第72話「計算と感情」後編(改訂版)
第三十二話「計算と感情」後編
「追っ手は今のところ見えません!このまま
夜闇の中、手負いの将兵を引き連れて山中を移動する
「…………だめ、
今後の方針を確認する部下に、
「し、しかし、
疑問を口にする部下に対し、弱々しい月明かりでも充分に分かる”希な程に美しい顔立ちの少女”は答えた。
「
今の今まで戦っていた
彼女は無闇な特攻を反省はしたが、
――
彼女はそう決意していたのだろう。
「で、では早速、
ザッ……ザザザッ!!
――っ!?
その時だった!
近くの草むらが不意に揺れ、そこから複数の気配が闇に姿を現す。
「て、敵か?」
――
兵士達に緊張が走り、彼らは心持ち頭を低く草木に潜ませて
「……」
そして隊の指揮官たる
――失態だった……
敵の追撃は必要以上に警戒していたが、その分”伏兵”には意識が薄れていた。
ザザザッ!ザザッ!
――数は……多い?
感じる気配から、二、三百?
いや、ヘタをすると……
シャラン!
「
「っ!?」
プラチナブロンドの美少女は振り下ろす寸前だった剣をピタリと止め、彼女の兵士達も突撃の号令が中断された事によって寸前で踏み留まった。
――ガサガサ……ザザザッ
直ぐに草間から現れた軍団の先頭に立つ人物に、
「……」
隊の先頭にて、馬上から
清楚で可愛らしいながら、大人っぽさも感じさせる黒髪のショートカット少女。
キッチリと正した軍服姿の少女と彼女が率いる隊は戦闘の実習訓練と思えるほどに綺麗に整列して現れ、それはそのまま”その少女”の性格を表しているといえた。
「
「おお!!味方だ!味方が駆けつけてくれたっ!」
そして、確認を済ませた数瞬後……
敵中で散々に追い回され、生きた心地もしないという状況を続けてきた
「…………
「ええ、そうよ、
薄暗い月明かりの下、馬上からお互いに見つめ合う二人の少女。
「そう……なら丁度
だが
これで直ぐにでも戦場に取って返せると言った意味で鈴原
鈴原
「…………」
「裏切り者を野放しにする?さいかの敵は斬らない?」
あからさまに整った顔立ちを不満顔にして頬を膨らますプラチナブロンドの美少女。
「現状を
「それじゃ遅い、さいかは
それは鈴原
「
頑として諦めない
「…………」
無言で睨む
「金曜日よ、明日は世界が切り替わる。そうすれば情報は容易に共有できるわ、それに”
「裏切り者の……
そして
「”
そう言った鈴原
「…………」
それを確認したであろう
「わかった、”
そしてプラチナブロンドの美少女が所持する
馬上にて向かい合う二人の少女は、その見目麗しい容姿からは想像も出来ない物騒な会話を氷の瞳で交わす。
「うっ……」
「ゴクリ……」
彼女たち、
そんな空間で、息をするのも
「
「はっ!はいぃぃっ!!た、ただいまっ!!」
少女達の物騒な会話を聞いていたであろう
「?」
続いて、古典的な漫画にでも出てくる”ポンコツロボット”の如き、ぎこちない敬礼をしてから撤収作業に移る部下を、プラチナブロンドの美少女は不思議そうな瞳で見ていた。
「えぇと……悪いのだけど、向かうのは
周囲がピリついている元凶が”
「うっ!!ほほぉぉーーいっ!ガッテン、し、承知でありますっ!!はいっ!
再びコイル
「皆の者っ!”
「は、はっ!」
「ひぃぃっ!!」
ワタワタと慌ただしく動く兵士達……
「…………」
その様子を眺める黒髪ショートカットの少女は、”はぁ”と溜息を
――つい
部下の前だ、少し言葉を選んだ方が良かった……と。
「
「……」
そして、周囲の状況も、
「
「さいか……が……」
「ええ、
その様子に満足げに頷く
「それで
とはいえ……
当時の状況では反乱が起こる可能性含め、もし起こるとしたら何処でどういった反乱が起こるのか?
黒幕は十中八九、
などなど、あの時点で対応するには情報も兵力も足りないだらけだった。
故に後手に回ったのは仕方が無い。
仕方が無いが……
――まさか、
「…………」
だが、彼女は意識してそれを直しながら出来るだけ落ち着いた口調で
それは
「それで、
「……さいかが……そう……
「?」
しかし、
「ええと、聞いてる?
「ら、
少女達の会話に割り込んだのは先程の
「…………あれは擬態よ、私が
無粋に割り込まれた形ではあるが、ここまで話した以上もうこの場で隠す必要も無い。
相変わらず反応の薄い
――敵を欺くために味方にさえ隠していた
そしてその作戦は今も続行中である。
「おおっ!それは!」
「うぉぉ」
結果で言えば、反乱自体を未然に防ぐのは不可能だった。
しかし少しでも敵が減るのは好ましいことに違いない。
この状況下でそれは”小さな希望の光”であった。
「ともかく、私の主力部隊は
「わかった、”
兵士達を眺め説明を続ける
ブルル……
そして――
僅かな月光さえも取り込んで光輝くプラチナブロンドの髪を
「…………」
その後ろ姿を見送る黒髪ショートカットの少女。
――ああなるほど、これは自分だけ仲間はずれ……
――いいえ、”
「……ふっ」
鈴原
ヒュオンッ!
「ひゃっ!あ、危ないですよっ!!
それを知ってか知らずか……
プラチナブロンドの美少女が、少し離れた位置で白刃を無駄に空に閃かせる。
ヒュヒュンッ!
「で、ですから危ないですってぇっ!!なんっかもうヤダぁぁっこの部隊ぃぃっ!!」
複雑な想いを胸に秘めた少女達の事など
第三十二話「計算と感情」後編 END
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