第83話「停雲落月」後編(改訂版)
第四十三話「
裏切りの報いとして――
常道から言えば、主君を裏切るような恥知らずには当然の結末だと言える。
言えるが……
「…………」
――なら、何故に
「問題は残った
「
「…………」
俺の方の状況を
俺の頭の中は、この時も未だ
――俺が皆の前で
――
いや断じて無い!!
それは確言できる!
俺と
成るはずが無い!
それは立場が逆であっても同じだ。
数多の戦場を共に駆け抜け、華麗なる勝利も、泥にまみれた惨めな敗走も……
俺と
「…………」
――過去の在る時に俺の父である
「貴様は身の程を
それは……当時、僅か十四歳で立て続けに戦手柄をたてた俺に対し、家臣の前で戒めて君主の威厳を示そうとした父が
当時の浅はかな俺はこう答えた。
「理想高く、飛べば飛ぶほどに代価として酷い重傷を負うというのなら……俺が地ベタに晒すものは何も無いでしょうね。原型を留めない程に砕け散った肉片では誰も察しはつかないでしょうから」
――それほどまでに、誰も為し得ないほどに高く至れる!
誰も、父さえも自分の器を計れていない。
そんな絶対の自信を抱いていた俺は、それを周りを気にせず口に出来るほどにのぼせ上がっていたのだ。
そして、身の程を
「貴様如き、
――ザッ!
そんな殺伐とする空気の中、歴戦の武勲を所持する諸将さえも緊張に固まる空気の中、一人の若者が歩み出た。
「お待ちください、王よ」
「
そして、
「ぬ……ぬぅ……」
怒りの機先を潰され、低く唸る
――
それは、俺が受けるべき罰をその身に受けるという意思表示。
主が至らないのは側近である自分の罪だと訴える。
次期当主とは言え、諸将の眼前で
年下の
主君の為ならば
その姿勢に――
他の重臣、宿将達も言葉を出せず、厳格で非情な王たる
――
―
「…………」
「
その時、俺の手は……
俺自身意識しない状態で、自然と
――そうか……
俺は自身が無意識でした、その行動に納得する。
――これは俺の意思なのだ!
「
――それが
――あり得無い希望的観測を未だ望んでいる結果であっても、
――俺は……
「ひっ!ははっ!」
突然の指名に体を硬直させた
――そうだ……
この時、
反乱に対する対処は?
仮に無事、事が収まったとしても、謀叛人への処罰は?
――どうすべきか?
それが未だ曖昧でも、
少なくとも、
「…………ふっ」
俺は本当に納得する。
――そうだな、今更だった……
俺は動揺のあまりか、一番大切な始まりを失念していたのだ。
――俺の原点は”それ”だったよな…………
「…………」
「
「っ!?」
青い顔で平伏していた中年は、思いも寄らぬ言葉に顔を上げ俺を凝視する。
「……あ、あの……それは……?」
「
意味が解らないという中年男と、サッと顔色を変えてなにか意見しそうになる少女を、俺は再び手を上げて
「
「そ、それは……ですが、それだと……」
――
「とりあえず俺が行くまで
「
それは流石に下策だと……
最早、火種とは言えぬ炎を放置同然にする甘さは身を滅ぼすと……
俺の信頼する腹心は食い下がってくる。
「そうだな……なにしろ”
「ならばっ!」
――だが、それはつまり……
膝を折ったままで、再び俺に
勿論、
俺と同様に
幾つもの困難と死線を共に
なにしろ、
「
――
「……」
――全て俺の未熟が招いた結果だ!
俺の我が儘のせいで……
俺がもっと上手く事を進めていれば……
「
俺は自分の不甲斐なさを嫌と言うほど認識し、そしてそれがあっても……
いや、それだからこそ、決断したのだ!
「し、しかしっ!」
「大丈夫だ……”
「
無理矢理に余裕の笑みを作った不格好な男を見上げ、
そんな馬鹿な男を、自身の大切なもの全てを置いても心配する少女は……
――泣いているんだ……ずっと……なのに俺には、俺の為には……
「忙しくなるぞ、明日……いや、もう今日か?とにかくする事が山ほどある」
だから俺は、歪で見るに堪えない笑顔でも継続して続けた。
「
先ほどまでとは全く違う……
小さい声で……震える声で……少女は呟く。
それが俺の為に
「解っている。神ならざる人の身が国を治めるには法は曲げるべきでは無い……
けれど、俺の決意は変わらない。
――裁くのは……俺だ
――他の誰でも無い……
「…………」
少女は黙りこんで……そして悲しみを孕んだ瞳で小さく頷く。
「
「も、勿論です!
俺の言葉に、
――
「…………」
深く深く
――そうだ……
殺し尽くした俺にとって……
”
「…………」
俺はギュッと拳を握る。
――
第四十三話「
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