第85話「狂人の交渉場(テリトリー)壱」後編(改訂版)
第四十五話 「狂人の
「…………特典」
不敵な俺の視線を、そのまま微塵も揺らがない堂々たる紅蓮の瞳で迎え撃った
「……」
焼き尽くされるような敵意の視線を受けつつ俺は先ほど同様に、後ろに控える
「は、はい!……それは、け、計画書です……その……”
「……!」
「そ、それは……つまり……我が
「ちょっと違うな、奪い取るのはあくまで”
――そうだ
俺は……
当時領主になったばかりの俺が最初に着手した戦略のひとつ……
責任者に
だから、先ほどの様に
本来ならこんな序盤で切るべきカードでは無いし、ましてやそれを他国に売るなど……
この策のために仕込んできた人材、資金、労力を考えると、
「”
その要衝の都市と
この二つを以てしてなら、今回の交渉は対価的に無謀というわけでは無い。
「そうか、なら……」
――スッ
俺が頷いて、右手を差し出した瞬間だった……
「っ?」
不意に対面の覇王姫が立ち上がっていた。
「言ったでしょう?それが”真実”ならと……
そして意地の悪い笑みを浮かべて
「……」
――そう来たか……なるほど、先ほどまでの意趣返し……ってだけじゃないな
「疑り深いなぁ、人格疑われるぞ」
――”人格”が疑われるか……
俺は自分で放った台詞だが、それは果たして覇王姫のことか、それとも……
「そう?」
紅蓮の
とはいえ……人質の件は兎も角、”
現時点では空手形であるからだ。
封書の中には計画を記述してはいるが……もちろん全容では無い。
人質の返還はその”前金”みたいなものなんだが……
それを読んだ覇王姫は、先に全て晒せと要求して来たのだ。
「現時点では無理だ、後金の方は
「信じる?ふふ……
紅蓮の
――前言撤回……やっぱり
「
そして
「はっ……ははっ!」
響き渡る
「
「問題ない」
――!?
”
覇王姫の意を得て次手に転じようとする坊主に、俺は質問を最後まで完了する事をさせない。
「い、いやはや……問題ないとは?そ、それは具体的にどういう事で?実際は場違いな”
「問題ない」
――!?
再び向けられた言葉にも俺は”にべ”もない返答を返し、ただでさえ人相の悪い僧侶は明らかに心証を害した仏頂面で黙り込んだ。
――脅しの後は一転、懐柔か……
――悪くない……
――悪くない手法だが……残念、
「ぬっぬぅぅ……」
――あぁ、そうだ、思い出した……
仏頂面で黙って唸る坊主という失礼な
ペリカ・ルシアノ=ニトゥが国権を引き継いだ時、異を唱えた重臣達の陣営について戦い、敗れた後は
権威に
「強がりも大概にしてはどうなの?……
だが――
「問題ない!……というか”
「…………」
俺の頑なで無礼な応えに、覇王姫が紅蓮の
「……そう……なら仕方無いわね」
そう呟いて、自身の後ろに控える側近に目配せする。
「ペ、ペリカ!?……でも、それは……」
「アルト」
「……う……解りました」
シャラン!
「……!」
アルトォーヌ・サレン=ロアノフが抜き放った白銀に、場は一瞬にしてピリリと張り詰める!
――ちっ!凄い殺気だ……
しかし、それは小刀を抜いた希薄な女でも、目前で偉そうに
「…………さいか……斬る?」
俺の右後ろに控えた剣士。
光糸を集めたかの如き煌めくプラチナブロンドをひとつの三つ編みに
「
第四十五話 「狂人の
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