第62話「十四番目の男(ワイルドカード)」後編(改訂版)
第二十二話「
「つまりだ……
「…………」
場は、何を今更と、知れたことを……と言わんばかりの冷たい空気で、
自業自得とはいえ、俺は自身が作りだした白けた環境と無言の視線によるプレッシャーの中、話を続けていた。
「そうだなぁ、言うなれば
「…………」
平然と話を続ける俺の心中は……
――うぅ、”
「だから”
「だから!最大限に警戒すべきは
ウダウダと話す俺に、とうとう堪りかねたのか
――おおっ!た、助かった……
俺は心底そう思った。
折角お膳立てした会議を寒い冗談で冷えさせてしまった俺にとっては……
というか、
”信じられない程の強運、異能、そんな理不尽級な輩と相対するなら……適当な”
これは
兎に角、この冷え込んだ流れを変えるのには好都合!
ナイスツッコみだ、
「じゃぁ聞くが、”予測不能な矢”をどうやって”策”に嵌める?」
「うっ!?」
言うまでも無く、”予測不能な矢”とは、常識外れの強運に守られた
「突破力が異常な部隊を正面切って止めるのにどれだけの兵を費やすんだ?」
そして俺は、俺の非を追求しようとした相手を逆に、立て続けに質問攻めにする。
「ぐっ!……そ、それは……主力部隊で包囲して……」
「
「……ぐっ……くぅぅ」
全く反論できない、くせっ毛のショートカットにそばかす顔の少女は、悔しそうに唸って俺を睨むだけだ。
――だろうな……
あの部隊の特異さは、
「答えられないのか?」
俺は少女が回答を返せないのを理解しつつ催促する。
「それは……でも、それは貴方も同じでしょう、鈴木
――よし、そうくるな、そうくるしかない、模範解答だ……なるほど、俺も通常の戦闘なら、そういった方法をとったかもしれない
けどな――
「
「しょ、正気ですか!?この
「…………予測不能な矢も必ず当たるとなれば予測できる」
「はっ?」
一見矛盾した俺の言葉に、
「つまりだ……どんな素っ頓狂な”軌跡”を辿ろうとだ、”当たる”矢は的へと辿り着く」
「なっ!………………あっ!」
そして続きを聞いた
「……」
――なるほど……
俺はそんな、くせっ毛のショートカット少女を見て密かに頷いていた。
「どういうこと?
真面目そうな女、
「…………的の真ん中に当たる矢は、その直前には全て同じ軌道に集約されるという……ことです。つまり、どうなるか予測できる状況にした”奇蹟”は……予測できる”軌跡”は既に”奇蹟”では無いと言うこと」
「あっ!?」
「ふぁ?は?あれれ……そういえば」
真面目そうな槍戦士、
――予測できるようにした”軌跡”は既に”奇蹟”では無い……か、上手いこと言うなぁ
俺は変な事に感心していた。
「ですが……ですが、それには相手をこの
――ああ、そうだ……これは危険を要する方法だ……だが
「これが一番確実だ、そしてそれを叩くために俺は数では無く武人らしく”武”を以てアレに対峙するつもりだ」
「…………」
今度の俺の言葉は、
いや、それは意地が悪いな……
俺の言い方が……ちょっとだけ意地悪だ。
俺は補足説明を要するつもりは無いとばかりに、自信の籠もった瞳で策士の少女を見据えていた。
「……う……あ」
――そりゃそうだ
理解出来なくとも、こんなに論破された直後でその本人に自信満々で見据えられたら、これ以上の反論など……
代替え案の無い者が反論など……
理論的な反論が出来ないが故に口が挟めない。
”策士”故のジレンマだろう。
そして俺がこの少女を多少虐めたくなるほどに……
この
「鈴木……
策の全容までは話さない俺に、”一から十までご教授下さい”とは言えない
「異論は無いな、なら今後の方針は……」
そして俺はこのまま押し切る為に駄目を押そうとするが……
「問題……ある……
感情の乏しい声がボソリと響いた。
「……」
これは……計算外だ。
――まさかこう言う人物が口を挟んでくるとは……
俺は全く”
――
ジトッとした三白眼で俺をジッと睨むなんだか無口で小柄な……
しかし確かに殺気を
「問題?それはどの辺だ?
「……」
自分から待ったをかけておいて、その物騒な少女は当然の様に俺の質問を
「おい、
「ああ、そうだ、問題があるぞ!正面の
最早、貝になった
――
「ああ、それは簡単だ」
だが、そんなのは計算内だ。
俺が計算外だったのは”
「なに?」
「……」
難なくそう答える俺を、
「それはどういう……」
「ほぅほぅ?」
「……」
因みに、
「だから簡単だって、それは
――っ!?
俺の言葉に、
彼女を除いた四人はそのまま、イマイチ理解出来ないという顔であった。
「だから、つまりだな……
逆の八の字……つまりトーナメント表を逆さまにしたように、遠い戦場の部隊から後方をお互いに確保し合いながら最後はこの城に集結できるように、
「貴様……それを姫様から」
「いや?そんなのこの盤面を紐解けば解るだろう」
と、俺は当然の如く盤面を指さす。
「ぬぅ……」
「うう……」
「ふわぁっ!?」
「……」
俺の指摘に四人の"
――俺の言ったことは真実だ
「……く……うぅ……」
そして、やはり
憧れであろう”
「いや、そう気を落とすなよ
「う、うう……」
俺はいたたまれなくなって慰めたつもりだったが、少女の反応を見るに、それは余計なお世話であったようだ。
――難しいなぁ……はぁ
俺はそう感じつつも今頃は夢の住人であろう、暗黒の美姫を思い浮かべていた。
――しかし、まぁ……なんというか……
――相変わらず抜かりの無い女だよ、
俺はひとしきりそう感心してから、気持ちを切り替えて目前の女達を眺めてから告げた。
「納得いったなら、これより迎撃防衛から
第二十二話「
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