のある言い方をする
「……あ、あれは?」
「……」
彼女たちが懸念するように、攻め込むには
残った一万近くの常備兵に強固な城壁と豊富な物資、周辺領土からの援軍。
――それに、それを率いるだろうはずの……
俺達はなんとか不意を突いてこの地まで逃れ来る事には成功していたが、兵力は仮に分散した分を全部合わせたとしても精々五千に満たない。
「あの……
「あれはな……」
駆け寄ってくる所属不明の騎馬が一騎。
俺の右隣から聞いてくる、くせっ毛でショートカットの少女、
「あれは、
「えっ?えぇぇぇっ!!」
初耳の
――思い返せば、この状況になる少し前……
俺は事前にある人物と交渉していた。
――今後、鍵を握るのは”アレ”との交渉だと、それなくしてはこの戦いは……と、
今回の戦の要だと、そう考えた俺は、”いの一番”にそれを進めたのだ。
――
―
「
その後、直ぐに司令室には向かわなかった俺は、”ある場所”に足を運んだのだ。
「
俺の前には、疑り深い視線を向けてくる若い男が独り。
――
「あぁ、そうか……
男が俺を怪しんだのも無理は無い。
会って直ぐに俺が発した”
それは家臣が主君を呼ぶには余りにも無礼……
「……」
男の、俺を値踏みするような視線の右側は微妙に不自然な光りを放っていた。
――義眼……か
良く出来てはいるが、その男の右目は造り物だろう。
そして間近で観察すると、義眼であろう右目の目尻には小さい傷もある。
「……断られるも何も、会見さえ適わず門前払いだったな」
義眼の男は取りあえず俺を会話する程度の価値はあると判断したのか、そう答えて”ヤレヤレ”と首を横に振る。
この義眼の男は……
東の大国”
「まぁな、
ひとつ付け加えておくが、”援軍の話”といっても、この男が
というかその逆、恐らくは
「そうか?関係性って二人は
――”
他人の事はあまり言えないが、この
「なら、
俺は答えつつ、最早建前は不要だと踏み込んでみる。
「そう……だな……解った……だがその前にひとつ……」
それを受けた義眼の男、
「……」
「……」
無言による駆け引き……否、見極め合いだ。
「俺は
ならば、ここは小細工は無用。
得るためには与える事を厭わず、胸襟を開いてこそ得られるものも在る。
俺は包み隠さずに答えた。
「
「噂に聞く”賢人”なら迂遠な説明は不要だろうな……
俺の意図を完全に理解した男は、自らも清々しいほどに胸の内を明かしてきた。
――
確か俺より二つほど年長で、初陣は十二歳……
ある特殊な戦法で目を見張る程の功績を重ね、僅か二年で最強国”
そして……
先々代王であり祖父である
「……」
子女でありながら、聡明さと高潔な人柄、そして”
その
幽閉同然に追いやられた現在も彼女は十九歳……
歴史の表舞台から消えるには若すぎるうえに、何よりも……勿体なさ過ぎる。
相手の言葉から俺は頭の中の情報を整理していたが、その間の空白にもこの男は一切差し出した手を引くことは無かった。
――
俺の心は、実際は決して一筋縄では行かない男だろうに、妙に実直な一面も見せる、この
「つまり、利害は一致しているってか?」
そして、差し出された相手の右手をガシリと掴んで俺は笑う。
「ああそうだ、
俺の言葉を受け、対面の男もまた親しげに、それでいて
第五十話「実力と証」前編 END
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