第71話「最終局面へのステップ」後編(改訂版)
第三十一話「最終局面へのステップ」後編
時は少しだけ遡り――
鈴原
「鈴原の
白髪頭を後ろで結わえた長い髭の老人……
人生経験をそのまま刻んだ
四十八家の一氏、
人物は……
”戦国の謀将”、”
「
開口一番、あの合議で諸将を説得した策を反故にするような事を口にした老人は、
「…………」
そして、
「そうじゃな、先ずは……」
”
そんな感じの企みを語る
そして、それを黙って聞いていた
「
「……ほぅ?そうじゃな……」
「……」
正面の妖怪、その後ろに控えて立つ人影が向ける鋭い眼光に、”それ”は無謀だと理解していた。
――
「…………」
「
「……」
「
「…………
そして、平然と故国に対して翻意を促す
だがその問いにも
「
「…………」
またも無言を返す
切れ者と評判の
事もあろうか、”
故国や主家への忠誠や義理さえ無視するならば、なんとも有り難い話ではある。
あるが……
それも”条件付き”であろう。
”
つまり……
無言で、無表情に話を聞く
そんな事さえも全て承知しているのだろうか……
「じゃがな、仮に……鈴原の
「…………」
――矢張り……そら見たことか
無表情を装う
「……なぁに、算段はつけてある。鈴原
「
一応、そう否定してみるが……
そして、その隙を利用する策までご丁寧に用意して、この
一介の武将たるこの
東の最強国、
そしてその為に邪魔な
なるほど、確かに
こういう事には……”適材適所”が必要だ。
忠義で無く、義理で無く、誇りや名誉など問題外……
そんな利のみで動く人間で尚且つその能力たり得る者。
「そうでもない。あの
それは、
御三家で在り、
自身にどのような利益がある話なのかと。
あるのは利害のみ……
それは戦国の将の特性としてそう珍しくないが、彼はその特性に特化しすぎていた。
能力はあるが信用ならない謀将。
それが
「なるほど、情勢を最大限利用するわけですな。文を出すだけなら大した労力でも無いし、失敗するようでもこの混乱に乗じてこの地を去ればよい。……その後は
前に提示されたように、
最初に保険をチラつかせ、危険に対するリスクを曇らせる。
――
「まぁな、じゃが”寝返り”が失敗すればそれはそれで、その書状を
「ほぅ、なるほど……
「そうじゃ、さすれば居場所を失ったその者が今度こそ離反するやもしれぬしのう」
「…………」
――後日の結果から言ってしまえば、
「
「……」
――”
それはつまり、
この状況を最大限利用し、全てを欺いて
――なるほど、それは大層、魅力的な話であるが……
この老獪が何を企んでいようと自分がこの
――
――主君、
――ははっ、それは
一応、内心で成功率と失敗時の損害という計算をしてはいるが、
それは”魅力的な餌”よりも遙かに
低俗な”損得勘定”などよりももっと質の悪い、救いようのない人間の闇、ドス黒い感情。
――罪悪感、忠誠心……それは心……この
「…………」
――そう、復讐心だ
「……」
黙って思考を巡らせる男を前に、その様子を注意深く見据えていた老人の窪んだ眼の奥にヌラリと何かを見取った光が揺らめく。
――”復讐”とは”破滅への入り口”とは……誰の言葉じゃったか……
「
そして
――ほんに”適材適所”……
眉間に刀傷がある痩せぽっちの老将も
お世辞にも見栄えのしない男は
「……くくっ、それはありますまい……この傷が疼かぬ夜など生涯有りますまい、くくくっ……」
それはあまりにも醜い笑顔。
何をも信じぬ”
「ふふん、やはり、お主を抜擢して正解じゃったか」
――カッ!
充分納得したとばかりに、
「
「子細は
全て了承しているとばかりに、眉間に傷の目立つ男は肩を揺らせて笑っていた。
第三十一話「最終局面へのステップ」後編 END
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