第82話「前夜」後編(改訂版)
第四十二話「前夜」後編
「
――うっ!……やはりそれか
信じられない強運の持ち主、
だから正門前戦いの後、俺は
――たく、この忙しい時にタイミング悪く帰って来るとは……
「
「
仮面のような大きな革製眼帯から露出した左側の顔、鋭い左目で睨み付ける”
「貴様……
「…………」
睨む対象が俺から”澄んだ叡智を秘めた瞳の少女”に移った
「そこまでよ、
“辻斬り女”が開いたままのドアから時間差で続いて姿を現したのは……
腰まで届く緩やかにウェーブの掛かった美しい緑の黒髪と白く透き通った肌。
それと対照的な
その奇蹟とも表現できる美少女が所持する漆黒の瞳……
対峙する者を
「姫様!」
「
会議用の大テーブルを囲んでいた面々は即座に立ち上がり、司令室に居たそれ以外全員もその少女に向き直って敬礼する。
――
大国、
その登場に、俺に代わって睨み合っていた二人は……
「はっ!」
「はい、姫様!」
「…………」
結局、俺だけがなんだか出遅れて……
――
ドア付近からゆっくりとあくまで優雅に、
「……」
「……」
一歩、一歩……俺の方へと歩を進める
「…………」
「…………私の知らない間に、随分と
――トクンッ!
すれ違い様のふわりと香る彼女独特の甘い香りに俺の心臓が小さく跳ねる!
そして、俺にだけ聞こえるようにそう囁いた暗黒の美姫は……
「
ごく自然に、ギュッ!とヒールの
「くす……」
微笑する紅い唇……
「…………」
相変わらずの暗黒コーデとその態度……
――おいおい……
すっかり”侍女姿”から着替えて普段の
俺は北塔でのダイブの後、
着替えは兎も角、そこまで完璧に仕上げてたら確かに遅れる訳だ。
「なにかしら?
「…………いや別に」
ずぶ濡れの俺や
――”この、ずるっ
とは、口が裂けても言えないわけで……
代わりに”なんでもないデスヨ”と、首を横に振っていた。
「そう?ならいいわ」
そして
「あ……えっと、だな、話を戻すと……」
色々と悶々とするものはあるが……
取りあえず
「…………」
再び座した面々内の一人が、スッと手を真っ直ぐに掲げていた。
それは俺の正面に座る女、スラリとした長身に長い黒髪を簡易的に後ろで束ねた
「なんだ?」
彼女の性格を現す綺麗な挙手だが……
俺は嫌な予感がしつつも指名する。
「先ほど
――うっ!
「あーー!!やっぱりぃっ!!私もそう思ったよぉっ!!」
「えっ?えっ?えっ?」
「……ふぅ」
「あらあら……」
「クッ……クフフ…………」
「……ふん!」
というか……この件の張本人である
――くっ、誰のせいでこうなったと!?
「…………」
司令室内で忙しく働く者達も含め、俺に向けられる視線は”
とはいえ、この状況では誤魔化すのは最早無理だろうし、時間の無駄出しか無い。
――なにより”
「……
覚悟を決めた俺の視線に、暗黒の美姫はそっと形の良い白い
俺もコクリと頷いて応じてから、スゥッと息を吸った。
「そうだ……俺は
――ざわっ!
流れから……そこにいる皆が頭では大体予測していたとは言え、流石に本人からの言葉に場は控えめながらざわめく。
――
――どの
「やはりそう……”
「待ちなさい
「あははっ、でも、
生真面目な
「…………」
「……く、くふふ」
「…………」
この状況……どうやって迅速に収めようかと思案する俺だったが、
「もう良いでしょう?
――!!
一際造りの良い椅子に優雅に腰掛けた美姫の言葉がその場をいとも簡単に支配した。
”
「おお……」
――良く躾けているな……
というか、単に
何もかも解決!という訳では決して無いが、口火を切った張本人である
心なしか、俺へ向けられていた視線も少しだけ和らいだような気もする。
「それより
そして
「…………」
流石……
何も言わなくても、いや、
「今日中……ですか?」
――時計の針は午後八時二十三分……
日付が変わるまで四時間を切っていた。
――ああそうだ……”
「……」
「……」
どちらともなく視線を交わす俺と
ついさっきの言葉から、
――なら……
俺は大きく頷いてからテーブルに座す面々の顔を眺めて、口を開いた。
「これから、この戦の”落としどころ”を説明する!」
第四十二話「前夜」後編 END
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